24.このカフェに隠された秘密は一体何だ?
現在の状況を見る限り、確かに大勝利を収めたように思えるけれど、この問題はもう何年も続いていることだし、簡単には片付かないだろう。
あの連中はきっとまた戻ってくる。
根本的に解決するためには、まず彼らの目的を知ることが必要だ。それさえわかれば、適切な対策を打つことができるから。
たぶんそのことに気づいた佐々木先生はその晩、閉店後に俺たち全員をカフェのカウンターに呼び集めた。
「どうしたんですか、先生?」
恒川が一番に聞くと、佐々木先生はすぐに答えた。
「まず、午後にあの連中を追い払ったことについて。里浜、よくやったよ。相手が理不尽だったけど、恒川もかなり貢献してくれた。」
「いやいや。もし次にあいつらが来たら、あたしの必殺技で完全にぶっ倒して、母親でも忘れさせてやりますよ!」
「必殺技?」
「うん、見てみる?ちょっとお手本を見せてあげるよ!」
「い、いらないよ!あの時、お前の一発で心に深い傷が残ったんだから。」
あの時の一撃……あのパンチで鼻血が出たんだ、あんな力を思い出すだけでゾッとする。
あの日トイレで不良たちを潰してたとき、里浜は本気を出してたのかな?あの時、俺に放った一撃を見る限り、あの不良たちじゃ耐えきれなかったはずだ。
「え~でも渚ちゃんってケンカも強いよね?あの日、トイレで二発であの人を倒したじゃない。」
「ケンカが強いからって、お前のパンチを受ける勇気があるわけじゃないよ……」
「見崎トイレでケンカしてた?いつのこと?」
えっ?!あっッッッッッ!ヤバっ!どうしよう、どうしよう、どうしよう……
佐々木先生は俺たちに「ケンカしちゃダメ」と言っていた。たとえそれが放課後に起きたことでも!しかし、俺は佐々木先生の生徒だから、つまり俺がケンカをして騒ぎを起こすと、先生には指導する義務がある。
そして、先生の指導方法はもちろん俺も経験済みだ。あの必殺技のようなパンチが俺に降り注ぐのは間違いない。それを受けたら、即座に意識を失って地面に倒れることになるだろう。
そして、恐ろしいのはその後の「未知の罰」。これが本当に一番怖い。未知の恐怖ほど、精神的なダメージが大きいから。
肉体的な痛みは耐えられても、精神的な痛みはそれよりもずっと辛い。
多くのうつ病患者が自分を傷つけたり、最終的に命を絶ったりするのは、その精神的な苦しみが耐えられなくて、生きることが苦痛でしかなくなったから。
俺も今、その恐怖の前で震えている。浅川とのことをどうにかしないといけないのに、さらに佐々木先生に教訓される上に、その後の未知の罰の精神的苦痛……
神様じゃないんだから、こんなもの耐えられるわけないだろう。
「いや、なんでもないですよ!終わったことですし、ちゃんと本題に戻りましょうよ。先生、さっき言いたいことがあるって言ってましたよね?」
慌てて頭を働かせ、思いついたのは話題をそらすことだった。
「あ、そうだ!そのことなんだけど、感謝の気持ちを伝えるのはもちろんなんだけど、他にも話しておきたいことがいくつかあるんだ。」
ふぅ……なんとかうまく話題を切り替えられた。これで、みんなの関心をカフェの問題に向けることができる。
反応がはやくてよかった。これで佐々木先生にお仕置きされることは避けられた。もしあの話を続けていたら、どんな結末が待っていたか、想像するだけで恐ろしい。
「見崎、何かぼんやりしてない?」
突然、耳に入ってきたのは、表面上は普通に聞こえるけど、その奥にある圧力で俺を瞬時に潰せるような、そんな声だった。
佐々木先生だ。
「え、あ、いや、なんでもないです!ちょっと……頭がくらくらしてて、うん、そうそう!」
「くらくら?見崎よ、私が怒る前にちゃんと認めなさい。そうしないと、後がどうなるか、わかってるよね?」
怖っ!この人、怖すぎる!絶対に逆らえない!謝るしかない!
