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【第一部完結】転生ママはメイドになって、今度こそ愛する家族を幸せにします、全力で!   作者: まえばる蒔乃@受賞感謝
第一章・メイド少女は最強魔女ママ

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3・病んだ夫と、産んだ覚えのない娘

 シュヴァルツの顔色があまりに悪い。肌も土気色で、声に力がまるでない。

 瞳だけがギラギラと意識を保つために無理をしているように見える。

 

「リリーベル嬢、まずは話を聞こう。こちらに来なさい」

「は、はい」


 イスカリエさんはすでにいなかった。

 私はシュヴァルツを案じつつ、彼の後ろについて応接間へと向かう。

 その時。


「っ……!」


 シュヴァルツの足がわずかにもつれ、とっさに壁に手をつく。


「旦那様!」


 私は体を支えた。

 触れて、信じられないほど魔力が減っているのにぞっとする。

 

「あ、あの……面接は日を改めても」

「いや。これでも体調がいいほうなんだ。目を覚ましているうちに、君と話したい」


 よろよろとするシュヴァルツに付き添いながら、ようやく応接間に入る。

 

 ――視線を上げたところで、私は悲鳴を上げそうになった。


 10年前と同じ作りの応接間。

 以前には無かったものが、壁一面を埋め尽くしている。

 長い銀髪を靡かせ、湖畔で微笑む花嫁の肖像画。


 ――いや、遺影。


「………だ、旦那様、あの……これは……」

「ふふ」


 うっとりとした顔で、シュヴァルツは微笑む。

 体調の悪さも含めて、狂気すら感じる微笑みだった。


「綺麗だろう。彼女が私の妻、レイラ・アンドヴァリだ」

「お、お……お綺麗ですね……」


 うっとりと微笑むシュヴァルツはぞくっとするほど美男子だ。けれど目が死んでいる。


「この絵を見て悲鳴を上げて逃げていく者も多いからな。嬉しいよ」

「は、はあ……」


 逃げる人の気持ち、分かる。

 ともあれ私たちはソファーセットに腰を下ろし、イスカリエさんがお茶を淹れてくれたところで、面接が始まった。

 シュヴァルツは姿勢を正した。


「改めて自己紹介しよう。私はシュヴァルツ・リヒトフェルト。主に使う爵位は魔術伯。爵位を得た時にこの城を王国から譲り受けて、湖の調査と管理を行っている」

「リリーベルと申します。こちら履歴書です」


 その後、彼から口頭で提示された条件は求人情報とほぼ同じ内容だった。


「すぐに追加雇用の手配をするが、しばらくは多くの仕事を受け持つオールワークスメイドとして働いて貰うことになる。断ってもかまわないが、どうだろうか」

「まったく問題ありません! 腕力と体力には自信があります」

「さっそく先ほど『幽霊古城』の騒ぎが起きていたが、それでも平気かい?」

「あれはお嬢様の魔力暴走ですよね」


 シュヴァルツは驚いた顔をした。


「よく気付いたな。君は魔術の心得が?」

「そ、その……そのことなんですが、実は私も」


 その時。

 部屋の扉が開く。


「ぱぱ……そこにいるの……?」


「噂をすれば来てくれたな」


 シュヴァルツが柔らかい声で言う。

 出入り口に、犬のぬいぐるみを抱っこした、真っ白なドレスを着た女児が立っていた。

 ふわふわの銀髪に青い瞳の彼女は、私を見て、うっと嫌そうな顔をする。


「……そのひと……」


 私は絶句した。

 だって、明らかに。彼女は前世の私ーーレイラ・アンドヴァリとうり二つなのだ。

 シュヴァルツが柔らかな声で手を差し伸べる。


「ユーグカ、こちらに来なさい。リリーベル嬢にご挨拶を」


 私は立ち上がり、頭を下げる。


「初めまして、リリーベルと申します。よろしくお願いします、ユーグカお嬢様」

「……」


 返事はない。


 ユーグカは警戒心剥き出しのまま、てててとシュヴァルツに近寄り、ぎゅうっと抱きつく。


「こら、挨拶を返しなさい、ユーグカ」

「やー」

「ママのようなレディになりたいのだろう?」

「……ぁい」


 渋々といった風に頷くと、ぺこり。小さく、ちょっとだけ頭を下げる。

 警戒心丸出しだ。

 彼女の警戒心に呼応するように、食器がかたかたと揺れて音を立てる。

 すでに『魔力暴走』が始まっていた。部屋のものが暴れては大変だ。


「あ、あのよろしいですよ。無理になさらなくても」


「すまないな」


 シュヴァルツは眉を下げると、ユーグカをソファーの隣に座らせ肩をすくめる。


「初対面の人間、特に女性に警戒心を剥き出しにするんだ。色々あってね」

「色々……」

「しつこい再婚の斡旋やら、押しかけてくるご令嬢やら、女性使用人も問題を起こしてきた。私がこの体調だから、娘も嫌な目に何度も遭ってしまい、このざまだ。父として反省している」

