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19. ちょっと待てよ!俺の学園ライフに「最強不良との決闘」とかいうバグイベント追加されてるんだが?!

 「こっちは四人もいるってのに、よくついてきたな。……お前、DEMONナメてんのか?」


 狭い路地裏で、四人の男に囲まれながら歩かされる。


 「いや……ナメてねぇよ。つーか、そもそもお前らが『ついてこい』って言ったんだろ?」

 「黙れ、さっさと歩け。」


 背中に押し付けられた刃物が、さらにグッと食い込む。


 ──クソが。


 余計な刺激はしない方がいい。とりあえず、今は大人しく従うしかない。


 路地を抜けた瞬間、目の前に広がるのは──


 「DEMONの集会」だった。


 ……いや、冗談言うなよ!


 数え切れないほどの不良たち。ざっと見ただけで百人以上はいる。


 全員がDEMONの制服を纏い、地面には、鉄パイプ、バット、ナイフといった武器が乱雑に転がっている。


 そして、ほぼ全員がタバコを咥えながら、俺をじっと見つめていた。


 その視線は、まるで獲物を見つけたハイエナのようにギラついている。


 中には武器を拾い上げ、今にも襲いかかろうとする連中までいた。


 ──おいおい、待て待て待て。


 1対100って、どう考えても無理ゲーだろ!?


 しかも相手は全員武器持ち!? こんなん不公平にも程があるだろ!!


 しかし、俺の抗議を聞く暇もなく、背後の金髪男が思い切り俺の背中を蹴り飛ばした。


 「っ──!」


 バランスを崩し、俺の体はそのまま人混みのど真ん中へと放り出される。


 そして──


 一斉にDEMONの連中が俺に向かって飛びかかってきた。


 ふざけんなよ!


 瞬時に体勢を立て直し、迎え撃つ構えを取る。そして、地獄のような乱闘戦が幕を開けた。


 俺は深く息を吸い込み、一瞬で戦闘態勢に入る。


 飛んでくる二本の棍棒を素早くキャッチし、そのまま両手で力強くへし折る──


 バキィッ!!


 乾いた音とともに、木片が空中に散る。


 同時に、背後から鋭い刃が迫る。


 「チッ──」


 素早く身を翻し、刃が空を切るのを見届けると、俺の右足が、一直線に不良の膝へとめり込んだ。


 バキッ──!!


 「ぎゃぁぁぁぁ!!」


 骨の折れる音とともに、男が地面に崩れ落ちる。


 まだ終わらない──


 俺はすぐさま振り向き、左拳を強く握り込む。


 一瞬の沈黙のあと、


 ドゴォッ──!!


 雷のような一撃が、不良の顎を捉えた。


 その衝撃により、男は数メートル吹き飛ばされ、背後の木に叩きつけられる。


 「おい、こいつ……マジかよ……!?」


 周囲の奴らが、一瞬怯んだのが分かる。


 だが、その一瞬の隙を埋めるように、武器を持った連中が一斉に俺へと殺到する。


 俺は退くことで前へ進む。最小限の動きで攻撃を躱し、その流れの中で、的確にカウンターを打ち込む。


 ──だが、数が多すぎる。


 一瞬でも判断を誤れば、即座に押し潰される。


 突破口を探していると、前方から大柄な男が大砲のように突進してきた。


 「調子に乗るな、ガキがぁぁぁ!!」


 太刀が俺へと振り下ろされる。刃が身体に届く、その瞬間。


 ──スッ。


 俺は一気に身体を反らし、刃を紙一重で回避。


 その勢いを利用して、両足を踏み込むと同時に、


 「はッ!!」


 まるで弾丸のように前へと跳び込む。


 両手で男の手首を掴み、腕を力強く捻り上げる。


 「ぐっ……!?」


 カシャン──!!


