14. 突然!文学部から救援前線への予想外な大変身
ドンドンドン~
突然、ドアの前からノックの音が聞こえた。
ちょうど座ってから5分も経っていないのに、その音はすぐに俺たちの注意を引いた。
「入ってください。」
恒川がドアの向こうの人に「入ってください」と言った後、サークルのドアがゆっくりと開き、そこに現れたのは、見たことのない女の子だった。
彼女はまず少し頭を出して、「危険がないか」を確認するように、まるでネズミのように周囲を見渡し、それからゆっくりと体全体を見せてきた。
身長はあまり高くなく、少なくとも俺にとってはかなり小柄に見えたが、実際には普通の身長で、海夏と同じくらいだろうかな。
見た目はかなり可愛らしく、ちょうど中学に入ったばかりのような感じだ。でも、彼女は同じ制服を着ているので、実際の年齢は俺たちとそれほど変わらないだろう。
「あ、あの……ここは文学部の支部ですか?」
彼女は小さな声で尋ねてきた。
この子は一体誰だろう?
俺は視線を中野たちに移したが、彼女たちも同様に困惑した表情を浮かべている。
「はい、文学社の支部ですけど、何かご用ですか?」
中野がその子の質問に答えた後、彼女がここに来た理由を尋ねた。
「あ、あの……佐々木先生が私にここに来るように言ったんです。」
「え?先生が?」
中野がそう答えた後、恒川と俺に疑問の目を向けてきた。まるで「今、どーゆこと?」と言いたげに。
確かに佐々木先生は俺たちの担任だけど、このことに関しては俺も全く知らない!
恒川はどうだろう?いや、見るからに何も知らなさそうだし、どつやら佐々木先生が裏で勝手に何かをしたんだろう。
「うん、そうなんです!」
その頃はすぐに頷いて答えた。それで、俺は彼女に何をしたいのかを尋ねた。
「それで、俺たちに何か用?」
「お願いがあるんです!」
「お願い?」
うーん、どういう状況だ?この子は何か困っていて、誰かに助けを求めているらしいけど、その相手として俺たちを選んだようだ。
しかも、その行動が佐々木先生の指示で来たってことは、佐々木先生が俺たちに頼んで、この子を助けるように言ったってこと?
つまり、佐々木先生がその子に俺たちを紹介して、俺たちに助けてもらえるって教えたってことだよね?
うーん、そんな感じで合ってるよね?
佐々木先生、勝手にやりすぎじゃないの?まるで俺たちをボランティアみたいに扱って、知らない人に手を貸すようにさせようとしているのか。
「すみません、ちょっと聞いてもいい?佐々木先生が私たちに頼んできたの?」
俺と同じ疑問を抱えていた恒川も、思わず佐々木先生のことについて質問し始めた。やっぱりこれ、佐々木先生がやったことだよね?
「はい、そうです。先生が『あいつらなら何でもできるから、きっと手伝ってくれる』って言ったんだから。」
「やっぱりそうなんだ……」
恒川は大きなため息をつきながら、頭をかき、少し困惑している様子だった。
「ねえ、やっぱり佐々木先生ってちょっと勝手すぎるよな?」
俺は恒川に横から言った。
「それは仕方ないよ、先生に助けてもらったんだから。たとえこんなこと頼まれても、恩返しの意味で断るわけにはいかないし。」
「つまり、やらなきゃいけないってことか…」
その時、中野と里滨も俺たちの会話に加わった。
「まあ、とりあえず、どんなお願いか聞いてみよう。」
「そうね、今はそれが一番だね。」
「じゃあ、みんなで頑張ろう!」
「待って、俺これ断ってもいい?なんでこんな意味不明なことに巻き込まれなきゃいけねえんだよ……」
「見崎くん、それもある意味で先生からの任務だし、行かなかったらどうなるかわかってるよね?」
もし普段の俺なら絶対に行かないって言ってただろうけど、相手が佐々木先生だと……
たぶん恒川の言う通り、行かなかったら佐々木先生のあの性格じゃ……考えたくない!怖すぎる!命の危機だ!
「分かったよ、行くよ……」
「じゃあ、みんな異論ないわね?」
「あるって言いたいけど、言っても仕方ないよね……」
「みんな一緒に行くから安心して、一人じゃないよ。」
簡単に話し合った結果、その女の子のお願いを聞くことに決めた。
いや!訂正!
その女の子を手伝わされることになったんだ!
「わたしたちに何を手伝ってほしいの?」
「これ、話すと長いんですけど、一度で言い終わるわけじゃ……」
「ということで、わたしがみんなを引き連れて、この任務を達成させる!」
まだその子が話している途中で、別の声が割り込んできた。
この声、どこかで聞いたことがある……もしや……
佐々木先生!?
サークルのドアが、まるで強い力で押されたかのようにバンと開き、佐々木先生がゆっくりと俺たちの前に姿を現した。その登場の仕方には、まさに王者の気配が漂っている。
これが佐々木先生、王者のようなオーラを持つ女性、歩くだけで周りを圧倒する。
「この子をわたしたちに頼んできたのは、やっぱり先生ですか?」
恒川が聞くと、先生は軽く頷いて答えた。
「うん、わたしが呼んだ。」
「それで、なんで俺たちなんです?」
「この件に関して、お前たちしか解決できないから。」
そう言いながら、佐々木先生は手を差し出して、俺たちを指さした——いや、正確には、里滨を指さしている!
