#21 働くことになりました
~おとめtheルル~
20代くらいの青年。
イラスト、アニメ、ゲームが趣味。
文章は丁寧に書き込むけど遠回りな表現は苦手。
小説の腕はアマチュアなので、優しく見守ってね。
#21 働くことになりました
7月後半、終業式の日。
1学期最後の学校に行くと、何と妖精時代の仲間だった
フィアラという魔法使いが転校生として現れる。
放課後、そんなフィアラのことが気になって話しかけに行くが
向こうは私のことを知らない様子。
そんなとき、フィアラはフィアラ以外のみんなにも
(私の)情報を求めるため、学園から近い場所にある丘の上のカレー屋さんに
連れて行かれてしまう...。
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店長らしき人に案内され、フィアラも一緒に奥の部屋に向かう。
ピコピコピコ...
「おう、お帰り。」
するとそこには畳の上の小さな部屋の中に、テレビゲームとかいう
こっちの世界の娯楽を楽しむ2人の男たちの姿が。
「ぶっはー、また負けたぜー!!」
「うむ、これで100戦100勝だな。...そうだ、ちょうどよかった。
フィアラ、コイツじゃ相手にならんから次は君が...」
...と、彼がフィアラにコントローラーを渡そうとしたとき、
横からバーランド(女戦士)がコントローラーを投げ飛ばした。
「ちょっと!!フィレッチェ!!アンタ10勝したら
店の手伝いするって言ったでしょ!!」
[...あ、あの人が賢者フィレッチェ...?!]
私は嬉しさと感動で泣き出しそうになってしまう。
「あ、お、お客さん...?!
ヤバ、こんなみっともないところを見られちゃって...」
...と、慌ててこちらを見たバーランドと目が合う私。思わず...
「よかった...みんな元気そうで...!」
と呟く。しかし...
「ねえ...この子、誰なの?」
やっぱりみんなには気づいてもらえなかった。
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休憩時間になったのか、店長たちも含めたみんなに
私の話をするフィアラ。
「...つまり、お前さんは知るはずもない人物なのに
なぜかお前さんの名前を知っていると...」
店長はフィアラと私を見てから言う。
「ええ。それでフィレッチェたちは何か知らないかと思って連れて来たわけ。」
だ、だけどフィレッチェは
(妖精時代の)私と会ったことがあったっけ...
「なるほどな。しかし君のような女は知らん。」
きっぱりそう言われてしまった。すると...
「そう、でしょうか...妖精...?魔法使い...?」
今度はリアン(内気な武闘家)がいいところに目をつける。
しかしそれ以上言葉は出てこなかった。
「だからどうして分からないってのよ...!!私は!私は...っ!!」
そこまで思い出したなら、ともう一度妖精時代の名前を呼ぼうとするが
やはり出てこない。
「やれやれ、話は平行線のままだな。
とりあえず、昼休憩が終わる前にまかないでも食べておかないか?」
そう言って立ち上がる店長。
「...おっと。嬢ちゃんも一緒に食べて行くかい?
本当はあまりよくないのだが、今回は特別にうちのおごりだぞ。」
私のほうを見てそう言ってくれる店長。あら、それならぜひ...。
「あ...ありがとう、ござい、ます...」
店長がまかないの準備に行ったあと、私たちは話を続ける。
「よお!俺はディエルってんだ!名前は?」
突然ディエル(元勇者)が私に話しかける。あ、コイツは...!
「やっぱりアンタがポンコツ勇者のディエルよね!!」
...と、思わずそう叫ぶと一緒にいたみんなが混乱してしまう。
「ディエルのことも知っているなんて...
やっぱりこちら側の世界の住民なのでしょうか...」
リアンが呟いていると、
「あ、そういえばポンコツ勇者で思い出したんだけど、ほら。
一緒にいた妖精ちゃんが似たようなことを言っていたような...
あれっ。名前ー...何だっけ...?」
バーランドがついにニアピン賞まで近づけた。しかし...
「妖精ちゃん...そう、私もそこに引っかかることがあるんだけど、
なかなか思い出せなくて...」
結局フィアラも思い出すことはできず、これ以上話は続かなかった。
...そうして話が途切れたとき、
「...って、風野さん!あなた自己紹介した?!」
一緒にいた楓とかいう同じクラスの子が私にそう言う。
「あ、そういえばしてないかも。私は風野優衣奈。
今年この世界に来たばかりなのよ。」
そう自己紹介をして、妖精時代のときのように踊ってみせるが、
誰も気づいてくれなかった...。
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店長が用意してくれたカレーがみんなに用意され、みんなで頂く。
「ぷはー、食った食った!」
そう言って食べ終わった皿の片付けもせずに
テレビゲームの電源をつけるディエル。
「やれやれ。もうひと勝負するか。」
つられてフィレッチェもコントローラを握る。
「ダメだこの2人...」
バーランドが呆れていると、
「そうだ!風野さん!!一緒にここで働かない?!
この2人よりは絶対仕事できるよー!!」
突然楓が私を見て言う。
えっ、何それ。いわゆるアルバイトってやつの勧誘じゃ...
「なるほど。そしたら私たちとの関係についても何か思い出せるかもね...?」
「...夏休み期間はお客さんも増えるので、
こちらとしてもありがたい限りです...!」
フィアラともう一人の少女は勝手に納得する。
...って...は?
「ねえ、いいでしょ?一緒に働こうよー!」
そう言って私の肩を揺らす楓。
「え...ええ...?」
「おっ?嬢ちゃんもここで働く気になったか?
いいだろう、採用!!」
ちょうどそのタイミングで店長が戻ってきて勝手に採用されてしまっていた。
「ちょっ、誰も働くなんて言ってませんけどーーー?!」
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この日の夜、家に帰ってから父や母、
瑠夷斗にカレー屋のことを報告せざるを得なかった。もちろん不本意ながら。
「えっ、何、あなたカレー屋さんでバイトすることになったの?!」
「おお、それはとてもいいことだ!!
期間中必ずそのカレー屋を訪れてやるからな!!」
「いや、来なくていいってば...!」
やっぱり黙っていたほうがよかったかしらと思う私。
しかし母に泣きそうになりながら
「自分からバイトするなんて...優衣奈も成長したわね...」
と言われ、少しむずがゆい気持ちになるのであった。
「へー、珍しいな。あの事故から別人のようになった姉ちゃんが
自分からアルバイトとか...なんか裏金とかもらったんじゃないの?」
「瑠夷斗!!なんてこと言うの!!」「そうだぞ瑠夷斗!」
「う、ウラ、ガネ...?それは
もらってないけど、カレーならもらってきた!はい。」
そう言ってカバンからカレーを取り出す。
「やっぱ買収されてんじゃないか...!!」
???、と取り出したカレーを見る私。
果たしてこの世界ではじめての仕事を上手くこなすことができるのだろうか...
続く...
はじめまして、おとめtheルルです。
クスッと笑える作品を作りたくて文章を書きはじめました。
気軽に反応を頂けると嬉しいです。
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