 太刀が地面に転がり、その瞬間、俺の拳が男の腹部に突き刺さる。


 「がっ……!!」


 巨大な身体が屈む。


 だが、畳みかけるように、俺の膝が男の顎を強かに打ち抜いた。


 ドンッ──!!


 その衝撃で、男の身体は空中を舞い、そのまま後方へと吹っ飛んでいった


 ──ダメだ、このままじゃキリがない。


 数が多い上に、全員武器持ち。こんな状況で真正面からぶつかるのは馬鹿のすることだ。


 「ここを突破して逃げる、それが最善手だ。」


 俺がそう判断し、次の行動に移ろうとしたその時。


 「テメェら!やめてやれ!!」


 鋭く、威圧感のある声が、その場の空気を一瞬で凍りつかせた。


 ──ピタッ。


 今まで荒れ狂っていたこいつらがまるで命令を受けたロボットのように、全員その場で停止する。


 ……なんだ?


 俺はすぐに辺りを見回した。


 状況が一変した。


 この声……まさか……


 声の主がいる方向へと目を向けた。そこにいたのは──


 圧倒的な威圧感を放つ、巨大な男。


 筋肉の鎧を纏ったかのような体躯。立っているだけで、周囲を震え上がらせる覇気。


 その男がゆっくりと歩くたびに、DEMONの連中が次々と道を開けていく。


 誰一人として、その前進を妨げようとはしない。

 

 むしろ、本能的に「避けるしかない」と理解しているかのようだった。


 ──この男こそが、


 不良界において決して超えられないテッペン、2000人もの猛者たちを束ねている最強の男、DEMON現首領、史上最強の不良と呼ばれている——浅川誠(あさかわ まこと)


 今のDEMONが「史上最強」と呼ばれる。


 その所以──それは紛れもなく、この男がいるからこそだ。


 DEMONの首領になるためには、極めて過酷な試練を乗り越える必要がある。


 各支部の首領が、それぞれ最強の10名を選出し、彼ら全員を一人で倒しきること。


 これは、DEMONが設立されて以来、数百人の猛者たちが挑み、そして敗れ去った試練。


 ──だが、浅川誠は違った。


 やつは、たった三分。わずか180秒で、各支部の首領と彼らの精鋭130人全員を沈め、さらに、本部の100人と、当時のDEMON首領までも打ち倒し、全てを終わらせた。


 その瞬間、史上最強の不良、そしてDEMON史上最強の首領が誕生した。


 それはもはや、一個人のレベルを超えていた。その強さは、まるで軍隊一つに匹敵するほど。


 事実、DEMONが「最強の時代」と称されるのも、


 この男の存在があってこそだった。


 「浅川……お前が俺を呼んだんだな?」


 俺は彼に向かって、静かに問いかけた。


 すると、浅川はゆっくりと微笑み、「あぁ、そうだ。」と、短く答えた。


 彼はゆっくりと前進し、俺との距離は、わずか3メートルに縮まった。


 そして、先ほど俺の背中に刃を突きつけていた金髪の男も、浅川の隣へと並ぶ。


 「浅川さん、俺──」


 金髪の男が口を開いた瞬間、


 ドガァッ!!


 強烈な蹴りが彼の腹部を直撃し、そのまま地面を滑るように10メートル以上吹っ飛んだ。


 ……いや、何なんだよ、この男。


 「俺はさっきお客さんを「もてなす」って言ったよな? それがどういう意味か、分かってるか?」


 浅川の表情は、怒りを滲ませていた。


 ──だが、それは表向きのものだろう。


 本当の狙いは、間違いなく俺。


 「悪かったな、見崎。俺の部下が無礼を働いた。」


 軽く笑いながら、表面上の謝罪を口にする浅川。


 だが、俺はその言葉を一切信じず、めんどくさそうに切り返す。


 「……で? 何の用だよ。」

 「いや、久しぶりだからな。最近どうしてるか気になってさ。」

 「元気だよ、じゃあな。」


 これ以上関わりたくない。俺は即座に踵を返し、その場を立ち去ろうとした。


 しかし──


 「待て。」


 低く響く声。


 気がつけば──


 目の前に、浅川がいた。


 「ッ……!?」


 距離、30センチ。


 あまりの接近に、思わず後ずさりしそうになる。


 こいつ……今、どうやって移動した?


