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第四のギルド -3-

 俺たちは船内に移動し、校長先生の机をさらに壮大にしたような台座を囲んだ。表面には世界地図が刻み込まれている。刻み込まれているといってもシステムと連動していて、ローリエのようなギルドタウンが出現したり、あるいは消滅したりした場合は即座に反映される仕組みになっている。つまりそれはあくまで彫り刻まれたような模様であって、触ってみれば表面に凹凸はない。だまし絵みたいなものだ。オードブルがその滑らかな表面にプロメテウス大陸の地図を広げ、ローリエの位置を赤丸で囲んだ。


「ここがローリエなわけだが、まぁ、ルートなんていってもほとんど決まりだなこれは。西、東、南のどこに誰が向かうか。それを決めるとするか」


 ローリエは周辺の街と街とを繋ぐちょうど中間の場所に位置している。たいてい「ここに街があれば便利だな」なんて場所がギルドタウン建設可能地なため、そうなるのは必然ではあるが。


 地図上のローリエ周辺に目をやる。西側と南側は特にこれといった難所はない。あるのは小さな街や村。問題は東ルートだ。このルートには城塞都市メルロニという関門がある。外周を城壁で覆った、上空から見ると正五角形の形をした雄大な都市だ。城門の開閉などの都市機能がブルーソフィアに掌握されているなんていうことはないが(システム的に無理)こういう物々しいところには討伐系ミッション目的で訪れた荒ぶった連中が山ほどいる。そいつらが賞金目的で俺たちに干渉してくる可能性は高い。土地がら人の出入りが激しいということもあり、ブルーソフィアが他より戦力を多めに送り込んでいる可能性も十分考えられる。最もスリリングなルートだ。


「俺が東ルートにいくぜ」

「あたしは東でいいや」

「東ルートは俺に任せろ」


 瞬間的にヒリつく空気。眉を寄せた顔を見合わせ互いを牽制する。


 こんな予感はしてた。こいつらはどうしようもねぇバトルマニアなんだ。鍛えたスキルを、そして腕を存分に奮いたいって気持ちもあるんだろう。オードブルは戦いの果ての一線を越えたところに快楽か何かを求めてそうだけど、ベレッタなんかはもう戦うのが好きで好きでしょうがないって感じだ。何度模擬戦の相手させられたことか。


「なぁ二人とも。一見するとなんてことなさそうな西ルートと南ルートだけど、本当にそうなのかな?実はそっちにこそとんでもねぇ網が張ってあるのかもしれねぇ。危険度でいったら西や南のルートの方が東ルートより全然上かもな」


 地図上にキノコみたいなドクロマークを記入していく。


 ……おそらくこっちは敵の想定を超える速さで物事を進めている。なにせじいさんと接触してからまだ1日しか経っていない。セインレイムでの一日っていうのはリアルタイムでの12時間。そして長距離通信の手段は固定電話、もしくは届くのに一日(12時間)かかる特定施設からの伝書鳩しかない。その上ヘブンとセインレイムとを繋ぐ通信手段は存在しないため、敵は俺達があのじいさんたちを殺したって情報すら把握していない可能性が高い。とはいえ油断は出来ない。そう思わせる罠の可能性は十分ある。俺達の考えが全て読まれているという可能性が。なんてアピールをしてみた。


