03.最も怖い女教師
「見崎、遅刻だぞ!」
教室の入り口にたどり着いた俺を待ち構えていたのは――例の「あの女」だった。
彼女は講台の上で教科書を手に持ち、授業の最中だったが、俺が突然入ってきたことでその視線が俺に突き刺さる。
つられて、クラス全員の視線まで俺に集中するというおまけ付きだ。
声を出す勇気なんてあるわけがない。ただ、俺はその場で黙って立ち尽くすことしかできなかった。
この女……気迫がヤバい。まるで漫画のラスボスそのものじゃないか!
佐々木綾野——この人は俺たちのクラス担任であり、英語教師でもある。
年齢は不明。いや、たぶん若いんだろうけど……肌がすごく綺麗だから老けて見えないだけなのか、それとも本当に20代前半なのかはわからない。
でも一つ確かなのは、彼女の外見は間違いなく美人だということだ。
特にあの前後のボリュームが際立つS字ラインのスタイルは、普通の男なら一度見たら絶対に目を逸らせないだろう。
……なのに、こんな美人なのに、なんでこんな威圧感をの漂わせてるんだ?!
近寄りがたいどころか、近づくのも怖い。まるで俺たちを寄せ付けない、王者のオーラみたいなものが全身から滲み出てる。
しかも性格も超~厳しい。全く容赦がないし、人情味なんてこれっぽっちも感じられない。
こんな恐ろしい女が担任だなんて、どうして俺はこのクラスに来てしまったんだ……
「遅刻したらどうなるか、言ったわよね?」
「し、知ってます……」
「だったら外に出なさい!」
「……了解です。」
俺は彼女の命令に逆らうことなく、大人しく教室の外へと出た。
だって逆らったら、何をされるか分かったもんじゃない。
これから俺は、昼休みまで教室の外に立たされる羽目になった。それだけじゃない。午後の授業が始まる前までに反省文を書き上げて提出しなきゃいけないらしい。
遅刻の罰としては、正直厳しすぎるんじゃないか?
ここまで生徒に厳しい先生、俺は見たことがない。
佐々木先生……本当に怖すぎる!
それに、なんでこんなタイミングで天気まで俺をいじめるんだよ!?
照りつける太陽は容赦なく俺を狙い撃ちし、ジリジリと俺を焼いてくる。まるで神様も俺に罰を与えようとしているみたいだ。
佐々木先生、本当に人情味ゼロだな!
だから、いまだに独身なんだよ! こんな人、どうやって男が近寄るんだ? そもそも近寄るだけでゾッとするのに。
俺は眩しい日差しに耐えられず、顔を横に向けながら教室の様子を伺った。
教室の中では、佐々木先生が厳しい表情のまま授業を続けている。
教室内は恐ろしいほど静まり返り、誰一人として雑談する気配すらない。みんな、佐々木先生を恐れているんだろうな。
もちろん、俺も怖い!
思い返せば、俺がこの学校に転校してきた時、彼女は早速俺に“洗礼”を浴びせてきた。
「このクラスのルールを守らないとどうなるか、分かってるわよね?」と、死ぬほど真面目な顔で言われ、俺は彼女の圧に完全に飲まれた。
その時の彼女の話し方、まるで「私の話を邪魔したら、今すぐお前をぶっ潰すからな」って言ってるみたいな感じだった。
俺も一応男だよ?
なのに、こんな女性にビビるなんて……どれだけ彼女が怖いか想像してほしい。
少なくとも、気迫においては、大半の男が彼女に勝てないって断言できる
俺は午前中ずっとこの場所に立ち続けた。昼休みになるまで、一度も教室の中に戻ることは許されなかった。
クソッ……
午前中、通り過ぎる人からの奇妙な視線にさらされ続けるのは、本当に気分が悪かった。
「ここを修行場だと思えばいい」って自分に言い聞かせてみたけど、全然効果がなかった。
そもそも、修行場ならサンドバッグやダンベル、バーベルみたいなトレーニング器具があるだろ?
でも、ここにあるのは、ただひたすら俺を嘲笑うような見知らぬ人たちの視線と、冷たい好奇の目線だけ。そして、俺の手には教科書とバッグしかない。
こんなところを修行場に例えられるかよ! これは地獄だ……