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「頼む!この通りだ」


私の目の前には両膝と両手の平、そして額を地面にめり込ませた男がいる。通称土下座。汚れるのも気にしないのかしている場合ではないのか、刺繍の入った高級そうな白い服は所々砂等で茶色に染まっている。そういえば昨日は雨だったか。


「ミレア嬢、俺の話を聞いてくれ!」


この男、私に交際や結婚の申し込みをしようとしているわけではない。


「誤解なんだ!」


浮気がバレての土下座でもない。


この男とは知り合いの知り合い程度の付き合いだ。気安く私の名前を呼ばないでほしい。こんなところに長居は無用だ。


「アレン様、私は何も見ていません。では」


「待ってくれ!頼むからダリアには言わないでくれ!」


せっかく見ないふりをして通りすぎたというのに「君はダリアの友人のミレア嬢だよね」と、いきなり手を引かれ路地裏まで連れてこられての土下座。焦ってこんなことするくらいなら人目につくところで婚約者以外の女と抱き合うべきではないと私は思う。


ダリアは公爵令嬢で私の友人、ダリアの婚約者は侯爵子息のアレン様。

つまり浮気されたのは私ではなく友人のダリア。浮気したのは当然目の前の土下座男。


「ち、違うんだ、、そうだ!あれは転びそうになっていた彼女を受け止めただけなんだ。そうそう、だから浮気とかじゃないから勘違いはやめてくれないかな、ハハッ」


(私まだ何も言ってないですし、たった今思い付いたような顔されても信憑性ないですね。それに転びそうになったのを受け止めたにしては大分長い抱擁でしたけど。そんなシーン見たくて見たわけじゃないんですが、ダリアの家に向かう途中で評判のお菓子をお土産に買おうと立ち寄った先にあなた方がいたもので。抱き合う女性の肩越しに私と合ったあなたの目、こぼれ落ちそうでしたね。なぜこんなところにって?私の台詞だから)


そのあと抱擁中の女性を突飛ばし私の手を強く引きこんな場所へ。そんな女性への扱いに対してイラッとするし強く掴まれた腕が痛いことにも怒りを感じる。でもここは冷静に。


「アレン様、私は何も見ていません。顔をお上げください」


「お願いだ。信じてくれ」


後ろに控えているメイドのアンはこんな状況でも無表情、さすが我が侯爵家に仕えるだけはある。でも少しいらついてる?


「信じるも何も、私は何も見ていません。これから大切な用事がありますので失礼させていただきますね。それと、このように女性をむやみに路地裏へ連れ込むなんて非常識です。掴まれた腕も痛く、決して許せる行為ではありませんよ。こちらはアレン様の家へ抗議させていただきます。もう話すことなどありませんので、では」


「あっ、親にだけは、、」


何が言っているアレン様を放って、さぁ行きましょうとアンに声をかけ目的のお菓子を買うために店に急ぐ。


無事お菓子を手に入れ、公爵家へ向かう馬車のなかで

「もぉ赤くなってるじゃないの!アン、これ見て!絶対許せない」


アンはお菓子を買った店でハンカチを濡らしていたようで「失礼します」とまだ冷たいそれを赤くなってる腕にそっと押し当ててくれた。


「ありがとう」


「いいえ、こんなに赤くなって、、、お嬢様、旦那様への報告は私からしておきますから」


「えぇ、宜しくね」


(アンに任せましょう。護衛も兼ねているアンが手出しをしなかったんだもの、厳重注意くらいで済むといいけどね)


それにしてもアレン様はやりすぎだ。あんなのが将来の公爵様なんてありえないでしょ。


公爵家には子供がダリアしかいないためそこへアレン様が婿入りすることになっている。アレン様は侯爵家の次男で大変優秀だと評判の子息だ。頭脳明晰、家柄良し、顔良し、性格良し。

そんな完璧ともいえるアレン様にもたったひとつだけ問題があった。



女の子が大好きなこと。




「ダリアはこのままでいいのかしら」

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