「じゃあカズマそっちいけよ。オードブルもついでに。あたしは楽したいから東にいくからさ」


「おい、俺まで巻き込むな。俺は東ルートにいきたいんだ」


「じゃああたしとオードブルでジャンケンして決めようぜ。どうせ話し合いじゃ決まんないだろうし」


「ちょっと待て! 俺も参加する!」


「なに? カズマちゃんビビッてんの? 危険なルートにはいけないんですかぁ?」


「失望したぞカズマ。お前がそんな臆病者だったなんてな」


「うるせぇ! なんとでもいえ! でもジャンケンじゃ味気ねぇからうちのギルドで採用してた方法で決めようぜ」


「神聖騎士団で?」


「ああ」


 右手の人差し指と親指の間に1ゴールド金貨を転送し、ベレッタに向けて親指で弾く。球体のようになりながら放物線を描く金貨を、ベレッタは両手を差し出してキャッチした。


「顔があるほうが表な。俺は表。オードブルは裏でいいか?」


「ん?つまり……コインの裏表を当てた方が東ルートに行く権利を得るってわけか。別にかまわんが、ベレッタはどうする?」


「ベレッタは俺かオードブルのどっちが当てるかに賭けて、当たったら勝った方と決勝戦さ。三人で何かを奪い合う時に騎士団でよくやってたんだよ。こうすりゃ三人勝負でも結果が白黒ついてわかりやすいからな」


 オードブルはその説明に黙って頷いた。


「へー。じゃあオードブルに賭けるよ。てめぇはあたしとオードブルの決勝を指くわえて見てな」


 ピンっと音を立ててベレッタの指から金色のコインが弾かれ高々と舞い上がる。と、


「ん?決勝?……って、あぁ!」


 何かに気付いたようなベレッタの声。でももう遅い。ここでコインを止めたら反則負けにしてやる。ベレッタと目を合わせ、不敵に微笑んでやった。


「くっ!てめぇ……」


 騎士団で採用してた。なんてもっともらしいこといって勢いで押しきったけど、こんなのは全然公平じゃない。なぜなら俺とオードブルはベレッタに選ばれさえしなければ一回だけ二択に正解すればいいのに対して、ベレッタは絶対に二回二択に正解しなくてはならない。つまり、ベレッタがオードブルに賭けた時点で俺の勝率は50%。あいつらは25%。ベレッタに選ばれさえしなければジャンケンの33%より遥かに勝率が高い。それだけだと、ベレッタがもし俺を選んでいたら?っていうふうに思うかもしれないが、問題ない。オードブルは俺に甘いから駄々こねてれば東ルートを譲ってくれるに違いない。つまりこれは単純に、ベレッタの勝率を33%から25%に引き下げるための作戦!俺の勝率は実に、75%!


 ちゃりん。と音を立て傾きながら転がる金貨。すがるような目でそれを見るベレッタ。大丈夫。俺の場合当たらなくてもまだ保険(オードブル)がいる。


 コインは……表!


「よし、じゃあ俺の勝ちだな。東ルートには俺がいかせてもらうぜ」


 ちっ!って表情のオードブルと対照的に、納得がいかないようすでこっちを見るベレッタ。


「なんだよベレッタ。なんか文句あんのかよ」


「別にねぇよ!」


 ねぇのかよ。前ベレッタに俺が嵌められた時、「悪党にきたねぇは誉め言葉だぜぇ」なんて調子こかれたから同じこといってやろうと思ってたのに。


「よし! じゃあ逃走ルートを決めようか! これが一番重用だからな! ほら二人とも、ショボくれてる暇はねぇぞ!」


 台をバシバシ叩いて場を仕切り直す。早くメルロニにいきてぇ。さっさとこんな会議終わらせて俺より弱い奴に会いにいく。


「完全に調子のってやがる……」


「ったく。まぁいい。逃走ルートというか、どこに逃げるかだな。やはり飛行船か」


 どこの街に逃げても宿屋でのんびり補給なんてしてたらあっという間に包囲されて終わりだ。かといってダンジョンの奥に逃げ込むわけにもいかない。飛行船に乗って他の大陸に逃げるのが一番いい。


「それしかねぇだろうな。西ルート行く奴に飛行船隠してもらって、そこ目指して逃げるようとしよう」


 現在の飛行経路からいくと、東から南を経由して西に抜けるって航路になる。地図にそんな感じで東から西に向け弧線を書き込む。


「なら西ルートには俺がいこう。ベレッタはそれでかまわないか?……ベレッタ?」


 鈍い反応。下を向いて顎に手をあてながら、何か思案していたのであろうベレッタが口を開いた。


「なぁ。もっと無茶しねぇ?」

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