表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【第一部完結】転生ママはメイドになって、今度こそ愛する家族を幸せにします、全力で!   作者: まえばる蒔乃@受賞感謝
第二章・少女魔術師はレイラ推し

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

16/55

16・こんなところに、研究所

「裏手の森にあるじゃない」

「え」

「そこから徒歩で来てるわ。……え? もしかして本気で知らなかったんですの?」

「し、知りませんでした……その」


 だって、レイラの時はこの湖上の島の建造物は城だけだったから。


◇◇◇


 イスカリエさんに断りを入れて、私は彼女について研究所へと向かった。

 元々、城の裏手には魔物の死骸や魔力がごっそりと栄養になった、未知の生態系の森が広がっていた。ユーグカが生まれた森だ。

 先を行きながらミントローズが語る。


「研究所は10年前に建てられましたの。魔物の殲滅をレイラ様の犠牲でなし得てしまった事への反省から、元レイラ様と同部隊の有志の方々が集まって結成した場所ですわ。シュヴァルツ部隊長はここの所長も務めてらっしゃいますわ」

「反省……ですか」

「次の大規模な魔物騒乱がいつ起きるか誰にもわからない。だから予測し、過去のデータを分析し、次の魔物騒乱を未然に防ぎ、また何かあったときに、一人だけの犠牲に頼らない――そういう研究所ですの」


 先を進むミントローズの表情は見えない。

 けれど真剣な顔をしているのは、背中で伝わってくる。


 研究所はすっきりとした白塗りの建物で、皆揃いのローブを纏っている。

 何人もの魔術師が、ミントローズと私を見て挨拶をしたり「あの噂のメイドさん」と笑いかけてくれた。知った顔がいくつもある。レイラ時代に共に戦った戦友だ。


「中を案内してあげますわ。ついてらっしゃい」


 ミントローズに連れられ、研究所のあちこちを巡る。


「ここはポーション研究室。レイラ様が命を賭して浄化したのと同じ方法を、ポーションで再現できないか研究していますの」

「こっちは水質・土壌検査室。湖とこの古城がある島、森の含有魔力を分析研究していますのよ」

「ここは資料庫。必要な書物を揃えています。地下の転移装置からは、王都の宮廷魔術師総本部の総合図書館と繋がっていますの」

「あちらの棟は居住区。ここに住み込んでいる職員達の寮。転移装置で通っている人もいますわ。私? 私は一応通いよ。まだ学生ですからね」


 ローブの下に纏った制服を示し、ミントローズは説明する。

 最後に湖の見渡せる休憩室に入り、彼女は私を振り返った。


「これで少しはわかったかしら? 私たちは真剣に、レイラ様、そしてユーグカ様の未来の為に日夜努力をしていることを」

「よくわかりました」


 私は驚いていた。

 まさか死後、ここまで皆が真剣に、未来に向かって取り組んでくれているとは想像もしていなかった。


「レイラ様の遺品を開くというのは、私たちの研究にかかわる重要なことなの」


 真剣な顔で、彼女は私の目を見て続ける。


「未知の文献があるかもしれませんし、盗もうとしたり燃やそうとした人たちもいましたわ」


 レイラはシュヴァルツの妻なだけではない。

 レイラ・アンドヴァリ公爵家の令嬢であり『大自在の魔女』という特別な存在だった。

 その遺品に興味を示す人は、いくらでも想像がつく。


「ユーグカ様が発見されてからはもっと酷くなりましたわ。貴族議会を使って、シュヴァルツ様に強引に遺品を引き渡させようとしたりもした。……全部、アンドヴァリ公爵家とシュヴァルツ様、そして私たちで撥ね除けてきたけれど、それを……」


 ミントローズはツインテールを揺らし、悔しそうにする。


「頭では理解していますの。でも、理解したくありませんわ。だってあなたなんて、ポッと出の、何も私たちの気持ちも知らない子供じゃないですの。……『大自在の魔女』の力があるってだけで、開かずの扉の先に、いけるなんて……」


 ぽろっと、ミントローズは涙を流した。


「私の目標だったんですのよ。レイラ様の遺品を私の研究で開いてみせるのが。ユーグカ様が開けるようになるお手伝いをするのが。それなのに、あなたは……」

「ミントローズ様……」

「シュヴァルツ様は納得させられても、私は納得できませんわ。納得して差し上げません」


 びしっと、私に指を突きつけるミントローズ。


「リリーベルさん。私に示しなさい。遺品を開いて、レイラ様の遺児ユーグカ様のお世話をできるほどのメイドなのか、『大自在の魔女』の力以外――リリーベルとしてのあなたを、私に証明して」


