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第 話 正しい日本語で a scissors-and-paste-and-gun job

 「ダメだよ,これでは」

 原稿、ファミリーレストランのちゃんと怪しい床投げ。僕呆然と

 「拾わない? ふぅん、ね、それ」

 と吐き。慌てて床原稿をかき集め。周囲視線がい。

 「期待どなあ、残。駄目、は。体何を考え。もう全然分からない。糊と鋏」

 「糊と鋏…………」

 「竹見君、ちゃんとしようね。」

 僕の胸に図星を突かれた痛切な痛みと多大な熱を持った反感が湧きあがった。これまでの悔しさもあり、僕は身を乗り出して喚くように言った。

 「もっと他人の作品を読めって言ったのは宇野さんじゃないですか」

 「真似しろとは言ってない」

 「他に何をしろというんですか」

 「?」

 「で?」

 「そういうことじゃないんだよ、君に出る幕は無い」

 「この世に模倣でないものなんてありませんよ。誰もが読みたいんです」

 「またお得意のかい? 御立派は模倣、確かにその通りだろう」

 「模倣かもしれないじゃないですか」

 「かもしれない、ね。だけどそうでないかもしれない。だから、現時点ではね。それとも?」

 僕は反論を思いつかなかったのでコーラを注ぎに行った。反論を考えようとしたがやはり思いつかなかった。なみなみと満たされたコーラを一気飲み、もう一度コーラ。コーラダウンした。駄目駄目、反論なんかじゃない。僕は宇野さんを来たんじゃないんだ、宇野さんがああ言うならあの原稿はやはり駄目だったのだろう、そこはもう。理屈はともかく、僕はあの人の性を信用している。だから何がいけなかったのか、それから次の当たって何をかを知ること。

 僕は深呼吸テーブルへ戻った。宇野さんが原稿を再読目をこちらへ向け、長い髪を掻き上げ。

 「好きだな、私」

 「からかわないで」

 「無いよ、君は本当に糞だね」

 「そうですか。では、?」

 「既に言った」

 「ですか? だけど僕だってそれほど本を読まないってわけじゃないです。それにじゃないですか」

 「読者としての観点、だけないからね」

 「他にも既にか? うーん……あなる、素材、ですか。組み合わせ方や使い方いいってことでもある、のか」

 「好ましいけどね。素材素材、素材だって殆どは構成構造体。つまりそこにある。素材。まぁ模倣してでも使うべきだが」

 「宇野さんも結局模倣肯定」

 「模倣問題模倣だとばれるようなやり方は絶対にノー」

 「言ってないって言ったじゃないですか」

 「……細かい君も」宇野さんは眉をひそめた僕は図星を突けたのかもしれない邪気「だと言うのかね?」

 「……言うこともあるんじゃないですか?」

 「本当に細かい君は」そう吐き捨て宇野さんは「わかった、わかったよ? 御免なさい、御免なさい? 胸? 何でもしてやるぞ」

 「ほ……?」

 「なんだその顔、最低」

 「ひ、卑怯よ」

 僕は一刻鏡。一体自分確認にはこれから生きていけない気さえした。みるみる青くなる僕宇野さんがぷっと吹き出した。

 「悪かったよ、童貞が強すぎたね」

 「どどどど童」

 「え、? 」

 「…………童……」

 それから僕と宇野さんは更に原稿に入り、今の針を話し合った。僕は宇野さんの悪さをたっぷり味わい、はくたくになっていた。

 暗い部屋で照明のスイッチを手探探、点。鞄とたとたと殆ど奥までつまづいたように汚い倒れ込んだ。テーブルカツサンドを姿勢のまま、姿勢のまま食べた。非常に食べたが、到底なれなかった。仰向けの眩しい思いがけないパン噎。咳が涙が浮かんでいた。

