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01.偶然の出会い

 よくわからないけど、とにかくアラームが鳴らなかったせいで、すでに起きるべき最適な時間を過ぎてしまっている。


 「ヤッベ!あ~もうもうもうもう!遅刻だ遅刻!」


 すぐにベッドから飛び起き、前日に寝る前に準備していた服を手に取って着ながら、急いで洗面所に向かった。まさに時間とのレースだ。


 今の時間だと、自転車で行けば絶対に遅刻する!どうやら電車に乗るしかなさそうだ……


 普段は電車に乗る習慣がない。正直、電車に乗るのは嫌いなんだ。


 自転車で学校に行けば、電車代も節約できる。学校は隣の地域にあるけど、家も学校も二つの地域の境界に位置しているので、そんなに遠くはない。


 でも今日は起きが遅くなってしまった。電車に乗る以外、学校に早く着ける方法が思い浮かばない。


 タクシーは無理!家から学校までは距離が遠すぎて、最終的な料金が想像できない。


 自転車で行くのはなおさらだ。ここから学校まで自転車で40分もかかるから、授業が始まる前に着くなんて絶対に無理だ。


 慌ただしく洗面を済ませた後、リュックを持って一気に家を飛び出した。この時、まるでウルトラマンの飛行速度を持っていればいいのにと思った。


 ウルトラマンの飛行速度は「マッハ」で設定されていて、1マッハは約1224km/h。もしそんな速度があれば、学校へ行くのに1秒もかからない。そうなれば、毎日授業が始まる直前まで寝てても大丈夫だろうね。


 ん……これはただの空想だ!現実に戻って、急いで駅へ向かって電車に乗らなきゃ!


 今の家中は誰もいなかった。妹の海夏(うみか)はもう学校に行ったようだ。今日は学校でイベントがあったらしいと聞いた。


 普段は彼女は俺と一緒に学校に行くことが多い。俺たちの学校行きの方向が全く同じで、俺が学校に行く途中で彼女の学校を通るから、毎朝私が彼女を送り出している。


 俺、見崎渚(みさき なぎさ)、17歳、高校2年生だ。


 この名前、女の子っぽく聞こえるだろ?


 でも勘違いしないでよ、俺は男だ! なんで両親がこんな名前をつけてくれたのか、正直自分でもわからないけど……


 一ヶ月前、俺は最強と呼ばれるチームのFORCEのリーダーだった。


 この町はDEATH、ALCATRAZ、RASCALS、KITEの四つの地区から成り立っていて、各地区の頭文字を取って、この町は「DARK市」と名付けられた。


 FORCEはDEATH地区で圧倒的な勢力を誇る2つのチームの1つ。


 このチームの目的は、いじめられている弱者を守るためにヤンキーたちと戦うこと。


 一見、正義に満ちたヒーローチームのように聞こえるけど、多くの人の目には、俺たちはあの不良と何ら変わりがない。


 頭が悪く、マナーがなく、毎日ケンカばかり――これが外部の人たちからチームについて聞く一番多い評価だ。


 そんな評価を聞くうちに、俺は疑問を抱き始めた。もしかしたら、俺たちの暴力で暴力に抗うやり方自体が間違っていたのかもしれない……


 かつての俺は、ヤンキーにいじめられる弱者だった。だからヤンキーが大嫌いで、そいつらに対抗する力を手に入れるために格闘技を学び、肉体を鍛え続けた。


 その後、弱者を守ることを目標にして、不良狩りをする者として活動を始めた。


 「FORCE」という名前が良いって誰かが言っていたのを聞いて、DEATH地区で最強のチームが誕生した。すると、どんどんとメンバーが増えていった。


 しかし、チームの勢力が拡大するにつれて、悪評も増えていった。さらに、出所不明の者たちが「FORCE」を名乗り始め、チームの本質が徐々に歪み始めたように感じた。


 長い間考えた結果、誇りに思っていたこのチームを解散し、普通の学生として転校することを決意した。


 「や、やっと着いた……!」


 駅のホームに駆け込んだ瞬間、ちょうど電車が滑り込んできて、俺は思わず大きく息をつく。どうにかギリギリ間に合ったらしい。


 電車はもっと混んでいるかと思ったけど、車内に入ってみると意外と空いていた。

  

 ——いや、それでもスペース自体はあんまり広くない。みんなで少し押し合えば座れるかもしれないけど……正直、俺はあんまり座りたくない。


 この息苦しい感じが、俺が電車に乗りたくない理由なんだ。周りに気を使って、いちいち姿勢を変えるのも大変だし……そんな窮屈な状態で座るくらいなら、立っている方がマシって思ってしまう。


 「あっ、見崎君。」


 隣の手すりを掴んでスマホで漫画を読み始めたところに、誰かが俺を呼ぶ声が聞こえた。

 

 聞き覚えのある声だけど、最初はすぐに誰か思い出せなかった。反射的に顔を上げて声の主を探すと——


 あ……恒川紅葉(つねかわ あかね)か……どうりで聞き覚えがあるわけだなあ。


 恒川は雑誌をめくりながら、電車の座席で静かに腰を下ろしていた。


 その両側には二人の女の子がいて、一人は中野桜花(なかの おうか)。恒川のすぐ隣でスマホをいじっている。


 もう一人は里浜彩奈(さとはま あやな)。恒川の肩にもたれかかって、どうやら居眠りの真っ最中らしい。


 「恒川さん?」


 なんで急に俺の名前を呼ぶの? 普段ほとんど話したこともないのに。もしかして昨日のことが原因か?

