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転生魔術師の第三の人生《仮》  作者: 赤李 基
第一章 弟子と水精霊の神殿
3/11

#2 耳掻きと言う名のお礼

どうかこれは下手なラノベと思って読んでください。


展開はそこまで早くはないです。

 リューネとアリュンが風呂から上がるのを待ってから、僕の続いて入浴した。

 基本的に動かない僕は汗を描かないのだけれど。

 お金持ちな我が家の浴室は、温泉旅館に備えられた中浴場程の大きさを誇る。

 流石両親共に凄腕冒険者、お金には大分余裕があるようだ。



 タオルを首に巻いて自室に戻った僕は、ベッドに倒れこんだ。


「明日でこの家ともおさらばか……」


 明日僕は家を出て、冒険者になるために街に行くのだ。

 フィオンの町は小さいため、冒険者ギルドなど存在する訳もなく、登録は不可能。

 そのことを両親に相談したら、二人が拠点として活動していた街……と言うより都市を紹介してくれた。

 人口の七割が冒険者の冒険者都市ユースティア。

 僕は明日、そこに行って冒険者になる。


「……さて、準備をするか」


 冒険者になれるのは十五歳から。それは前の世界でも同じだった。

 五年前、初めて町の外に出て戦闘を行った時以来、冒険者についての情報は両親から聞いている。

 一応僕は、見た目は十五歳のイケメン、中身は精神年齢五十歳超えの天才魔術師だ。親元を離れても十分に生きていける。

 何て事を考えている時に、部屋のドアがノックされた。


「はい」

「主様……今大丈夫ですかな?」


 扉の向こうから聞こえてきたのはアリュンの声。

 どうかしたのだろうか?

 もしかしたら治療が甘くてまだ痛い所とかあったのかもしれない。

 

「いいよ、入って」

「失礼します」


 扉を開けて、小さいアリュンが入ってくる。

 服装は、先程模擬戦をした時の白いワンピースよりも露出が多い水色のワンピース。

 ……て言うかワンピース多いな。


「どうかしたの? まだ痛い所とかあったなら治癒するけど……そう言う様子じゃないね?」

「……はい。主様、先程五年前の話をした時に思い出したのですが……、私はまだ主様に何のお礼もしていなかったな、と思いまして」


 そう言うアリュンはもじもじして俯いている。

 五年前のお礼……助けた事に対してのお礼か。


「そんなの必要ないよ。現に五年前に僕もアリュンに助けてもらったし」


 そう、アリュンを助けた後に、少女と護衛の冒険者が魔物に攫われるという事件があった。

 その時油断した僕をアリュンが助けてくれたことがあるのだ。


「いえ、それはえーと……わ、私をこうして家に置いてくれた事でチャラになりましたが……」


 どうやらアリュンはどうしてもお礼がしたいらしい。


「そ、そうか。分かったよ。それで……何してくれるの?」

「で、では……」




   *




「リオンハート様、失礼いたします……」


 リューネの声と共に僕の部屋の扉が開けられた。

 彼女は片手に御盆を持ち、その上には湯気が立ち上るカップが置かれていた。

 匂いからして……ミルクティーだろうか。

 彼女がつくるミルクティーはとても美味い。言っちゃなんだが、母がつくるミルクティーより美味しいのだ。

 母もかなり料理が上手い方なのだが、リューネは軽々とそれを上回る。

 恐るべし。


「リオンハート様、ミルクティーをお持ち……しま、した……?」


 そして彼女は、扉を開けたところで硬直状態に陥った。ブレスは撃っていないのに、硬直した。

 おそらく、彼女の視界にはこのような光景が映っているだろう。

 アリュンの膝枕に頭を乗せる僕と、その僕の耳を耳かきで掻くアリュン。


「そ、そんな……リオンハート様……ッ!」

「ちょ、ちょっと待ってくれリューネ! これには色々と訳があってだな!」


 わなわなするリューネに急いで弁明しようとする僕を見てニヤニヤするアリュン。

 してやったり、と言った表情だ。


「五年前に助けてもらったお礼をしたいってアリュンが言うからこうなった訳で! 僕も内心では膝枕で耳掻きはちょっとマズいんじゃないかっていうか、僕も健全な十五歳の男子であってして……」


