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【第一部完結】転生ママはメイドになって、今度こそ愛する家族を幸せにします、全力で!   作者: まえばる蒔乃@受賞感謝
第四章・ようこそ前世の実家、アンドヴァリ公爵家へ

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45・宮廷魔術局訪問

 ――宮廷魔術局訪問、当日。

 私はアンドヴァリ公爵家にあったお散歩カートに、双子とユーグカを入れて押している。

 三人とも魔術から身を守るケープを被っていて、てるてる坊主みたいで可愛い。

 お散歩カートには『入局許可』の張り紙を四方に貼っている。

 本来なら不可能な措置でも、宮廷魔術局長のギルバートの許可が下りているなら、誰も文句は言わない。一緒にシュヴァルツもいるし。

 本来ならもっと小さい子向けなのだろうけど、アンドヴァリ公爵邸のカートは特別製なので頑丈だし、何かあったときは防御結界が生じるようにできている特別製だ。


(懐かしいわね。私もお兄様にカートに突っ込まれて、宮廷魔術局の見学に連れて行かれていたから)


「えへへ、りーねーとぱぱといっしょ! うれしいな!」


 ぴょんぴょん。はしゃぐユーグカに、口元に指を当ててたしなめるシュヴァルツ。


「ほら、ぴょんぴょん飛ぶのはあぶないぞ。しーっ、な?」

「しー」

「ん。よくできました」


 シュヴァルツとユーグカの仲良しっぷりを、双子がうらやましそうに見ている。

 私は険しい顔のままのギルバートに声をかけた。


「公爵、公爵」

「なんだ」

「お二人もずっと喜んでましたよ、公爵の職場を見に行けるって」

「ふん、遊びのつもりで来られては……」


 続きを言われないうちに、私は袖をちょっと引っ張り、背伸びして耳打ちする。


「お父様のかっこいいところをご覧になりたいそうです」

「は?」

「お二人の憧れなんですよ、公爵は」

「………………」


 口をつぐみ、黙って子供達を見下ろすギルバート。

 シグルドとノヴァローラはじーっとギルバートを見上げている。


「…………興味を持つのはいいことだ。その…………感心だ」

「かんしん……?」

「……………………えらいぞ」

「……!!!」


 空いた右手で、ギルバートは二人の頭を順番に撫でる。

 ぎこちない撫で方だったけれど、ぱああ……! と二人の顔が勢いよく輝いた。


「っ……! 俺は行く。あとは好きにしろ、邪魔するんじゃないぞ」


 顔をぱっと背け、カッカッと杖を鳴らして大股で歩き去るギルバート。


「お父さま、耳まっかっかだったね」

「怒ってるのかな」

「ゆーぐかね、おこってないとおもうの。ねえぱぱ」


 私とシュヴァルツは顔を見あわせて、そろってにっこりと頷いた。


◇◇◇


 宮廷魔術局は建国以来ずっと使われてきた場所で、幾棟にも分かれた城のような造りになっている。

 今回は見学用に使われる回廊を通る予定だ。回廊は階段を使わないかわりに、ずっと緩やかなスロープが続いている。

 シュヴァルツが私を気遣う。

 

