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【第一部完結】転生ママはメイドになって、今度こそ愛する家族を幸せにします、全力で!   作者: まえばる蒔乃@受賞感謝
第三章・お見合い大好き義姉様の襲来

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32/55

32・宮廷魔術局長ギルバート・アンドヴァリ

「えっ!? 妹ってレイラさん? レイラさんと彼女、何か関係があるの? 能力って? もしかしてリリーベルちゃんもユーグカちゃんと同じ『大自在のママ』なの」

「魔女だ」

「ああそうね、『大自在の魔女』ね! まあ、なんて才能があるの! すごいわ! レイラさんはとっても凄ぉい魔術師だったのよ! リリーベルちゃんは知ってる?」

「少しは黙っていろアンナアンナ」


 シュヴァルツが私とギルバートの間に入る。


「アンドヴァリ公爵。彼女が手紙に書いておりました『大自在の魔女』の能力者、リリーベルです」

「ああ。連絡を受けてからざっくりとは調べた。シブレット男爵家の娘だそうだな」


 水を向けられたので、私は前世の兄に向かい正式なお辞儀をする。


「お初にお目にかかります、アンドヴァリ公爵。リリーベル・シブレットです」

「……私はギルバート・アンドヴァリ。お前の主、シュヴァルツ・リヒトフェルト魔術伯の義兄だ」


 低くざらついた声が、懐かしく鼓膜に響く。モノクルと険しい眼差しと、悪くした左足を庇うように杖を突いている姿は10年前と変わらない。王族にも匹敵する権威を誇る宮廷魔術局の最高責任者であり、『大自在の魔女』レイラ・アンドヴァリの兄。確か今年32歳だ。

 顔が怖い。靡く銀髪も、白銀の服も、全部迫力がある。怖い。


 私が前世レイラなリリーベルじゃなかったら、ひとにらみだけで気絶しているほどの圧だ。

 ユーグカはずっと私の後ろに隠れている。

 普段は割と物怖じしないユーグカでも怖いらしい。


「んもう、怖がらせちゃだめよお」


 アンナアンナはそんな彼の隣で頬を膨らませてぷりぷりしてる。


(ある意味この人、一番怖いな)


「アンナアンナ。シブレットの家名、お前は聞き覚えがあるか」

「ええっ!? そんないきなり言われても……そうねえ」


 そう言いながらも、アンナアンナは顎に手を添え、饒舌に続ける。


「確か王国東部領の穀倉地帯にそんな領主がいた気がするわ。魔術師系統の貴族の集まりで、耳にしたように思うの。けれど最近はサロンでも名前を聞かないし、令嬢は生まれていないと思っていたのだけど……」

「す、すごいですね」

「お見合いのためには、情報は常に仕入れないとね」


 アンナアンナはウインクした。


「魔術師系統の家柄の女子は、普通の社交界デビュー前にお友達を作るの。魔術師の家柄同士で結婚相手を選ぶことが多いからね、私とギルバートみたいに♡」

「知りませんでした……」


 レイラ時代は覚えきれないほどに社交の場に出ていたので、もはやその記憶もない。

 ギルバートは改めて私を睨み降ろした。

 

「リリーベル・シブレット。話をしたい。シュヴァルツと一緒に来い」

「ねえねえ、私は?」

「お前は呼んでいない。話が混乱する」

「えー」


 ぶーぶーと唇を尖らせるアンナアンナ。


「シュヴァルツ、ユーグカはイスカリエに任せろ。いいな?」

「承知いたしました」


 シュヴァルツも緊張の面持ちだ。


「りーねー」


 ユーグカが心配そうに私を見る。私はぎゅっと抱きしめた。


「大丈夫ですよ。ちゃんと大人のお話、がんばってきますね。それに」


 私はユーグカの耳元に、彼女にだけ聞こえる声でそっと耳打ちする。


「私知ってるんです。アンドヴァリ公爵は本当はすっごく優しいんです」


 顔を離すと、ユーグカはきょとんと首をかしげる。

 その大きな瞳に私は胸があったかくなる。

 この子が心配をしてくれるのがとっても嬉しい。可愛い。大丈夫、ママは離れないからね。


 頃合いを見計らって、ギルバートは杖でトンと地面を突く。

 紫と赤と黒がぐるぐるに混ざったような、不思議な仮想空間に飛ばされる――兄の得意魔術だ。



「仮想空間に驚かないのか、シブレット男爵令嬢」



 ――ギルバートの低い声が聞こえる。

 ――殺気!