 ワンピース越しに感じるアリュンの太ももの感触は、魔法使いを貫いてきた僕にとっては刺激が強すぎるのだ。

 起き上がろうとする僕を、アリュンは押さえつける。


「そういう事だ、リューネ。邪魔はしないで欲しいなあ?」


 勝ち誇った顔でニヤニヤしながらリューネを見るアリュン。

 正に悪女と言った表情だが、身長150くらいの少女がやったら正真正銘、危ない人にしか見えない。

 そんな僕とアリュンの様子を見たリューネは、小さく溜息をついて近くの机にカップを置き、一息ついてから、


「狡いですよアリュンさん! 何でいきなり五年前の話が出てくるんですか!!」

「別にいいではないか。お礼はいつしたって。なあ? 主様よ」

「い、いや、確かにそうだけども……」


 口篭る僕を見て再びわなわなするリューネ。

 いや、確かにお礼をいつするかはアリュンの自由っちゃ自由なのだが、そのお礼の内容に僕も少しビックリした。

 先程アリュンが僕の部屋にお礼をしたいと来て、とりあえず了承した僕。

 すると彼女は部屋に入ってきて正座すると、太ももをぽんぽんと叩いて、


「ここに頭を。私が耳掻きしてあげましょう」


 なんて言い出した。

 僕はもちろん抗議した。

 主にそれは恥ずかしいから違う方向で行こう! と言う形で。

 しかしアリュンは引き下がってくれない。いつまでも講義していたら時間の無駄だと思い、仕方なく了承したわけなのだが……。

 まさかリューネまで介入してくるとは思っていなかった。


「むぅ、そうですか、リオンハート様はアリュンさんの太ももがいいんですね!」

「!?」

「そういう事になるな。ふっふ、リューネよ。もう少し女を磨いてから来るんだな」


 何故か二人のうちどちらの太ももがいいか、と言う話になってしまっている。

 あれ、おかしいよね? ナニコレ。どうなってんの?

 耳掻きからどうやったらどちらの太ももがいいか、って話になるの?

 いや、確かにアリュンの太ももは気持ちいけれども……って違う!


「まさかアリュンさんが抜けがけする人だとは思っていませんでした……ッ!」

「ふふ、これは抜けがけなどではない。正当に私に与えられた『お礼をする』と言う機会の力だ!」


 違うよ? お礼で何かを与えられるのは僕の方で、アリュンは僕に与える側だよ?


「で、でしたら私は日頃リオンハート様に良くしてもらっている事に対してお礼をしなければいけません! それと、私を雇ってくれている事に対するお礼も!」


「そ、それは雇う雇われるの関係の話だろう! お主は主様に雇ってもらい、主様はお主に日頃の世話をしてもらう。これでチャラであろう!?」


「それはそうですが、私はメイドですがリオンハート様にまるで家族のように接してもらっています。それがどれ程嬉しいことか! これは『お礼』しない訳にはいきません!」


 確かにリューネの事は家族のように接している。ご飯を食べる時も一緒だし。

 流石に最低限のメイドがする仕事って言うのはしてもらっているけれども。


「……ていうかコレ、いつから『お礼』争奪戦みたいな戦いになったの?」


 その後十分程度二人の講義は続き、お互い一度づつ『お礼』をする、と言う結末がついたらしい。

 アリュンは耳掻きなどではなくもっと大胆なことにすればよかった……ッ! なんて呟いているけど、聞こえなかったことにしたい。

 リューネは体の周りに音符が見えてきそうなくらいウキウキしながら部屋を出ていった。

 あれ? 僕の意思はどこに行ったのかな……?

 全く、二人共そんなに優しくしてきたら好きになっちゃうじゃん、やめろよ。

 魔法使いの実力舐めんなよ。



 


 

色々伏線的なナニカがありますか、この先明かされていきます。


明かすっていうか、語る、ですね。

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