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19/82

18.バイトと不良のダブルコンボ!?……いや、これもう詰んでるよな?

 ここまで来ると、もはや運命なのか、それとも呪いなのか……


 とにかく、俺は転校をきっかけに過去を断ち切り、新しい生活を送るはずだった。


 なのに、なぜかこの学校の「顔の美しさで並び立つ第一位」と呼ばれる三人の美少女と関わる羽目になってしまった。


 普通なら「羨ましい!」と言われるような状況かもしれないが……


 俺にとっちゃもはや地獄そのもの。


 この三人と関わったせいで、俺の生活リズムは完全に崩壊した。


 さらには、根も葉もない妙な噂まで流れる始末。


 ──「噂なんて、いずれ消えるものだ」


 そう考えていた時期が、俺にもありました。


 だが、この学校には、まともな思考力を持った人間がほとんどいないらしい。


 あるのはバカだけだ。


 このままでは収拾がつかないと判断した俺たちは、担任の佐々木先生に頼んだ。


 先生は、「文学部・支部」という謎の名目を掲げ、俺たちをその支部のメンバーに仕立て上げた。


 そして、その情報を文学部の本部である正式な文学部の部長に伝え、噂を学校中に広めてもらうことで、ようやく事態は沈静化し始めた。


 ……らしいんだけど。


 なぜか「あの3人が文学部に入ったらしい」との情報が広まり、男子たちが次々と文学部への入部を希望するという事態に発展。


 まぁ、当然ながら全員不合格だったらしいが。


 そりゃそうだ。


 俺たちはあくまで「噂を収めるための道具」として作られた支部のメンバーだ。


 つまり、実質的にこの支部は存在しないのと同じ。


 そのため、文学部の部長からも「分室は新規メンバーを募集しません」との通達が出され、俺たちの元へ入ろうとする奴はいなくなった。


 ……が。


 それでも諦めないバカ共は、本部の文学部に入部し始めたらしい。


 女神たちに近づくために、文学部に入るとか……どれだけ必死なんだよ。


 ほんと、バカばっかりだな……


 俺たちの「支部」としての文学部には、そもそも活動らしい活動は存在しない。


 ──普通なら、そうなるはずだった。


 だが、現状は特殊な状況になっている。


 数日前、佐々木先生が「カフェでのバイト」を俺たちの部活活動に指定したのだ。


 ……いやいやいや、部活ってそういうもんだっけ?


 まぁ、一応これは「一時的なもの」らしいが、それでも当面の間、放課後はカフェで働かないといけない。


 つまり、これからしばらくの間、俺の放課後ライフはカフェの仕事に奪われるということだ。


 本を読んでのんびり過ごす時間なんて、もう期待できない。


 ……うん、まぁ、俺が運悪かったってことで諦めるしかないか。


 「メイド服、ついに配布!」

 「わぁ~! すごく可愛いっ! 先輩、すごいですね!」


 あの日、みんなでカフェのリニューアル案に賛成してから一週間が経った。


 そして今日、ついに中野と恒川がデザインし、佐々木先生が発注した「メイド服」が俺たちの手元に届いた。


 その瞬間、佐々木先生の妹・佐々木由希は、まるで宝物を手にしたかのように目を輝かせ、ずっとメイド服を見つめていた。


 ……まぁ、気持ちは分かる。


 女の子って、やっぱり可愛い服にテンション上がるものなんだろう。


 ちなみに、今回のメイド服は、いわゆる漫画とかに出てくる露出度の高い、妙にセクシーなものではない。


 デザインは、白いストライプのロングスカートにシンプルなメイドカチューシャという、かなり落ち着いたものだ。


 ごく普通のメイド服。


 ──いや、本当に普通だからな!? 変なこと考えるなよ!?


 そして、意外と凝っていたのがカチューシャの装飾。


 どうやら、中野と恒川は自分たちの名前をモチーフにデザインしたらしい。


 つまり、「桜」と「紅葉」だ。


 カチューシャには、桜の花びらの飾りと紅葉の飾りが交互に並んでいる。


 桜 → 紅葉 → 桜 → 紅葉……という感じで配置され、全体的に繊細で可愛らしい仕上がりになっている。


 もちろん、本物ではなく、すべて布製のパーツを使って作られている。


 ……まぁ、確かにこれは女の子ウケしそうだな。


 「これ着ると、なんか手足がすごく動かしやすい! 空手の練習の時もこれでいいかも~」

 「えぇ~!? スカートで格闘技やる人なんているわけないでしょ!」

 「いるよ!ほら、あたしとか~えへへ!」

 「それは彩奈ちゃんが普通じゃないだけなんだよ……」

 「まぁ、いいじゃない? これで私たちのデザインが、ただ可愛いだけじゃなく、機能性も抜群だって証明されたわけだし。」


 恒川がドヤ顔で腕を組む。


 まぁ、確かに理屈は通ってる。


 これだけ大きな動きができるメイド服なんて、普通はないだろうし。


 ……とはいえ、俺には関係のない話だけどな。


 俺の制服は「特別仕様」だとか言われたけど、その特別なポイントって……


 ただ単に、紅葉と桜の飾りが追加されてるだけなんだが。


 ──いや、これ、ただの「女の子っぽいデザイン」になっただけだろ!?