 ザッと光が輝き、体がふわっと浮く。

 シュヴァルツが抱き上げて飛び退いてくれたのだと気付く。


「義兄上!」


 私が立っていた場所が切りつけられた余韻で光っている。

 ギルバートが持つ杖が光っている。仮想空間の中では、兄は足の不自由が治るのだ。

 

「離れろシュヴァルツ。それがあれと同じ力かどうか試さなければ」

「しかし彼女はただのメイド、しかもまだ9歳です!」

「だが『大自在の魔女』だ」


 兄は低く反論する。


「知っているだろう。レイラ・アンドヴァリは9歳で、すでに魔物を『大自在の魔女』の能力で屠っていた。離れろ、シュヴァルツ」

「しかし!」

「怪我をしてもセージ・パルスレーがいる。四肢欠損くらいならば無傷に戻せる」

「……っ義兄上!!!」


 シュヴァルツは(リリーベル)を必死で守ろうと腕に抱いている。

 その必死な形相を見上げ、力強い腕の感触と触れる体の熱を感じ、私は不思議な気持ちになった。


(……大きくなったわね、シュヴァルツ)


 緊迫した状況でありながら、私はレイラ時代、彼が身長を追い抜いた日を思い出していた。

 シュヴァルツは年下かつ劣悪な環境下で育ってきたこともあり、15歳頃まではどちらかというと、細くて小柄な少年だった。反対にレイラはアンドヴァリ公爵家の長身を受け継ぎ、普通の令嬢より随分と背が高かった。ハイヒールだって履いていたから、成人男性と目の高さが変わらなかったのだ。

 けれどシュヴァルツは声変わりと共に、急に背が伸び始めた。

 特訓の時、剣で打ち込んでくる力がぐっと強くなった。手の大きさが一回り以上大きくなって、掠れた声で「レイラ」と呼ばれるのが、なんだか胸により一層迫ってくるようになった。

 彼の目の高さが私を少し見下ろしていると気付いたとき――私は理屈を超えて感じたのだ。

 女として恋をしている自分を。愛する男の成長が、たまらなく嬉しいと感じる感情を。


 懐かしさに浸りながら思う。

 シュヴァルツは今、真剣にメイドの少女を庇っている。その頼もしい腕が愛おしい。

 すでに恋愛感情はないけれど。元レイラとして、シュヴァルツの成長が嬉しかった。

 

「旦那様、私は大丈夫です」

「リリーベル、」

「ギルバート・アンドヴァリ公爵は私が向きあわなければ、ご納得されないと思います」

「だが」

「大丈夫です。私、旦那様とユーグカお嬢様の傍にいるためなら、諦めません」


 にっこりと笑って、私はギルバートに近づく。


「……貴様は、本当にただのメイドの小娘か?」

「アンドヴァリ公爵に嘘は申し上げられません」

「レイラでは、ないだろうな?」

「違います」


 私はきっぱり告げた。


「リリーベル・シブレット。オールワークスメイド兼、ユーグカお嬢様の家庭教師です」


 シュヴァルツが魔力障壁に覆われ閉じ込められる。ギルバートは杖を振り上げた!


「リリーベル!」



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╭━━━━━━━━━━━━━╮
   \愚か者の婚約破棄/
  短編コミカライズです
╰━━━━━━v━━━━━━╯
こんな愛らしい絵柄の 杠葉こゆき先生に
最高にざまあな問題作をコミカライズしていただきました!
ぜひご堪能ください!!!

杠葉こゆき先生のコミカライズ作品
まえばる蒔乃2024年刊行作一覧

୨୧┈┈┈┈┈┈ 12月5日発売 ┈┈┈┈┈┈୨୧
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レーベル:集英社
ISBN-10:4086320347

୨୧┈┈┈┈┈┈ 12月6日発売 ┈┈┈┈┈┈୨୧
『身に覚えのない溺愛ですが、そこまで愛されたら仕方ない。忘却の乙女は神様に永遠に愛されるようです』
レーベル:PASH!ブックス
ISBN-10:978-4-391-16402-2

୨୧┈┈┈┈┈┈ 12月10日発売 ┈┈┈┈┈┈୨୧
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レーベル:モンスターコミックスf(双葉社)
ISBN-10:4575419737
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୨୧┈┈┈┈┈┈ 12月17日発売 ┈┈┈┈┈┈୨୧
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漫画:久我山ぼん
レーベル:フロースコミック(KADOKAWA)
ISBN-10:9784046842879
詳細:短編コミック『寝物語で暗殺回避を続けていたら、危険な溺愛が始まりました』原作担当

『捨てられ花嫁の再婚 氷の辺境伯は最愛を誓う』
漫画:永野ユウ
レーベル:フロースコミック(KADOKAWA)
ISBN-10:4046842598

୨୧┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈୨୧
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