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第5話 『プランの謎』

レヴナード学院での初日。


ケントはアイラに案内され、

《特例生》のための専用教室へ向かっていた。


廊下を歩きながら、ケントは尋ねる。


「アイラさん……

 俺が“分類不能”って、そんなに珍しいんですか?」


アイラは頷く。


「この世界のサブスクは、

 本来すべて塔が管理している。

 だから契約プランは必ず《Free》《Light》《Standard》……

 というように“型”がある」


「でも俺は……」


「型に当てはまらない。

 それは塔の管理外で契約が走ったということ」


ケントは顔をしかめた。


(管理外……って、つまり“不正アクセス”みたいな……?

 俺……この世界にとってヤバい存在なのか……?)


アイラはケントの不安を見抜き、柔らかく微笑んだ。


「大丈夫。

 あなたが危険なのではないわ。

 危険なのは――契約“そのもの”。」


「そのもの……?」


「あの影の波長は、既存のプランのどれとも一致しない。

 けれど、一つだけ近いカテゴリがあるの」


ケントはゴクリと喉を鳴らした。


「……なんですか?」


アイラは小声で言った。


「《最上位プラン》――

 《Black Boxブラックボックス》」


ケントは目を丸くした。


「ブラックボックス……

 何でもできるって噂の……?」


「噂以上よ。

 使用者は世界に数名しか存在しない。

 契約した瞬間から塔の監視がつき、

 国の重要人物として保護・管理されるレベル」


ケントは青ざめた。


「でも俺、そんな大層なプラン契約した覚え……」


「ないわ。

 だからこそ不自然なの。

 契約の記録が塔に残っていないのに、

 ブラックボックス級の波長だけがある――」


(ブラックボックス級……?

 俺そんな……)


だがアイラは急に言い淀んだ。


「……いえ、違うわね。

 “近い”と言ったけれど、正確には――

 ブラックボックスより“不安定”。」


「不安定……」


「ええ。

 本来はありえない性質。

 だから塔が何度も反応した」


ケントの背筋が冷たくなる。


(塔は俺に……警戒してる……?)


 



学院の特別教室は、

普通の教室よりも重たい結界に包まれていた。


アイラは扉を開きながら言った。


「ここなら、外に影響を出さずに力を試せるわ」


中には既に一人の生徒がいた。


ふわりと赤い髪、薄い笑み。

柔らかい雰囲気だがどこか掴みどころがない。


ミナトが肩をすくめる。


「……うわ、よりによってお前か。

 ケント、気をつけろよ。こいつちょっと変だから」


赤髪の少年は軽く手を振った。


「ひどいなミナト。

 初対面の子に“変”って紹介する?」


ケントは戸惑った。


アイラが紹介する。


「彼は《リオン》。

 特例生の中でも、最も制御の難しいプラン保持者よ」


リオンはにこりと微笑む。


「よろしく、ケントくん。

 君の影……面白いね」


ケントは一歩後ずさった。


(この人……なんか危ない……)


リオンは続ける。


「僕のプランは《Rewriteリライト》――

 “現象を書き換える”能力らしいんだけど、

 うまく使うと世界そのものに干渉しちゃうらしくてね。

 扱いが難しいんだ」


ケントは目を丸くした。


(そんなの……やばすぎるだろ……)


アイラは二人に向き直り、真剣な表情で言った。


「ケント。

 あなたの影の波長を測定した結果、

 判明したことが一つあるわ」


ケントは息をのむ。


「あなたのプラン――

 おそらく《正常なルートを経ずに契約された》」


ケントは固まった。


「正常じゃない……?」


「そう。

 本来この世界で契約するには、

 塔を通す必要がある。

 でもあなたは“外”から直接契約されている」


(外……?

 やっぱり俺の世界から……?)


アイラは続ける。


「そしてその契約名の断片が――」


ケントは飲み込んだ。


「……なんて名前なんですか?」


アイラはゆっくり言った。


「――《BUG PLΛNバグプラン》」


ミナトとリオンが同時に息を飲む。


「バグ……!?」


リオンは笑みを消し、低く呟いた。


「塔のプラン体系に存在しない……

 “異物契約”……」


アイラはケントの影を見下ろす。


影は静かに揺れていた。


「ケント。

 あなたはおそらく――

 “この世界にないサブスク”を契約して

 転移してきたのよ」


ケントの心臓が大きく跳ねた。


「それって……

 俺は……この世界の仕組みを壊す存在ってことですか……?」


アイラは首を振る。


「いいえ――

 “鍵”よ。

 この世界のサブスクの最深部へ繋がる、ね」


ケントの影がふっと揺れた。


リオンが口元に笑みを浮かべる。


「面白くなってきたねぇ。

 バグプランか……

 君、本当に危険だよ?」


ケントは言葉を失った。


だがその影は、

塔の方向へ細く細く伸びていく。


まるで――“呼ばれて”いるように。


学院の窓の外、遠い塔は

不吉な黒い光を脈打ち始めていた。


 



 


その夜。


塔の上層で、黒衣の男が呟いた。


「バグプラン……

 ついに現れたか」


影が彼の周囲を蠢く。


「長かった……

 これで“世界の更新”が始まる――」


塔は深く低く鳴った。

その音は、街全体に微弱な震えとして広がっていく。


塔が《異物》の存在を確かに検知した瞬間だった。


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