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05.復讐!黙ってられるか!

 「うわっ! 死ぬかと思った!」


 突然、俺は夢の中から飛び起きた。


 え? ちょっと待てよ。俺、寝てた?


 机に伏せたままの体勢で、後ろの壁に掛かっている時計を確認する。すでに1時間目が終わる頃だった。


 ふう~よかった……


 幸運にも、さっきの授業は自習時間だった。先生も来ないし、好きなことをやっていい時間だ。


 本を読むのもよし、漫画やスマホで遊ぶのもよし。もちろん、寝るなんてのも誰にも咎められない。


 他のクラスに迷惑さえかけなければ、基本的に何をしてもOKだ。


 もしこれが普通の授業だったら? 間違いなく俺はまた佐々木先生に職員室へ“お招き”されていたところだろう。


 ……それにしても、さっきの夢が最悪だった。


 机の上で長いこと伏せてたせいか、妙に疲れた感覚が残ってるし、夢の中では悪夢を見た。


 犬の群れに追われて、最後には崖から落とされるっていう——いや、心臓が止まるなかと思ったぜ!


 おかげで今も疲労感が抜けない。


 少し気分転換しようと思い、廊下に出て風に当たるつもりだ


 すると、ふと視界の端に、廊下を歩いている数人の男子が入ってきた。


 ……あれ? なんだか、どこかで見たような気がする……


 あっ!そうだ!今朝電車にいたあいつらだ!


 「こいつら……間違いない! 朝のやつらだ!」


 その瞬間、教室を飛び出して奴らを追いかけた。


 こいつら、朝俺が不意を突かれてボコボコにされたのをいいことに、調子に乗りやがって……この恨み、晴らさずにいられるか!


 慎重に奴らの後をつけ、最終的に奴らがあるトイレに入るのを確認した。


 そこは学校の隅にある、ほとんど使われていないトイレだった。普段生徒が来ないせいで、ギャングたちの“秘密基地”になっているらしい。


 「おい、そこのお前ら!」


 俺はトイレの中に入り、大声で叫んだ。途端に奴らの視線が一斉にこちらに向く。


 「やっぱり同じ学校の奴だったか……やっと見つけたね~」

 「お前、朝の……」

 「へへ~どうする? 土下座して俺に謝るか? それとも……他の方法で命乞いしてみるか?」


 ニヤリと不敵な笑みを浮かべ、奴らを見据えた。今日は絶対に負けるつもりはない。


 この勝負、俺の勝ちだ! そう思った瞬間——


 ドスッ!


 「いってぇ……!」


 突然、俺の頭に鈍い衝撃が走る。


 誰かがいきなり棒か何かで俺の頭を殴ったらしい。全く気づかなかった。


 不意打ちに完全に対応できず、その場でよろけ、視界が真っ暗になり、そのまま地面に倒れ込んだ。


 「調子乗ってんじゃねぇぞ、このクソガキが!」


 倒れた直後、さらに蹴りが飛んできた。


 「おら!これでも喰らえ!」


 容赦ない蹴りが次々と俺の体に降り注ぐ。痛みに耐える暇もなく、奴らの足が何度も俺を踏みつける。


 「どうだ! 思い知ったか?自分が何様だと思ってんだよ、コラ!」


 一人が俺の襟首を掴むと、思い切り俺の体を持ち上げてきた。


 そして——


 ゴンッ!


 強烈な一撃を顔面に叩き込み、その勢いで俺はトイレの奥にある個室に叩き込まれた。


 頭が便器の蓋に激しくぶつかり、その瞬間、額から血がどっと流れ出した。


 「ここはな、お前みてぇなクソ野郎が偉そうにする場所じゃねぇんだよ! しっかり覚えとけ、このバカちんが!」


 奴らの罵声が耳に響く中、俺の意識はだんだんと薄れていった——


 「あんたたち、いい加減にしなさい!」


 俺にさらに手を出そうとしたその瞬間、突然、どこからか怒鳴り声が響き渡った。


 その声に気を取られたそいつらが動きを止める。


 この声……もしや……いや、絶対にそうだ。


 「また渚ちゃんをいじめるなんて、許せない!」


 やっぱり……


 里滨よ、またしても助けに来てくれたのか?


 おいおい、これでまた借りを作る羽目になるじゃないか! しかも、だから「小渚」なんて親しげに呼ぶのやめてくれって!


 「はぁ? 勝手にこっちに突っ込んできたのはそいつだろ? 自業自得だ。」

 「そうだとしても、手加減ってもんがあるでしょ! あんたたち、やりすぎだわ!」

 「月本さん、あの女、強すぎますよ! 逃げましょう!」

 「ビビってんじゃねぇよ! 女一人相手に情けない……!」

 「くらえ!」


 ドスッ! バキッ!


 その直後、トイレ中に拳や足がぶつかる音と、不良たちの断末魔の悲鳴が響き渡った。


 痛みで床に崩れたまま動けなかったけど、これだけで状況がどうなっているのか十分に分かる。


 里滨が完全に圧倒している——ヤンキーたちを相手に、まるで怪獣みたいだ!


