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【書籍化・5月9日発売】転生ママはメイドになって、今度こそ愛する家族を幸せにします、全力で!   作者: まえばる蒔乃
第三章・お見合い大好き義姉様の襲来

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29・裏庭世界ピクニック

「嬉しいわ! メイドの少女にまで私の信念が伝わっているなんて、会長冥利に尽きるわ! そうよ、良い家庭を作るにはまず、女が健康に美しくならなくちゃ。もちろん体がこわばった殿方にもおすすめだわ、是非おしえさせてちょうだい、さっ、簡単なものから始めるわよ」


 彼女はいそいそとマットの上に座り、あぐらの姿勢を取る。


「まずは胸を開くの、目を閉じて、胸いっぱいに静かに、息を……」


 その隙をシュヴァルツは見逃さなかった。

 唇を震わせる程度の詠唱で、彼は催眠魔法をかける(催眠魔法は水魔法の一部だ)。

 血流を操作され、体が強制的にリラックスし、アンナアンナの体が揺れて……。


 ふかっ。


 私はマットに枕を挟み込み、彼女の頭を保護する。


「こーしゃふじ、ねちゃったの?」

「ああ~、リラックス効果が高くて、お疲れなので、つい寝てしまわれましたね~(棒)」


 布団をかけて、彼女をぽんぽんと叩く。アンナアンナは心地よさそうに熟睡した。

 シュヴァルツが白々しく言う。


「しかたないな、ご夫人に触れるわけにもいかないので、ここで寝て貰おうか(棒)」

「でしたら私が一応の見張り役として、一緒に寝ますね(棒)」

「名案だ、すまないが頼めるか(棒)」


 きょろきょろと私たちの顔を見ていたユーグカの表情が、ぱっと輝く。


「りーねー、いっしょにねていいの?」

「はい、一緒に寝ましょう」

「わーい!」

 

 アンナアンナを気遣って小声でばんざいしたユーグカは、私の手を引っ張って、ベッドに潜り込ませてぎゅーっと抱きしめた。


「えへへ。りーねー」


 私とシュヴァルツに挟まれる形で嬉しそうにするユーグカは、今日一番無邪気な顔をしていた。

 シュヴァルツが後ろからユーグカの頭を撫でる。


「さあ寝ようか。また明日会おう」

「うん、またあした、あそぼーね」


 指切りをして、ユーグカは幸せそうな顔をして眠りに就いた。

 眠ったユーグカを見つめるシュヴァルツは、ユーグカを通して何か別のことを考えているようだった。

 私はなぜか、ずっと聞きたくて聞けなかった言葉が出てきた。


「……そんなに、レイラ奥様の事が好きだったんですか?」

「ああ。愛している。今も」


 私の中のレイラの部分が、かすかにどきっと胸を高鳴らせる。

 落ち着いた声音で、大人の体格で、優しく娘を見つめながら愛を語るシュヴァルツ。

 他の誰も入り込めない、強い質量の愛が滲んでいた。


「レイラがいなくなったとき、()は全てを壊しそうになった」


「レイラが僕の全てだった。レイラのいない世界なんていらなかった。……勝手だと思ったよ。レイラは僕に幸せを教えて、僕がレイラなしで生きられないようにしてから、綺麗な笑顔で散っていった」


 今まで聞かされなかった、父親の顔でもなければ、シュヴァルツ・リヒトフェルト魔術伯でもない、素顔のシュヴァルツの吐露だった。


 何も言えずにいると、シュヴァルツはふっと微笑んだ。

 大人としての仮面を付け直した、穏やかな微笑みだった。


「だがレイラが世界を守らなければ、君は生まれていなかった。ミントローズも、他の子供達も、みんな、レイラが守った世界で生まれた、全てはレイラの遺してくれた愛なんだ。レイラの愛が生き続ける世界を、よりよいものにしていくのが夫としての、仕事のパートナーとしての役目と思っている」