「ご体調が悪いのですから、仕方ないですよ」


 威嚇する猫のように、私を睨んでいる意味が理解できた。

 こんなに小さいのに、お父様と城を守らなければと、肩肘張っているのだ。


「お嬢様、大丈夫ですよ。お父様を取っちゃったりしません」

「やー」


 父にくっついて、ユーグカはいやいやする。

 その様子は幼い頃のシュヴァルツにちょっと似てて、きゅんとする。

 か、かわいい。


「こらこら」

「いえいえ、構いません。お嬢様が人なつっこすぎるのも不安ですし。メイドの私にも挨拶していただきましたし、嬉しいです」

「そうか。よかったなユーグカ」

「うー」


 犬のぬいぐるみをだきしめ、彼女はまだまだ警戒しているようだ。

 ほっぺはふくふくで、しかめつらすら可愛らしい。

 顔の作りはレイラだけど、眉間の皺の寄せ方がシュヴァルツそっくりだ。

 かわいさに飲み込まれそうになりつつ、私ははっとする。


「旦那様。もしかしてレイラ奥様の遺……肖像画も、虫除けのようなものですか?」

「ああ。私がレイラを忘れていない事を知れば、諦めてくれる者も多いからな。あとは趣味だ」

「しゅ、しゅみ」

「寂しいだろう、妻の顔を見られない日々は」

「は、はあ」

「それにユーグカにも母の顔を毎日見て貰いたいからな。他にもあちこち、レイラの肖像画を置いているよ」

「さ、さようでございましたか……」


 なるほど、狂気の屋敷だ。

 メイドが逃げるのも頷ける。


「ところで旦那様、ユーグカ様は、その……すごく似ていらっしゃいますね、レイラ奥様に」

「当然だ。レイラと私の間の愛娘だからな」


 にっこり。

 隈がくっきりの超美形の魔術師は、怖いくらいとろける笑顔を浮かべる。

 産んだ覚えがない。そもそも5年前は、死んでいる。


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╭━━━━━━━━━━━━━╮
   \愚か者の婚約破棄/
  短編コミカライズです
╰━━━━━━v━━━━━━╯
こんな愛らしい絵柄の 杠葉こゆき先生に
最高にざまあな問題作をコミカライズしていただきました!
ぜひご堪能ください!!!

杠葉こゆき先生のコミカライズ作品
まえばる蒔乃2024年刊行作一覧

୨୧┈┈┈┈┈┈ 12月5日発売 ┈┈┈┈┈┈୨୧
『逆追放された継母のその後 ~白雪姫に追い出されましたが、おっきな精霊と王子様、おいしい暮らしは賑やかです!~in森』
レーベル:集英社
ISBN-10:4086320347

୨୧┈┈┈┈┈┈ 12月6日発売 ┈┈┈┈┈┈୨୧
『身に覚えのない溺愛ですが、そこまで愛されたら仕方ない。忘却の乙女は神様に永遠に愛されるようです』
レーベル:PASH!ブックス
ISBN-10:978-4-391-16402-2

୨୧┈┈┈┈┈┈ 12月10日発売 ┈┈┈┈┈┈୨୧
『ハリボテ聖女は幼女になり、愛の重い神様と追放ライフを満喫する』①
漫画:恭屋鮎美
レーベル:モンスターコミックスf(双葉社)
ISBN-10:4575419737
連載:がうがうモンスター

୨୧┈┈┈┈┈┈ 12月17日発売 ┈┈┈┈┈┈୨୧
『異世界で○○からの執着愛が止まらない!?アンソロジーコミック』
漫画:久我山ぼん
レーベル:フロースコミック(KADOKAWA)
ISBN-10:9784046842879
詳細:短編コミック『寝物語で暗殺回避を続けていたら、危険な溺愛が始まりました』原作担当

『捨てられ花嫁の再婚 氷の辺境伯は最愛を誓う』
漫画:永野ユウ
レーベル:フロースコミック(KADOKAWA)
ISBN-10:4046842598

୨୧┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈୨୧
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