 別に宇野さんの毒が染みた。すこしはそういうことも、あるかもしれないけれど。


 僕は去年、あるライトノベルの新人賞に応募し、受賞こそしなかったが人に声を掛けてもらった。それが宇野さんだった。

 まるで受賞でもしたかのように、更に宇野さんに会ってまさか美人の僕の心は、ってへし折られた。

 宇野さん罵倒に耐え辛かったけど、それでも何とか宇野さんと二三脚で応募した作品を出版また。

 だが、売れなかった。鳴かず飛ばずった。

 毎日近所の書店へ僕の小説を日に日に立たせる僕の下へ、ある日宇野さんが。

 やり場のなかった怒り、突如宇野さん。だけど、それは謝る宇野さんとただただ雲散霧消。

 何故宇野さん、今でも分からない。宇野さんは悪かったけど、やってくれた、落ち度だ。だから、よいのか分からなかった。

 分からなかったけれど、目の前の女性の小説に対する真摯さだけは理解できた。僕は一生、一生一緒に作作。 


 朝。僕は頬に滴る涎を拭い、ふらふら。

 カツサンドの透明なゴミ箱に無理矢理っ。

 顔洗おう、鏡を涙がまだしぶとく、うっすらと浮かんでいる。

 僕は歯を磨き考える。

 宇野さんの毒は耐えられる。一番痛い。一番痛いのは、彼女だ。

 未だに僕は、彼女が、分かっていない。一体僕の彼女のか、分からない。

 辛いものは無い、報われない努力、だ。

 苦しみと悲しみ、そして疲れの自分の顔。歯磨き粉。髪に生気が感じられない。ひどく。

 水道水を、吐きだす。久しぶりに、吐きだしたそれは少し赤みがかっていた。

 磨き終えると本棚に。ちょうど棚には、他の棚。そこに並べられている宇野さん読むように。

 読もうか、と目で。僕は「ナインストーリーズ」。「ライ麦畑で捕まえて」が面白かった。

 「ナインストーリーズ」はアメリカJ・D・サリンジャーの僕はひとまずそのひとつめ。

 不思議な。主人公キャラクターに擽られる。意味は、こんな小説が書ければいいのにな、。

 物語は自殺する。拳銃自殺。

 僕はしかしその手を止めた。これ以上進めない、進んではいけない。物語衝撃を次の物語に移行すれば、何もかもが大事な大事。

 僕はもう一度物語。やはり意味。かと言って進むことはできない。僕は文庫本と欠伸とを共にした。

 そのとき、気が付いた。

 布団の上、黒光りする小さな機械。

 僕はぞっとするゆっくりとそれに。心臓が沸騰沸いた。脳の硬直、それから痙攣。顔が恐怖。それは、ここには――――あってはならない。

 拳銃。

 僕は恐恐手を。このままはいかないから。ゆっくり、ゆっくり。手には汗が。視界にも廻り震えている。僕は、拳銃。

 そう思ったが、感触が無かった。手は空を掴んでいた。布団の上には、拳銃。

 僕が眉を、何もない再確認して見遣ったとき、手には拳銃。

 「うわあっ」

 思わず拳銃。ごつごつ――もしなかった。驚き、拳銃はあった。僕は慄然拳銃をしなかった。右手拳銃をまじまじと。一度瞬きをすると右手。もう一度瞬きをすると拳銃。

 ようやく事態が掴めてきた。要するにこれは、拳銃なのだ。僕の、妙に現実なのだ。

 現れては消え、消えては現れ拳銃。引き金を引、決まって拳銃。引き金に引っ掻いた。

 ふと、「ナインストーリーズ」、気が付くと拳銃。それから、ああ、そうか。そう思った。

 ために拳銃、と。

 怖く無かった。

 僕は引き金を引。

 右人差指は引っ掻いた。

 右手には拳銃。現れもしなかった。

 その一日、僕はもう何もできなかった。 




 「何のつもり?」

 僕は宇野さん拳銃。

 いつものように、いつも通りで、いつも通り、いつも通り、いつも通りだった。

 俯いた右手に黒光りする銃。拳銃以来だった。しばらく会わない友人に包まれた。

 そして僕は、その拳銃を宇野さん。

 宇野さんは似合わない。無理もない、宇野さんには拳銃だろうから。銃口が宇野さんに向いているのか銃が見えない宇野さん、そもそもジェスチャ拳銃、怪しかった。中途半端にしか見えなかった。握手求ジェスチャ。

 だけど。このまま、引き金を引く。

 きっと、拳銃は現れたのだ。

 僕は空想上の宇野さんを殺し、僕も死ぬ。宇野さんのことが好きだから。そう思うと、僕はとても幸せな気持ちになること。

 幸福、温かな涙ながら僕は引き金を引。

 右人差指は空を虚しく引。

 銃消。

 宇野さん困惑顔が消えた銃の代わりに入った。

 僕はとても、虚しかった。 




 それからも拳銃。しかし引き金を引たび消失。

 僕はどうしても引き金が引。誰かを殺った。

 それ以来小説を書いている。拳銃の引き金を引。

 自分を殺して、担当編集を殺して、親を殺して、兄弟も、友人も、憧れの作家も、赤の他人も、殺して。殺せなかった。

 誰を殺せ、小説を書く。敵を探せ。僕は小説を書いた。

 小説は売れた。

 何故だか知らないが小説は売れに売れた。

 宇野さんは喜んで、親も、兄弟も、友人も喜んで。憧れの作家、赤の他人から応援された。

 そして、ふとあるとき、目が覚めた。拳銃の引き金など引、気が付いた。そんなことどうでもいい。

 気が付くと、僕は――――作家を自称る人間。狐抓まれ心地。

 僕は拳銃。拳銃で僕は作家。

 「小説を書いていてはダメだよ、竹見君」

 「宇野さん、小説を書くのに必要なものは何ですか?」

 「うん? まぁいい。それは――」

 それは拳銃さ。

 「いやでしょ」

いやでしょ

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