「かなり歩き回るが、カートは大丈夫か?」

「はい!『大自在の魔女』の力を使ってますので、私は手を添えてるだけです」

「よかった。では順路に従って案内しようか」


 私にとっても10年ぶりの宮廷魔術局は、ずいぶんと雰囲気が変わっていた。

 当時は見学用の回廊なんてなかったし、激しい魔物の襲撃を受けていた時期だったので、全体的に殺伐としてぴりぴりとしたムードが漂っていた。

 けれど今は中は清潔で、平和になったからか、事務職の魔術師も増えているように感じる。

 血染めのローブを着ている人ともすれ違わないし、魔物の生臭い匂いもしない。


 ぴょこ。

 ユーグカはちょっと人見知りを発動しつつも、きらきらと目を輝かせてカートの中から顔を出す。


「すごいねえ……ひとがいっぱいいるねえ……けんきゅじょ、おっきいねえ」


 小柄なので目だけひょこっと出した感じはとてもかわいい。

 そんなユーグカに、ノヴァローラがお姉さんっぽくあれこれと知っているものを説明する。


「けんきゅーじょじゃないのよ、きゅうていまじゅつきょくよ。王国のまじゅつしのなかでも、いちばんあたまがよくて、えらいひとたちがあつまってるの」

「いちばんえらいひと? ゆーぐかのぱぱもすごいよ。ねえぱぱ?」

「私は宮廷魔術局――ここからお仕事をもらって、ユーグカと一緒にお城に住んでいるんだ。研究所のみんなも、この宮廷魔術局の一員なんだよ」

「へー!」


 シグルドが興味深げな眼差しでシュヴァルツに尋ねる。


「リヒトフェルト魔術伯は、どんな研究をしているんですか?」

「魔物を浄化する研究をしているよ。普通の方法では倒せない魔物を、綺麗さっぱり消し去るためのポーションを作ったりしているんだ」

「すごい……!」


 シュヴァルツの説明に、わあっと盛り上がるノヴァローラとシグルド。

 その隣で、ユーグカがあちこちで働く魔術師たちを目で追いながら呟いた。


「ままも、ここにいたのかなあ……」

「いたよ。ママはとても颯爽としてよく目立っていた」


 シュヴァルツがユーグカの頭をぽんと優しく撫でた。


◇◇◇


 建物の見学ルートを終え、中庭に出た頃。

 子供達は見学記念のきらきらのスライムを手に取って遊んでいた。

 シグルドがはっとして手を止めて、私を見上げる。


「リリーベル止まって、あれはお父さまじゃ……!」

「えっ」


 シグルドが指さす先、中庭には確かにギルバートが立っていた。


(実践演習だわ)


 周りの各棟から見える中庭は各方面からデータが取りやすく、以前から新魔術の実践や訓練に使われていた。

 ギルバートの目の前では、模擬戦のために魔術で生み出された幻影魔物が次々と出され、各魔術師達が各個、様々な方法で魔物を退治している。


「下がれ」


 ギルバートの一言で、魔術師達は下がる。幻影魔物の姿が一旦消える。

 そしてギルバートが中庭の中心に一人立った。

 宮廷魔術局長の兄自身が現場に実践に立つなど珍しい。

 あの足と目なので、普段は魔力を無駄打ちしないのだ。


(もしかして、子供達が来るからかっこいいところ見せようとしてる?)


 兄に限ってまさか。

 そう思ったけれど、10年の年月で兄も変わったところがあるかもしれない。


 いくつかの会話をしたのち、魔術師達がギルバートに向けて小瓶の蓋を開く。

 ふわっと広がったのは、人の二倍くらいの大きさの影。


「シャドウドラゴン……!」


 小型の竜の姿をした影は、十年前の魔物騒乱期に国を恐怖に陥れたドラゴンそのもの。

 一頭だけでも魔術師数人がかりで倒していたものが、次々と三体、同時に出現する!

 強さは当然、本物のシャドウドラゴンそのまま。そうでなければ演習の意味がない。

 それが一気に兄に襲いかかる!


「お父さま! あぶない……!」


 シュヴァルツが子供達の肩を抱き寄せる。


「大丈夫だ、見てなさい」


 次の瞬間。

 ギルバートは一ミリも動かないのに、魔物が次々とはじけ、霧になって霧散する。


「どういうこと……?」


 子供達が呆然とする。私が説明した。


「右目のモノクルが、空間魔術を集約させる魔道具なんです」


 実はギルバートも四大元素以外の特殊能力を持つ。

 前線で戦わない上に、『大自在の魔女』の力の影で目立たないが、あの魔力空間を作る空間魔術だ。

 ギルバートのモノクルから繰り出される視線の光線は、その空間魔術を利用したもの。


「ええと……虫眼鏡で太陽の光を集めたら物を焼いたりできるんですが、そんな感じで、アンドヴァリ公爵の体の中にいっぱい魔力を、空間魔術でぎゅーっと縮めて、そして右目から出して、虫めがねがわりのモノクルでぎゅーっと集めて、魔物を見つめることで狙いを定めて、バキューン! ってしてるんです」


 ただ棒立ちになっているように見えるが、ギルバートは敵の形状と弱点を一気に把握し、順番に視線で射貫いている。体を動かして俊敏に敵と戦わないぶん、彼の一瞬の洞察力と判断力、そして視線の光線の精度はすごいのだ。

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   \愚か者の婚約破棄/
  短編コミカライズです
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最高にざまあな問題作をコミカライズしていただきました!
ぜひご堪能ください!!!

杠葉こゆき先生のコミカライズ作品
まえばる蒔乃2024年刊行作一覧

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漫画:永野ユウ
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ISBN-10:4046842598

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― 新着の感想 ―
どうしてそこまで知ってるんだ、って突っ込まれないかしら
後で目からビームが出るって言われないといいね…w
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