「……なんで『お前たち』って言ったのに、指差しているのは里滨さん?」
「うーん、まあ、そういう細かいことは気にしないで。とにかく、わたしの妹のことだから、お前たちに頼むしかないのよ。」
「妹?彼女が先生の妹?」
思わず目を見開き、驚きのあまり、先生とその子を交互に見比べた。よく見ると、この二人、確かにちょっと似てるようだ……
「え?先生の妹?」
「信じらんない……」
中野と恒川の反応は、ほぼ俺と同じで、二人とも驚きの表情を浮かべている。
「先生にちょっと似てるね!特にこの頬、先生と同じように赤い~」
里滨、このヤツ……失礼すぎるだろ? これ、佐々木先生の妹だぞ? そんな無礼なこと言って、命知らずか?
「まあ、いいわ。今はそれよりも本題に入るわよ!」
なんでこれで許されるの? もしこれが俺だったら、佐々木先生のような岩のように重いパンチが肩にドーンと来るんじゃないか?
もしかして、俺は被害妄想が強すぎるのか?
「うむ、じゃ、先生と先生の妹から、状況を説明してもらいましょう。」
恒川が真剣な顔で答え、そして自分の席に戻った。
「うん、由希、お前からみんなに説明してあげなさい。」
「わかりました。じゃ、まず簡単に自己紹介をさせていただきます。わたしは佐々木由希、綾野姉さんの妹です。今年、この学校に入学したばかりですので、今後とも先輩たち、どうぞよろしくお願いします。」
うん、この子、佐々木先生とは全然性格が違うな。礼儀正しくて、ちょっと恥ずかしがり屋の女の子みたいだ。
「実は、私の両親はこれまでずっと喫茶店を経営してきました、それがうちの家計の主な収入源でした。でも、あることをきっかけに、その詳細は省略しますが、喫茶店は父が一人で切り盛りすることになりました。それでも、近所の店のオーナーたちからはよく助けてもらっていました。でも、ここ数年、悪い人たちがうちの喫茶店にやってきては妨害をしていくせいで、最近は商売がうまくいかなくなってきて、今ではほとんどお客さんも来なくなってしまいました。だから、先輩たちにお願いがあるんです、あの嫌な人たちを追い払えますか……」
「それで、このことを佐々木先生に相談して、先生が私たちに頼んだというわけか?」
「はい。」
「それで、先生がさっき言った通り、この問題をどう解決するつもりですか?わたしたちに具体的な計画はありますか?」
佐々木の話を聞き終わると、恒川がすぐに佐々木先生に質問を投げかけた。
うーん、このこと、佐々木先生がリードするって言ってるんだから、少しはサボってもいいかな?
そう思ったけど、ちょっと待てよ! なんで俺たちがこの問題を手伝わなきゃいけないんだ?
そもそも、あの噂を鎮めるためにこんなサークルに入れられて、すでに十分惨めなのに、さらにこんな問題に巻き込まれるなんて……
「いい質問だ!それじゃ、わたしの計画を説明しよう。」
佐々木先生はそう言うと、遠慮なく俺の席に座り、細長い美しい足を組んだ。まさに「隣のお姉さん」って感じ!
うーん……あれ、俺の席なんだけど……
外見的には、彼女もかなりの美女と言えなくもないが、性格や行動はどうもその外見に合わないように思える。
それが理由で彼女がずっと独身なのも納得できる。でも、その脚……うん、正直、視線が離せない。
年齢だけを見ると、彼女は俺たちとそんなに変わらないはずだ。
だって佐々木由希は佐々木先生の妹で、今年この学校に入ったばかりだから、俺たちよりも1、2歳くらい若いってことになる。
外見的には、佐々木先生もまだ若くて、20代前半くらいだと思う。こう考えると、俺たちと同じくらいの年齢ってことになるかな?
いやいや!何考えてんだよ!?完全に本題から逸れちゃった!
「それで、先生が考えている方法は何なんですか?」
「簡単だよ。これから数日間、お前たちに店を手伝ってもらって、もしあの連中が来たら、里浜、お前に任せるよ!」
「え?彩奈ちゃん?」
「先生、それはどういう意味ですか?」
中野と恒川は驚きと疑問で顔がいっぱいだ。当然、俺も先生の意図が全くわからない。
「それは言うまでもないじゃない!明らかに、それは武力で制圧するしかないよ!」
なんて堂々とした言い方だ!いや、ちょっと待って、それは言葉の使い方が違う……
待てよ!武力で制圧って、つまり……
「わかった!もし喫茶店が壊されてるのが確認されたら、束縛を解いて武力で制圧するんですね!」
「その通り!」
佐々木先生は思わず里浜に親指を立てて褒めた。
ちょ、ちょっと待った!教師として、学生の手本となるべき立場なのに、暴力を使えって生徒に教唆してるのか!?
「先生、あなたが教師として、暴力に反対するべきじゃないんですか?」
俺がそう言うと、佐々木先生はためらいなく手を伸ばして、まるで「私はそんな意図じゃないんだよ」と言っているかのようにジェスチャーをした。
もしかして、俺、先生を勘違いしていたのか?
「さっきのは簡単な説明をしただけよ。もちろん、生徒に暴力を振るうことを教えないよ。武力は最後の手段だからね。まずは話し合いで解決することが一番、解決できなければ、里浜が直接武力を使うことになるけど、つまりこれは最終手段だから!」
佐々木先生にもこんな中二的な一面があるんだな、まるで漫画の主人公が反派に追い詰められた後、最後の奥義で相手を瞬殺するかのような展開じゃないか……
「それは分かるけど…」
言いかけたところで、佐々木先生が俺の言葉を完全に遮って、まるで俺が話していることに気づいていないかのように。
「とにかく、これで決まりだ!明日から放課後、みんなでカフェを手伝いに行くことになったんだよ。」
なんで俺はこんな風に、理由もわからず先生に無理やりこんなことをさせられているんだろう……