 なんとか便器の縁を掴んで体を起こし、個室から出てみると——


 ……全員、倒れてるじゃねぇか。


 間違いない。このケンカ、里滨の圧勝だ。


 「つ、強すぎる……」


 呆然としたまま、改めて彼女の恐ろしさを実感するしかなかった。


 パチパチパチーン……


 すでにすべてが終わったと思った矢先、突然鮮やかな拍手音が響き渡った。その直後、陰湿な笑い声が耳に届く。


 「おおほほほ、悪くないな〜本気で手を出す前に、お前が本気で来るとはな?」


 ああ、これはさっき俺を殴っていた奴だ。顔は見たことないけど、どうやら連中だ。


 この男は、再び床から立ち上がりながら、陰険な笑い声を上げて拍手を続けていた。どうやらさっきの里滨の攻撃は彼にとっては何のダメージにもなっていないようだ。


 そいつが強すぎるのか、それとも他の奴らが弱すぎるのか?


 「あんた、他の奴らよりずっと耐えがいいね。それなら、もう一度来なさい! このうっとうしい奴め!」


 里滨は相手が自分の攻撃を受けても立ち上がれるのを見て、殺気立った冷笑を浮かべた。首をくねらせて、再び突進した。


 パシッ!


 つかまえた! 里滨の拳が、あっさりと彼にキャッチされてしまった!


 この奴……他の奴らとはレベルが違うのか?


 「力もなかなかだな。お前が女の子だから、本気で手を出す気はなかったけど、ここまで来たら、徹底的にやり合うしかねぇな〜」


 そう言いながら、彼は素早く拳を振り回し、里滨に向かって猛烈な一撃を放った。


 「やめろ!」


 間一髪だった。


 彼の拳が里滨に当たる前に、俺は素早く飛び込み、一蹴りで彼を押し飛ばした。それでようやく里滨がその一撃を受けるのを防いだ


 「てめぇ、さっき俺の背後から不意打ちしたって何のつもりだよ? 俺はな、ただあいつらに仕返ししに来ただけで、お前に何の関係あるんだ? それに、こんな場所で女の子と小競り合いして、お前、全然男らしくねぇな! さっさとどっか行って反省しろ!」


 カッコいい! このセリフ、マジで男らしいじゃないか! さっき一蹴りで彼を吹き飛ばして、こんな言葉を放ったなんて、自分で自分がカッコよすぎる。


 奴は俺の蹴りを喰らった後、その傲慢で陰険な表情が一変して、驚きと恐怖に満ちた顔になった。ただひたすらに俺を見つめてはいるが、前に出ることも、何も言えない様子だ。


 怖じ気づいたか?


 まあ……どうでもいい! 俺は普段から人を簡単には叩かない。


 彼がさっき不意打ちをしてこなければ、たとえ彼らが一味であっても手は出さなかった。この一蹴りは、さっきの不意打ちへのお返しだ!


 「渚ちゃん……」

 「里滨さん、俺たち、ちょうど知り合っただけでしょ? その呼び名はもう二度と呼ぶなよ……」

 「このクソ野郎!」


 やばい!また不意打ちだ!


 一度騙されたからには、二度と同じ手には引っかからない。俺は素早く振り向いて彼の動きをキャッチ——パンチだ!


 右手を素早く伸ばし、見事に彼のパンチをキャッチした。


 「この卑怯者が!」


 今度は容赦しない。思い切りの一発で、彼を数メートル吹き飛ばし、壁に激突させた。


 見崎選手、満点!


 「うるさい蝿め、どっか行け!」


 そう叫んだ後、額の血を拭い去り、その場を去った。里滨も俺の後ろを追ってきた。


 「渚ちゃん渚ちゃん、頭は大丈夫?」


 おいおい、さっきもうそう呼ばないでって言ったばかりじゃないか?

 しかも、俺の頭から血が流れてるんだぞ、大丈夫なわけあるか。


 「俺の頭を見てみろよ、これが無事に見えるか?」

 「あはは……そうだね、じゃあ一緒に医務室に行ってみる?」

 「いや、自分で行くよ。」


 もちろんだ! 絶対にイヤだ! この怪我がすでに人目を引いている。


 有名な里滨が一緒に行ったら、間違いなく誤解を招く。それは絶対に避けたい、話題の中心になんてなりたくないんだ。


 急いでここから離れようとしたその時、振り返るとなんと恒川と中野がそこにいるではないか。


 どうしてこいつらもここにいるんだ……


 「見、見崎くん……」

 「あなたの頭が……」


 二人は俺の頭の傷に気づくと、すぐに慌て始めた。

 特に中野は、自分のポケットからハンカチを取り出し、慌てて俺の前に駆け寄り、それを差し出してきた。


 その表情には明らかな焦りが浮かんでいた。


 「見崎くん、これで拭いて!」

 「すぐに医務室に行こう、彩奈ちゃん、手伝って。」


 返事をする間もなく、恒川と里滨が俺の腕を支えて医務室へと向かって歩き始めた。


 「ちょっと待って……自分で行くから……おいおい里滨さん、そこ引っ張るなって、それ俺の股間だぞ!」


 抵抗しようとしたが、二人はしっかりと掴んでおり、手を離す気配はまったくない。


 「ダメだよ、怪我してるんだから、念のために支えてあげるほうがいいよ。」


 恒川はそう断固として言った。


 そんな風に、彼女たち三人によって無理やり医務室へと連れて行かれ、額の傷を手当てされたのだった。


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