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第12話 『影と心――選ばれたのではなく、選んだ道』

ケントの足元で影が蠢いている。

それはもう、以前のように暴走するだけの黒ではなかった。

恐怖と向き合い、仲間を守り、ジルの圧倒的な魔力に抗い、

その果てに辿り着いた“意志”の光を宿していた。


アイラが静かに言った。


「もう……影はあなたを怖がっていない。

 あなたを“中心”だと信じている」


ミナトが拳を握る。


「でも、ジルは戻ってくる。

 今度は連中も本気でケントを狙ってくるだろうな」


リオンが学院の文献を抱えたまま、深く頷いた。


「影がここまで成長した以上……

 もう“観察対象”じゃ済まない。

 本当に迎え撃つ準備をしないと」


ケントは影を見下ろした。


黒い光は揺れながらも、

どこか優しい温かさを帯びている。


「なぁ……お前。

 俺はさ……

 お前に選ばれたんじゃなくて……

 お前を選びたいんだ」


影がピクリと震え、

足元からケントの胸元あたりに吸い付くように寄り添った。


ミナトが目を見開く。


「おい……これ、今までと全然違ぇぞ」


リオンも息を呑む。


「“従属”じゃない……“同調”だ……」


アイラの声は少し震えていた。


「ケント……もう一度だけ、影に触れて。

 あなた自身の言葉で……どうしたいかを」


ケントは深呼吸し、

影の中心に手を伸ばした。


影の中は冷たく、

そしてどこまでも深い。

だが――今は、怖くなかった。


「俺は……

 もう逃げたくない。

 この世界で、生きたい。

 みんなと……」


影が、一瞬だけ形を変えた。


輪郭を持ち――

人の腕のようにケントの手に触れ――

そして完全に溶けて、ケントの足元へ戻った。


リオンが呟く。


「……影が“言葉”を理解してる……」


ミナトが笑った。


「やっとだなケント!

 お前の影、本当に仲間になったんだよ!」


アイラは瞳に涙を浮かべ、

ケントの手を握った。


「影は……あなたの意志で強くなる。

 だから……きっとどんな未来でも、戦える」


ケントは苦笑した。


「戦いたくて強くなったわけじゃないけど……

 守りたいものがあるなら……逃げられないよな」


影が淡く揺れた。


まるで「そうだ」と言っているように。


***


学院の外は、空気がひどく静かだった。

まるで、何かが来るのを待っているように。


ミナトが肩を回して言う。


「ケント。

 お前がどう動くかで、これから変わるぞ」


リオンも頷く。


「僕たち、どんな選択でも支えるから」


アイラがケントの前に立った。


「ケント。

 あなたは……どうしたいの?」


ケントは影と共に、空を見上げた。

どこまでも広く、世界はまだ何色にも染まっていない。


(俺は……

 もう誰かに決められた道を歩かない)


深く息を吸い――

はっきりと答えた。


「来るなら来い。

 俺は逃げない。

 仲間と一緒に……全部、守る」


影がケントの背後で大きく広がり、

まるで翼のように形を揺らした。


ミナトが笑い、リオンが頷き、

アイラが微笑む。


そしてケントは歩き出す。


恐怖でも、運命でもない。

世界に選ばれたのではなく――

“自分の意志で”選んだ未来へ。


影は静かに寄り添う。

ケントの影――その心臓の一部と共に。


まだ物語は続く。

塔との戦いも、影の真実も、

ケントの成長も終わっていない。


だが確かに、ここからすべてが始まる。


ケントが、“自分で選んだ足”で歩き出した瞬間に。


──影と心は、一つになった。


「行こう」


ケントの一言に応えるように、

影が静かに揺れた。


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