  

 「これ、ずっと探してたヘアピンでしょ? さっき階段のところで見かけたんだ。」

 「あっ!ありがとう!助かった!」


 ただそれだけのこと。たまたまヘアピンを見つけたからついでに返しただけだ。


 恒川紅葉の名前を知っていたのは、彼女たち三人がうちの学校で有名な美少女トリオだから。


 しかも恒川紅葉は俺と同じクラス。


 見た目がずば抜けてるから、学校中で知らない人はいないらしい。


 この学校に転入してきてからずっと、あまり学内の噂話に興味がなかった俺でも、さすがに名前くらいは耳にしていた。


 「まさか、こんなところで会うとは思わなかったよ。」

 「俺も驚いた。まさか電車の中で会うなんて……」

 「紅葉ちゃん、そちらは誰?」


 中野が隣で俺と恒川のやり取りを見ていて、不思議そうな顔をしている。視線が俺と恒川の間を行ったり来たりしていた。


 「この前転校してきた、うちのクラスメイトの見崎くん。昨日、アンタのヘアピンを見つけてくれたのよ。」


 え?あのヘアピンって中野のだったのか?てっきり恒川のかと思ってた。


 「そうなんだ! ありがとーね、見崎くん!初めまして、中野桜花です!」

 「ど、どうも。俺は見崎渚。」

 

 ……いやいや、何度か顔を合わせたはずなのに、この反応。ぜんぜん覚えてなかったってことかよ……


 「あのさ、見崎くん。ここ、少し詰めれば座れると思うけど……どう?」


 中野は恒川の方に体をちょっと寄せて、空いたスペースを手でポンポンと叩いてみせた。まるで「ほら、早く座りなよ」とでも言うように。


 ……え? な、なんだこの状況!?


 俺、ずっと信じてたんだ。現実にはラブコメなんて存在しないって! それなのに、これ、まさか……いやいやいや、違う違う! そんなわけがない!


 これは絶対、俺が深読みしすぎてるだけだ。現実でラブコメなんて起こるわけがないだろ!


 それに、この三人は学校でめちゃくちゃ有名な美少女たちだぞ?


 もしそんな連中と並んで座ってるところを、誰かに見られたら——いや、誤解どころの話じゃ済まないな。下手したら、明日から学校中の注目の的になりかねない。


 ……でも、近くで見ると中野、スタイルいいなあ……


 あの窮屈そうな制服を着てるのに、全然隠れてない。むしろ、身体のラインがめちゃくちゃはっきりして——


 いやいやいやいや! 違うだろ! 今はそういうこと考えてる場合じゃない!


 何を考えてるんだよ……本当にもう、自分が情けなくなる。


 「見崎くん?」


 中野が、俺がその場でぼーっと突っ立っているのを見て、もう一度名前を呼んだ。

 その声に釣られるように、恒川と里浜もこちらに目を向けてきた。


 ハッと気づく。危ない!完全に意識が飛んでた! いやいや、決して中野のスタイルに気を取られてたわけじゃないぞ! 絶対に違う! ただ、偶然目に入っただけだからな!


 「いや……このままで大丈夫。俺は座らなくても平気だから……」

 「でも、ずっと立ってると疲れるでしょ?」

 「いえ、そんなことないよ、まあ……ありがとね。」


 もうすぐ駅に着くし、少しの間なら立っていても疲れなんて感じない。それに、どうせ座るなら一人でゆったり座りたい。


 誰かが隣にいると、なんだか落ち着かないんだよ。そうじゃなかったら、毎日わざわざ自転車で通学なんてしてないって。


 「座った方が楽だと思うけど?」


 今度は中野じゃなく、隣の恒川がそう言ってきた。冷静な声だけど、妙に説得力がある。


 「本当に大丈夫よ。」


 俺はきっぱりと断った。


 普通の男なら、女子と隣り合って座るなんて絶対羨ましがられる状況だろう。ましてや、中野みたいにスタイルも良くて可愛い子と一緒なんて——


 でも、どうしてもそういう「狭い空間での密着感」が苦手だ。


 それに、もしこれを学校の誰かに見られでもしたら……余計な誤解を生むのは目に見えてる。


 だから、このまま立っている方が気楽だ。



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