#2 美味しいチキンを食べました
~おとめtheルル~
20代くらいの青年。
イラスト、アニメ、ゲームが趣味。
文章は丁寧に書き込むけど遠回りな表現は苦手。
小説の腕はアマチュアなので、優しく見守ってね。
#2 美味しいチキンを食べました
私、風野優衣奈はトウキョウで暮らす女子高生。
...って言ってももう、本物の優衣奈ちゃんは転生して
赤子になっちゃったんだけどね。
そんなわけで交通事故とやらで亡くなった優衣奈ちゃんの体を借りて
私、元妖精さんの魂は今日も楽しく生きさせてもらうのです...!
...なんて考えていた私は、
フカフカのベッドの上で目を覚ます。
すると目の前には少年が写り込んでいた。
「おはよう、姉ちゃん...!体調、大丈夫か...?」
とても心配してくれる。
この感じ、まるで家族みたいだわ...
「お、おはよう、えーっと...」
「瑠夷斗だよ、姉ちゃんの弟。...分かるよな?」
「あ、ああ、瑠夷斗!おはよう!!」
すると少しだけ笑顔になった弟、瑠夷斗。
とりあえず私はベッドから出て部屋を見渡してみる。
綺麗に整理された棚、かわいらしい人形...
なるほど、これが生前の優衣奈ちゃんが過ごした部屋か...
「...?どうした?」
瑠夷斗に声をかけられ、我に戻る。
しかし朝起きてまずどうしたらいいのか、人間族の習慣は分からない。
「あ、あの...その...」
「ああ、もしかして何をしたらいいのかわからないか?」
うん、と頷く私。
すごいわね、人間の兄弟って何も言わなくても分かるの?
「俺の場合はまず、顔を洗って、席について...あ、そっか。
今はもう春休みなんだっけ。」
春、休み...?
何それ、春って休んでいいの?
...と、困っていると向こうの部屋を指す瑠夷斗。
そこには顔を洗う台があったので、言われたように顔を洗って
席についてみた。
「あはは、なんかかわいい。」
弟にからかわれるってこんな気持ちなのか...
すると瑠夷斗はピッ、と何かのボタンを押した。
[おはようございます!3月25日、月曜日の朝10時になりました!]
「...ええ?何あれ?!」
そう言ってさっきまで真っ黒だった壁に近づく私。
それに触れてみるが、向こう側の人はびくともしない。
「あはは、テレビだよ、テレビ。本当に面白いなぁ...」
さっきからからかい続ける弟に、少しだけムキになった。
「何よっ!!本当にわからないんだから仕方ないじゃない!!」
するとごめんごめん、と両手を前に出す瑠夷斗。
「さて、それじゃあ朝ごはんにする...?」
そう言って向こうのほうへ行き、四角い箱の中に
食べ物が詰まったものを持って戻ってきた。
...それはそうと、父と母はどこへ行ったのだろうか...
「ね、ねえねえ...お父さんとお母さんはいないの?」
「ん...?ああ、そっか。今日は2人とも仕事だよ。」
「仕事...」
聞いたことがある。
人間族は仕事と呼ばれる労働を行い、それによって得た通貨を使って
食料や衣服を手に入れたり宿に泊まったりするらしい。
この世界でもそれは同じなのだろうか。
「へえー、なんの仕事をしているの?」
「えーっと、父さんは大手企業の会社員、母さんは
漫画家さんの助手...だっけな。」
どちらもまったくピンと来ない。
「しかも父さんは4月から部長に昇格するらしくて、そしたら今よりもっと
いい暮らしができるって言ってたよ!」
うーん、何言っているか、さっぱりわからない。
「...とりあえずお父さんもお母さんも仕事に行っていないのね。」
う、うん、と頷く瑠夷斗。
「それより、はい、これが姉ちゃんの分。
朝は用意してくれたけど、昼はないから買いに行かないといけないからな。」
そうして箱の上に被さった薄い膜を外し、中の食べ物を食べている。
「い、いただき、ます...」
私も膜を外し、食べてみる。
「...美味しい...」
妖精の頃には食べたことのない味。
たくさんのタレの中に柔らかい肉が入ったそれは、
ちょうどよい甘辛さで次から次へと口の中に溶けてゆく。
これは一体なんなのだろう...
「チキン南蛮弁当、そんなに気に入った...?」
苦笑いしながら私を見ている。
「チキ...これがチキンなの?!」
あっちの世界で食べたチキンとはまるで違う。
そうしてすべてのチキンを食べ終わった私。
「おかわり!ねえ、もっとないの?!」
「さ、さっきも言ったけど今はこれしか用意されていないんだよ...
そうだ、あとで俺と一緒に買いに行ってみる?」
「これって買うことができるの?!」
それを聞いてワクワクが止まらなくなった私。
「分かった分かった。
...普段なら姉ちゃんと買い物に行こうなんて絶対思わないけど...」
後半ボソッと呟く瑠夷斗。
「ねえ、どこで買うことができるの?」
ワクワクでいっぱいの私はすぐさま席を立ちあがった。
「落ち着いて落ち着いて。さすがにその格好で出るわけにはいかないから...」
そう言ってベッドのあった部屋を指差す。
「とりあえずあの部屋のクローゼットで好きな服に着替えてきなよ。
その間、俺も買い物行く準備するから。」
分かった、と部屋に戻る私。
ガチャ...
部屋に戻ると、部屋は薄暗かった。
「どうしたらいいのかしら...」
すると、横に広がる大きな幕の後ろから光が漏れているのが分かった。
思い切ってその幕を開いてみる。
「きゃっ...」
すると、大きな窓が現れ、その先には見たこともないほど高いビルや
たくさんの住宅が遥か遠くまで続いていた。
思わず窓を開ける。
「すごい......」
眩しい太陽が世界を照らす。
ここがトウキョウ、という街なのか...
思わず体を乗り出すと、慌てて我に戻った。
「ああ、あぶなっ!!...って、ええーー??!!」
「どうした、姉ちゃん?!」
私が驚くと、すぐに瑠夷斗が駆けつける。
「ねえ、瑠夷斗...ここ、地上じゃないの...?」
涙目になって語りかける私。
もう少し体が出ていたらそのまま落下していたかもしれない。
「ああ...ごめんごめん、ここ、39階なんだよ...?」
へ....?
「さ、さんじゅうきゅう階?!!!」
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どうやら優衣奈は人間族の中でも比較的いい生活を手にしていたようで、
タワーマンションと呼ばれる超巨大な住宅施設に住んでいたみたい。
だからあんなに家が小さく見えたわけね。
「よしっ、買い物に行こう。」
そんなわけでなんとか着替えを済ませ、美味しいチキンを買いに
家の外に向かった。
「ほえー...」
歩きながら、私はずっと周りをキョロキョロしながら見渡していた。
「ちょっと。こっちこっち。」
あまりによそ見をしていたので、途中弟を見失いそうになったが、なんとか
お店にたどり着いた。
「いらっしゃいませー。」
「な、なんだこりゃーー!!」
そのお店は、今まで見てきた人間族のお店とは比べ物にならないくらい
巨大な巨大なお店だった...!
続く...!
はじめまして、おとめtheルルです。
クスッと笑える作品を作りたくて文章を書きはじめました。
気軽に反応を頂けると嬉しいです。
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