 私は真正面から、彼女の感情を受け止めることにした。

 正直なところ、これはとんでもない言いがかりだ。

 けれど人間を動かすのは理屈では無く感情で。

 彼女は私の存在に、それまでの自分の――自分たちの努力が踏みにじられたように感じている。

 シュヴァルツは最終決定者だから、シュヴァルツに文句は言えない。

 ならばせめて、私に文句を言っているのだ。納得させなければ許さない、と。


「わかりました」


 私は頷いた。

 いずれ私はシュヴァルツやユーグカを、意地悪な貴族社会や魔術師たちから守らねばならない時が来る。ミントローズ一人を納得させられなければ、私は誰にも対抗できないだろう。

 『大自在の魔女』の力だけが、家族を守る力じゃない。

 それに。


「私はミントローズ様に認められたいです。だからがんばりますね。ユーグカ様のためにも」

「どうしてそこでユーグカ様が出るの」

「ミントローズ様と私に仲良くして欲しそうなので」


 はっと、ミントローズは目を見開く。

 私はにっこりと頷いた。


「研究所をもう少し見学していいですか? せっかくなので、みなさんがどんな暮らしをなさっているのか勉強したいので」


◇◇◇


 城に戻ると、ユーグカとシュヴァルツ、それにセージがいた。

 セージとシュヴァルツで縄を持ち、ユーグカをぴょんぴょんと飛ばせている。

 平和な光景にほっこりする。


 私を見ると、セージが申し訳なさそうな顔をした。


「妹が悪いな。……あいつに何を言われた?」


 言われたことをふんわりと告げると、セージはますますがっくりと肩を落とした。


「ほんっと、あいつは……」


 シュヴァルツ様も私を案じるような顔をする。


「すまないな。私がもう少し根回ししておけばよかったんだが」

「根回ししてただろしっかり。研究所には開く前に連絡も入ってたし、ミントローズが話を聞いてなかっただけだ」

「気になさらないでください。これをきっかけにミントローズ様と仲良くなりたいので」

「あいつと!?」

「はい!」


 頷いた私は、私にぴょんととびついてきたユーグカを受け止めた。


「ユーグカ様はミントローズ様の事、お好きですもんね」

「うん!」

「私もミントローズ様と仲良くしたいです。仲良し作戦、がんばりますね」

「なかよしさくせん!?」

「はい、仲良し作戦です!」


 語感がハッピーだからだろう、ユーグカが嬉しそうにする。


「仲良し作戦って、一体何をするんだ? あいつを納得させるのは難しいだろ」

「気がついたんです、研究所に足りないものが」


 ユーグカをハグしながら、私は確信を持って言い切った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
╭━━━━━━━━━━━━━╮
   \愚か者の婚約破棄/
  短編コミカライズです
╰━━━━━━v━━━━━━╯
こんな愛らしい絵柄の 杠葉こゆき先生に
最高にざまあな問題作をコミカライズしていただきました!
ぜひご堪能ください!!!

杠葉こゆき先生のコミカライズ作品
まえばる蒔乃2024年刊行作一覧

୨୧┈┈┈┈┈┈ 12月5日発売 ┈┈┈┈┈┈୨୧
『逆追放された継母のその後 ~白雪姫に追い出されましたが、おっきな精霊と王子様、おいしい暮らしは賑やかです!~in森』
レーベル:集英社
ISBN-10:4086320347

୨୧┈┈┈┈┈┈ 12月6日発売 ┈┈┈┈┈┈୨୧
『身に覚えのない溺愛ですが、そこまで愛されたら仕方ない。忘却の乙女は神様に永遠に愛されるようです』
レーベル:PASH!ブックス
ISBN-10:978-4-391-16402-2

୨୧┈┈┈┈┈┈ 12月10日発売 ┈┈┈┈┈┈୨୧
『ハリボテ聖女は幼女になり、愛の重い神様と追放ライフを満喫する』①
漫画:恭屋鮎美
レーベル:モンスターコミックスf(双葉社)
ISBN-10:4575419737
連載:がうがうモンスター

୨୧┈┈┈┈┈┈ 12月17日発売 ┈┈┈┈┈┈୨୧
『異世界で○○からの執着愛が止まらない!?アンソロジーコミック』
漫画:久我山ぼん
レーベル:フロースコミック(KADOKAWA)
ISBN-10:9784046842879
詳細:短編コミック『寝物語で暗殺回避を続けていたら、危険な溺愛が始まりました』原作担当

『捨てられ花嫁の再婚 氷の辺境伯は最愛を誓う』
漫画:永野ユウ
レーベル:フロースコミック(KADOKAWA)
ISBN-10:4046842598

୨୧┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈୨୧
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