「す、すみませんでした!」
「うん!それじゃ、続けよう。」
俺が真剣に謝ると、佐々木先生は満足そうにうなずき、またさっきの話題に戻っていった。
毎日こんなふうに脅されてると、いずれ本当に心臓が止まってしまいそうだ。
「このことについて、今回は何とやつらを追い払ったけど、これで終わりとは思えない。今日こそ痛い目を見たけど、きっとまた来るはずだ。」
「確かに、あの連中がここで騒ぎを起こし始めてから、かなり長いこと経ってますしね。」
恒川がそう言ってから、少し考え込んだように続けた。
「それにしても、なんだか少し引っかかる気がするんです。」
「え?どういうこと?」
中野が首をかしげながら尋ねると、恒川はすぐに答えた。
「この地区には、さまざまな店がたくさんあるのに、どうしてうちのカフェだけがこんな目に遭っているのか、どうにも腑に落ちないんだ。」
その言葉が終わると、恒川の視線はじわじわと弘次さんに向けられた。
「弘次さん、何か知ってますね?」
その眼差しと口調は、質問というよりもむしろ、問い詰めるようなものであった。
「恒川、失礼なこと言うな!」
「すみません、失礼しました。」
恒川が謝った後、佐々木先生は弘次さんの前に歩み寄り、事情を尋ね始めた。
「親父、このこと、いったいどういうことなの?何か隠してることがあるんじゃないの?」
佐々木先生の鋭い問いに、弘次さんは首を振りながら答えた。
「君たちが手伝ってくれたことには本当に感謝している。しかし、この問題を解決するのは簡単なことじゃない。いや、正直に言うと、君たちの力ではどうにもならないことなんだ……」
「あたしたちが手伝ったのは、弘次さんがこれからも営業を続けられるようにするためですよ!それなら、どうしても解決したいのであれば、言ってください。あたしも紅葉ちゃんも彩奈ちゃんも見崎くんも全力で手伝いますから!」
おいおいおい、中野、勝手に俺を巻き込まないでよ!手伝うなんて言ってないから!全然必要ないんだよ!正確に言うと、俺の名前がその言葉に出る必要なんて全くないんだ。
「私たち、みんな手伝いますから!」
「うん!そうそう、言ってみてよ!」
あの三人が、お互いにそんなやり取りをして、手伝うと言い始めた。
「はぁ……」
それでも、弘次さんは、彼女たちの言葉には反応せず、ただ深くため息をついた。
「この問題はなんとか自分で解決するから、君たちはもう関わらないでいい。」
「解決できるんだったら、最初からこんなに倒産寸前にまでなってないでしょ?」
恒川の言葉はまるで鋭い刃物のように、弘次さんの胸を深く突き刺した。
「お前たちはもう帰りなさい。もう遅いから。」
佐々木先生は突然振り返り、その後、俺たちを一方的にドアの外に押し出した。
「お姉さん、私たち……」
「もう、いいから。先に帰りなさい。」
佐々木先生の意図は理解している。おそらく、先生は一人で弘次さんに話をしようとしているのだろう。
大人同士の問題は、大人同士で解決したほうがいいし、俺たち学生がいくら問い詰めても、解決にはならないだろう。
でも、佐々木はその気持ちを理解していないらしく、ずっと先生の手から逃れようと必死だった。
「もういいよ、佐々木、帰ろう。」
彼女の手を引き、迷わずカフェから外へと引っ張り出した。俺たち全員がカフェの外に出たのを確認すると、佐々木先生は何の躊躇もなくドアを閉めた。
「えっ、姉さん……先輩、なんで……」
「お前の言いたいことはわかってる。俺が先生の言う通りに帰る理由を知りたいんでしょ?」
佐々木の言葉が続く前に、彼女の言葉を遮った。だって、彼女がこれから言おうとしていることは、俺はもう予測できていたから。
「そうですよ!なんでちゃんと聞いてから帰らないんですか?」
「佐々木よ、お前バカか?聞くべきことはもうさっき聞いたでしょ?お前のお父さんが、何も言いたくないじゃないか?」
「彼は言わないんだから、何回でも聞けばいいじゃないんです。」
「言わない人に、何回聞いても無駄だろ?それにさっきも言ったけど、このことは俺たちの力ではどうにもならないことって。弘次さんが、俺たちに真実を教えてくれるわけない。」
「じゃあ、私たちが頑張ったことって…」
「努力が無駄だって言いたいのか?だから言っただろ、お前はバカかって。」
「見崎くん、何か方法を思いついたの?」
その時、中野が俺の前に歩いてきて、尋ねてきた。
「いや、方法なんて思いついたわけじゃない。むしろ、お前らが佐々木先生の言いたいことを全然理解していないだけだ。」
「え?どういう意味?渚ちゃん、全然わからないよ。」
「見崎くん、もしかして……」
「つまり、真実を聞き出すことは先生に任せようってこと。後は俺たちがどうするか考える。真実を知れば、必ず解決の方法が見つかる。でも、もし聞けなかったら、どうやって手伝うことができるんだ?」
「おお!わかった!つまり、あたしたちが何を言っても無駄なんだから、先生に任せたほうがいいってことだよね。大人同士のコミュニケーションの方が、あたしたちよりも効率的だってことか!」
中野は額を叩き、理解したようだった。
「その通り。」
「なるほど、そう考えると確かにそうだね。先生が私たちを急いで帰らせたのも、私たちを遠ざけて自分で聞こうとしたからなんだね。」
「先生は大人だから、弘次さんの負担を少しでも軽くできる立場にいる。弘次さんは真実を先生に話すかもしれないけど、先生がその真実を俺たちに教えるかどうかは、先生次第だよね。きっと弘次さんは、俺たちに迷惑をかけたくなくて、隠しているだろう。」
「それなら、後は先生に任せるしかないね。でも見崎くん、なかなかの手腕だね。私、さっきはそんなこと考えもしなかった。」
「なんか、今の言い方、なんか俺を皮肉ってるみたい……」