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31.恒川紅葉がまさかの歌手だった!?リネキラのボーカルという衝撃の事実!意外すぎる!

『人生に対する考え方』

 2年B組 见崎渚


 かつて誰かが言ったことがある。

「人は皆、この世界に生まれてきたことには必ず意味がある。」

 善人は善行を行うためにこの世界に生まれ、悪人は悪行を行うために生まれてきた。善と悪が相互に制約し合い、世界の善悪の均衡を保つのだという考え方だ。

 また、別の人はこうも言った。

「私たちは皆、世の中の美しさを体験し、その中で人生の意味を見つけ出すために生まれてきた。」

 しかし、私はこの二つの考え方には賛同できない。

 人として生まれた以上、どれほど世の中の美しさを体験し、どれほど善行を積み、または悪行を行ったとしても、最終的に私たちが向かう先は死に他ならない。

 生死は繰り返され、虚無の中で回り続ける。すべては虚無であり、生物とは広大な宇宙の中で偶然生まれたに過ぎない存在で、私たちの存在は宇宙全体にとって何の意味も持たない。

 むしろ、生物そのものが抽象的な概念に過ぎない。この世界は虚無であり、存在しない。さらには矛盾に満ちており、人生そのものが抽象的な生物の中でしか成り立っていない。ゆえに、人生に関して完璧な説明をすることは到底不可能である。

 すべては虚無であり、空である。

 空とは、何も持たないが故に、あらゆるものを包み込む。その空はすべての中に存在し、すべてを包含するのである。


 × × × ×


「見崎くん、今日はまだ補習する必要ある?」


 今日、佐々木先生から課題が出た。


 テーマは「人生に対する考え方」。字数は自由、ただ自分の考えを素直に書けばいいという、かなりシンプルなものだった。


 放課後、そのまま机に向かい、課題を始めた。途中、半分ほど書いたところで、恒川が突然声をかけてきた。


 期末試験まで残りわずか。体育の試験はすでに終わり、みんな完全に文化科目の復習モードに入っている。もちろん、俺もその一員だ。


 でも、試験まで残り2日、月曜日から試験が始まったら、その後はすぐに夏休みだ。復習に力を入れる気にはならない。大体、結果はほぼ決まってるし。


 とはいえ、恒川のおかげで補習はかなり成果が出た。感謝している。


「まぁ……今さら補習しても意味ないなぁ、でも次の学期にもよろしく!」

「そう?ならいい。実はね、この2日間、ちょっと忙しくて補習の時間が取れないんだ。」

「え?試験前に忙しいって、何してる?他の科目の復習とか?」


 恒川は少しだけ苦笑いしながら、「まあ、いろいろ」と言って、カバンを肩にかけると教室を出て行こうとした。


「じゃあ、先に行くね。」


 その後を追いながら、少し気になることが頭をよぎった。


「おい、中野と里浜がまだ来てないじゃねえか?」

「もうあの二人には来ないように言っておいたから、あなたもさっさと帰るほうがいいよ。」


 試験前にこんなに忙しくなるって、変だなぁ。だって、恒川はもう試験の準備がほぼ終わってるはずだし……どうして補習もできないほど忙しいのか、全然理解できなかった。


 そう思いながらも、荷物をまとめて、校門前にある石のベンチに向かい、今日の課題を続けることにした。


 なぜそこかと言うと、あの場所だとどうしてもアイデアが浮かびやすいからだ。


 ところが、ベンチに到着すると、すでに中野と里浜が座っていた。


 なんでこんなところで会うんだよ……


 正直、ちょっと驚いた。どうしてここにいるのか、まったく予想外だった。


 あまりにも偶然すぎるね……


「あれ?中野と里浜じゃん?ここで何してんだ?」


 近づいて声をかけると、二人はすぐに顔を上げて、俺の方を見た。


「えっ、見崎くん?こんな時間にまだ帰ってないの?紅葉ちゃん、今日はもう時間ないって言ってなかったっけ?」

「おおおお!まさか!まさか!渚ちゃんまた佐々木先生に怒られたの?」

「お前こそ怒られたんだろ!それに『また』って何だよ!一回しか怒られたことないんだから、呪うのはやめてくれ!あの女、マジで怖いんだよ!冗談でもそんなこと言わないで!」


 里浜、なんでそんなことを言うんだよ?もしこいつが不吉なこと言って本当にそうなったら、どうすればいいんだよ!