 まさに特別仕様(物理)って感じじゃねえか!


 佐々木先生……まさか、俺にこれを着せて目立たせることで、ちゃんと働かせるつもりなのか?


 くっそ……ひでぇよ!


 「さて、制服も揃ったし……明日はいよいよカフェの「復活の日」ぞ。」


 佐々木先生は腕を組み、厳しい表情で俺たちを見回した。


 「だから今から、カフェに向かって開店準備をするわよ!」

 「……は?」


 ──いやいやいや、聞いてないんだけど!?


 俺はてっきり、「はい、制服届きました~」で解散かと思ってた。


 もしくは、もう家に帰ってのんびりする流れだと信じていたのに……


 「それじゃあ、先輩たち、さっそく出発しましょう!」


 佐々木が元気よく声を上げ、佐々木先生と一緒に先導する。


 俺たちは渋々ながら、学校を後にした。


 これから生まれ変わるカフェへと向かうために。


 ──しかし、思いがけない出来事というのは、いつも予想していない時に起こるものだ


 「よー!見崎。久しぶりじゃねぇか?」


 校門を出て間もなく、突然四人の男に声をかけられた。


 ……いや、誰だよ、お前ら。


 見覚えのない顔ぶれ。まったく知らない連中だ。


 訝しみながら口を開こうとしたその瞬間、


 カチッ──


 微かな金属音とともに、金髪の男が俺の背後に手を伸ばしてきた。


 そして、背中に何かが当たる感触。


 「あんまり余計なことするなよ。俺たちはDEMONの者だ。」


 金髪の男が、低い声で囁く。


 「ここじゃなんだからよ、ちょっと付き合ってもらうぜ。」


 静かな声。だが、その言葉には明確な警告が込められていた。


 まるで、「ヘタな動きをすれば、そのまま刺すぞ」と言わんばかりに。


 ……クソが!


 DEMON。


 それは、二十年以上の歴史を持ち、DARK各地の不良番長たちを束ねた暴走族組織。


 俺の知る限り、DEMONの総構成員数はおよそ2000人。その中心にはDEATH地区の本部があり、さらに、DARKの他の地区にも数十の支部が存在する。


 つまり、DARK最大で最強の暴走族だ。


 そして当然のように、FORCEとは宿敵関係にある。


 ──あの頃、俺たちはDEMONとぶつかり、彼らの本部とも直接衝突したことがある。


 だが今、FORCEはすでに解散している。


 にも関わらず、まだ俺に接触してくるということは……


 あの男か?


 「俺……」

 「いいから黙ってついてこい!」


 口を開いた瞬間、すぐさま言葉を遮られた。


 いや、状況はわからないけど、どう考えても面倒なことになるのは確定だろ。


 ……はぁ、なんで俺ばっかりこうなるんだよ。


 「見崎くん、この人たち、お友達なの?」


 横から中野が、無邪気な声で尋ねてくる。


 「え、えぇ……まぁ、昔の遊び仲間、みたいな?」


 なんとか笑顔を作り、できるだけ自然に答える。


 「ちょっと急用ができたから、先に行っててくれ。」


 できる限り冷静に振る舞いながら言った。


 「はやく片付けなよ!逃げようなんて思わないほうがいいよ!」


 佐々木先生が、チラリとこちらを見る。


 その目は、まるで「もしサボったら、どうなるかわかってるよね?」とでも言わんばかりだった。


 ──いや、俺今、脅されてる側なんですけど!?


 俺の意思じゃなく、本当に強制連行される側なんですけど!?


 ……まぁ、でも、正直俺も行きたくはないんだけどな。


 それに、先生が見てる前でどうやって逃げろってんだよ……


 目の前のDEMONより、この人のほうがよっぽど怖いんだが……


 「先生、俺たちのこと、先生の生徒だって言ったことがありますよね?」

 「もちろん。」

 「……だったら、俺のこと信じてもらえません?」

 「私はただ、ちょっと“忠告”しただけよ。」


 先生は涼しい顔をしているが、その視線は明らかに「逃げるなよ」と言っていた。


 「……ま、いっか。さっさと片付けてきなさい。」


 そう言うと、先生は俺を置いて、残りのメンバーを連れて行ってしまった。


 ……うん、完全に見放された。


 「さぁ、行くぞ。」


 背中に突きつけられたナイフがわずかに押される。


 ……仕方ない。


 まずは、状況を把握するのが先だ。


 無言のまま、DEMONの連中とともに歩き出した。


 ──後のことは、その時考える……



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