第 話 一㍉の狂いもない狂いの狂い
「話には筋というものがある」と古杣真は言う。
「とすると、これは「話」ではないのかもしれない」と古杣真琴は言う。
「少なくとも物語ではないんじゃないかな」と古杣誠は言う。
「パンツたりひん」とハッピーおじさんは言う。
僕はパンツを脱いでハッピーおじさん6人にパンツを配りながら「多分そうだろうね」と言う。「そやねん、パンツ2枚じゃ4人しか助からん」
僕はハッピーおじさんを無視して「でも、僕はそうじゃなくちゃならない。僕は僕を殺さなくてはならないわけだから……」いったん言葉を切り、パンツをはけなかったハッピーおじさん(A)の頭を撫でる。満足げな声を立てる彼を見届けて、僕は続きを言う。「僕はちゃんとした、統一された物語であってはならないわけだ」
「でも、まったく統一されていない物語って、「統一されていない」という点で統一されてるんではなくて?」と輝耶。
「お前は教室へ帰れ」
「ここも教室だもん」
たしかに。
僕は納得して、以降輝耶がここにいることを許し、記す。
「たしかに、いっさい統一されていないなら、それ自体が統一ということになる。だから、すこしは統一しなくちゃな」と宇野さんが言う。僕が言う。僕は宇野さんで宇野さんは僕なのだから、どちらでも同じことだ。
僕はまだ狂っていないし、
これからも狂わない。