「いや、見崎くん、前にも言っただろ?先生はそんなに怖くないって。」

「お前の先生じゃないから、そんなこと言えるんだろ…」


 実際に体験したから、あんなに恐ろしい思いをしたんだ。


 だから、あの恐怖が今でも心に残ってるんだよ!中野なんか、そんなことわかるわけないだろ。


 佐々木先生も彼女たちのクラスの英語教師だけど、担任じゃないので、その恐ろしさを知らないんだ。


 まぁ、とにかくすごく怖いんだよ……もしかしたら佐々木先生は学校の中と外で性格が違うかもしれないけど、俺の中では厳しくて怖い一面が深く刻まれてる。だから怖いんだ。


「そういえば、もうすぐ試験だし、さっき言ってた『忙しいこと』って、結局なんなんだ?俺に補習を手伝う時間すら作れないくらい重要なこと?」

「それって、何でも後回しにするほど重要なことなら、きっとあのことだと思う。」

「え?あのことって?」

「実は紅葉さん、バンドやってるんだよ。」


 里浜がすぐに説明した。


「バンド?」


 俺は驚いて固まった。え?え?え?ちょっと待て!つまり、恒川が歌手だってこと?


「そうだよ、紅葉ちゃんはずっと歌手になる夢を持ってたんだよ。それに、あのバンドはもうかなり前から活動してるんだよ!『リネキラ』って名前、聞いたことある?」


 リネキラって……ああ!それ知ってる!


「あっ……あの二人組のネットバンドだよね?」

「うん、そう!実はそれ、紅葉ちゃんが所属してるバンドなんだよ、しかも彼女、ボーカルもやってるんだよ!」


 えっ?マジかよ?俺、聞き間違えたのか、それとも里浜が間違えたのか?恒川が音楽をやってるなんて、信じられない。しかも、あの『リネキラ』のメンバー!?


 DEATH地区でもそのバンドのことについてよく聞くことがあるし、かつてうちのチームにもリネキラのファンがたくさんいたんだ。


 彼女たちの知名度はすごいよ。顔を見たことがなくても、名前だけは聞いたことがあるはずだし、海夏に負けないぐらい有名だ。


 里浜の話を聞いて、信じられなかった。恒川が音楽に関わってるなんて、まさかあのバンドのメンバーだったなんて、マジかよ……


「たぶん、紅葉ちゃんはライブのための練習があって忙しいんだよ。だから、ここ二日間、彩奈ちゃんとあたしが遊びに行こうって言ったんだけど、断られちゃった。」

「じゃあ、ライブの日には応援に行くの?」

「行きたいんだけど、ずっとあたしたちに行かせてくれないから、どうしようもないんだよね…」

「それなら、こっそり行けばいいじゃん?別にバレないでしょ?」


 ライブ会場にはたくさんの人がいるだろうし、こっそり行けば絶対に見つからないよね?


「まぁ、行けるとは思うけど……でも、彼女が行かないようにって言ってるから、きっと理由があるんだろうし、あたしたちは友達だし、こういうことをするのはなんか申し訳ない気がする。」


 なんだよ……中野、その正義感が強い感じ……


「まあ……好きにしろ、先に帰るから。」


 本当はここで課題を書き終わりたかったんだけど、中野と里浜がこの場所を占拠してて、どんなに空けてくれても、二人が隣に座るだけで落ち着かない。


 何かを書くときは、誰かに見られるのが本当に嫌なんだ。書いてる内容を笑われるんじゃないかって思うと、どうしても自分の心が傷つく気がしてさ。


「これから何か食べに行こうと思ってるんだけど、よかったら一緒にどう?」


 帰ろうとしたその時、中野が突然そう提案してきた。


 もし琴音が誘ってくれたなら、即答で行くんだけど、こいつらなら……ちょっと遠慮したいな。金銭面を抜きにしても、なんだかちょっと変な感じがする……


 しかも、あの時の噂がどれほど傷ついたか、未だに忘れてないからな。


 確かに佐々木先生や文学部の部長が背後にいるから大丈夫だろうけど、この前、体育の試験の準備で一緒に運動したことが、何人かの中野たちのファンに反感を買ってしまったこともあったし。


 それに、バイトの後、弘次さんがみんなをお菓子に誘ってくれる以外、まだ女子と一緒に食事したことがないんだよね……


 あっ、琴音と海夏なら別だけど、俺たちは兄弟だからな。


 中野たちと一緒に食事するとなると、それは「デート」みたいな感じがして、やっぱり無理……


「いや、俺はいいけど……帰って宿題があるから。」


 そう言って、そのまま二人を無視して、北西の方向、つまり自分の家へと歩き出した。


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