 まるで瞬間移動でもしたのかと思うほどの速さ。


 「そんなに急ぐなよ。まだ、お前と『片付ける話』が残ってるんだからさ。」


 浅川の口元には、不敵な笑みが浮かんでいた。


 「……何の話だ。」

 「この前、お前、うちの奴ら潰したよな?」

 「は? 何のことだ?」


 浅川は俺の疑問には答えず、ただ一言、


 「出てこい。」


 そう言い放った。


 すると、群衆の中から数人の男が姿を現す。


 その顔を見た瞬間、俺は思わず声を上げた。


 「……お前ら!?」


 ——学校で絡んできたあのやつら。


 まさか、こいつらがDEMONのメンバーだったとは……


 「月川、月本、こいつで間違いないな?」

 「あぁ! こいつだよ!!」

 「そうだ! こいつが俺たちをボコボコにしたんだ!!」


 学校で俺を襲ってきた連中が、まるで被害者面しながら浅川に訴えていた。


 ……はぁ


 俺はただ、正当防衛しただけなんだが?


 「見崎、つまりお前は俺のチームにケンカを売ったってことになるな?」

 「いや、違うって……!」

 「違わねぇよな?」


 浅川は、俺の反論を容赦なく遮った。


 「お前が俺の部下を潰した。それは事実だろ?」

 「いや、俺は別に……」

 「どう落とし前つけるつもりだ?」


 俺が何を言おうと、すでに決まった結論。


 やっぱり、こういう連中とは関わるべきじゃなかった……


 「まぁ、そんな情けねぇこと言うなよ、見崎。」


 浅川は、不意に笑みを浮かべた。


 「お前、元FORCEの総長だろ?」

 「そんな昔の話、どうでもいいだろ。」

 「そりゃ残念だな。かつて“最凶の不良狩り”と呼ばれた奴が、今じゃこんな腑抜けか。」


 ……クソが。


 その言葉に、妙な苛立ちが湧いてくる。


 「まぁいいさ。俺はお前を潰したいわけじゃない。」

 「……?」

 「だから、決着をつけようぜ。俺とお前で、一対一の勝負だ。」

 「……は?」


 浅川の宣言に、周囲がざわめく。


 「浅川さん、それは……!」


 月川と月本が、納得いかない様子で口を挟もうとした。


 しかし──


 「黙れ。」


 浅川の一言で、彼らはそれ以上何も言えなくなる。


 「どうだ、見崎?」

 「……正気か?」


 こいつと戦う?相手は、DEMONの頂点に立つ男、史上最強の首領だぞ!?


 全然こいつとやりたくねぇな……


 だが、断ればこの場で俺は全員にボコボコにされるのは目に見えている。


 「……お前、本当に“勝負”だけで済むんだな?」

 「あぁ、約束する。」


 浅川の目には、嘘偽りがなかった。


 ……クソ、選択肢なんてねぇじゃねぇか。


 「わかった、やってやるよ。」


 俺は、観念したように答えた。すると、浅川は満足そうに頷く。


 「いいだろう。じゃあ、決闘は夏休みにしよう。」

 「……夏?」

 「楽しみにしてるぜ。」


 そう言うと、浅川は手を軽く振り、部下たちに合図を送った。


 「行くぞ。」


 DEMONの不良たちは、彼の言葉に従い、次々とその場を去っていく。


 月川と月本は最後まで納得いかなそうな表情だったが、浅川の決定には逆らえなかったらしい。


 ──こうして、俺はこいつと決闘の約束を交わしてしまった。



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