「シュヴァルツ様……」

「そう思えるようになったのは、ユーグカが生まれてくれたからだけどね」


 柔らかく、本当に愛おしそうに、シュヴァルツはユーグカを撫でた。


「ユーグカは僕の宝だ。……だから、ユーグカを……守ってくれて、ありがとう」


 シュヴァルツはそういいながら、そっと目を閉じて眠ってしまった。

 私はしばらく、同じ寝顔をするユーグカとシュヴァルツを見つめた。


(ええ、愛しているわ。二人をちゃんと、一生幸せにするから)


 ――翌朝。

 

「あらあらやだやだ、私ってばこんなところで寝ちゃったの!? 恥ずかしいわ~!」

「いえいえ、それだけストレッチが効果的なんだなと感じました! ありがとうございます」

「うふふ、また一緒にストレッチしましょうね」


 シュヴァルツが寝ているうちにと言わんばかりに、アンナアンナは部屋を出て行く。

 足音が去ってから、シュヴァルツがばっと身を起こした。

 

「なんとかなったな」


 私たちはねむねむのユーグカを囲んで、ぱちんとハイタッチした。


◇◇◇


 アンナアンナはイスカリエさんと共に、城のあちこちを見学して回っている。

 今は退屈してないけど、退屈したらまた猛攻が始まるだろう。

 やっと回復してきたシュヴァルツに心労はかけたくないし、ユーグカも心配そうだ。

 仕事に支障が出たら大変だ。なにより、アンナアンナが夫ギルバートに叱られたらちょっと可哀想だ。


 というわけで私は目標を「ギルバートが迎えに来るまで、穏便に日々を乗り切る!」に定めた。

 日々を穏便に楽しんで貰うために、工夫をしなければ。


「あら、いい香りね」

「こーしゃふじ!」


 キッチンでお茶を淹れていると、屋敷を一通り見たアンナアンナがやってきた。

 キッチンでどんぐりを並べて遊んでいたユーグカが、ぱっと顔を上げる。


「それは……試飲サイズの紅茶?」

「はい。魔力糖ができあがりましたので、どの紅茶と合うか試飲の準備をしておりました」

「まあ! 綺麗だわ、食べられるの?」

「もちろんです」


 私が作業台に置いた試食用の薄切りを見て、アンナアンナは目を輝かせる。

 そこには宝石のようにきらきらと輝く、透き通った魔力糖があった。

 砂糖と水で液を注いだあと、魔力を込めてぷるぷるに固めて宝石のように作るお菓子だ。


「ピンクに青に、グラデーション、透明もあるわ。着色はどうやって?」

「魔力です。魔力の力や要素によって、様々な色に固まるんです。とある国では、魔力検査の時にこの方法で魔力を判別することもあるそうですよ」

「そうなのね。……私もできるかしら?」

「もちろんです。ご興味おありでしたら、後でご準備しますね。ところで相談なのですが、これから裏庭にピクニックに行きませんか?」

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新刊情報のお知らせ

いつもお世話になっております、まえばる蒔乃です!
いつも応援ありがとうございます。

転生ママはメイドになって、今度こそ愛する家族を幸せにします、全力で! 表紙

ありがたいことにWeb小説の書籍化が出ます!

作品情報

転生ママはメイドになって、今度こそ愛する家族を幸せにします、全力で!
著者:まえばる蒔乃
イラスト:カロクチトセ

発売情報

発売日:2026年5月9日(金)
出版社:マッグガーデン
レーベル:マッグガーデン・ノベルズ
定価:1,430円(税込)

ISBN:978-4-8000-1746-8


物質そのものを操る『大自在の魔女』の力を持って生まれた公爵令嬢レイラ。優しい家族に囲まれ、愛するシュヴァルツと結婚したものの、超大型の魔物が発生。レイラは夫や領民を守るためその命と引き換えに魔物を鎮圧した……。生まれ変わったリリーベルは前世を思い出し、シュヴァルツの暮らしを確かめるため城にメイドとして潜り込む。そこには思いっきりやつれたシュヴァルツと幼女がいて……。愛する夫と可愛い子供を守るため、無限大の魔術を活かします!


新作をお届けできることを嬉しく思います。

ぜひ書店や電子書籍ストアでチェックしてみてくださいね!

発売日:2026年5月9日(金)
みなさまどうぞよろしくお願いいたします!

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