報告書 願力と願導人形について
・願力
誰もが持つ願いの力。オーラ。生命が持つエネルギー。
力を込めた時、人間は白、魔族は黒、モンスターは灰色の光を放つ。願力が強い程、色も強く輝く。
それ以外の多細胞生物も願力を持っているとされる。アルカド周辺の生物は白、ゼーバ周辺のものは黒の色を持つが、これらは古代人が住処を選定(駆除)したためであると記述に残されている。
しかしながら、人間、魔族、モンスター以外の願力は一部を除き余り高くなく、色も微弱なので気にするほどのことでもない。
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・願導合金
航灰石または、スペースニウムとも呼ばれる鉱物を主成分として加工された、願力伝達力の高い特殊合金。願力を纏わせる事で、願力の高い者は物理的な強度を誇る光る力場を発生させる(割れるバリア)。
願力には、念動力やサイコキネシスのように願導合金を直接動かす力は無い。
願導合金を使用した道具を動かしているのは、あくまでも機械的にシステム化した装置であり、願力は制御(の一部)を担っているだけである。
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・願導人形
搭乗型の人型兵器。全身に願導合金を使用することで、願力での制御を可能とした。多くは全長七、八メートル程。
パイロットの願力を、最大で生身の三倍にまで高める事が出来、これにより、ほぼ全てのパイロットがバリアを張ることが出来る。この上昇量は、機体との相性によるところが大きい。
機体内部にあるコックピットから発せられた願力は、通常、機体の外部にある装甲や武具にバリアを張ることになる。
願力は体から離れると弱まるため、機体の中で最もバリアが硬くなる傾向にあるのは、コックピット周辺であるとされている。機体全身に願力を行き渡らせる関係から、コックピットは機体の中央(主に胸部)に備わることが多い。
願力という願いや欲望の力を使う関係上、一人乗りが推奨される。
願導合金により増幅された願力は、複雑な人型兵器の制御を担う事が出来たが、複数人が搭乗すると願いの混線が起き、パイロットの脳や体に痛みが走る。願いが相反する場合、機体との一体感を阻害するノイズが現れ、機体の制御に支障をきたす。
願力による機体制御は、主に生身の体で無意識に行っているような複雑な身体の制御(歩行における全身の使い方や、指を一本ずつ開閉する等)であるが、願力のレベルの高い者ほど、そこに割く要素を増やす事が叶う。
願力の扱いに長けた者ならば、理論上は機体の全ての制御を願力で行う事が可能であるとされる(強力な願力を持たなくとも、セラのようなピンポイントに願力を集束したスイッチ式制御も含む)。
また、機体とパイロットの体格や姿が近い程、機体との一体感が増す。そのため、アルカドの騎士等、コスプレに近い姿で搭乗する者たちもいる。
機体各部にハードポイントが設けられており、外観をある程度カスタマイズする事が出来、一体感の増幅に利用される。これは、特に魔族の機体に顕著に見られる。
さらに、専用の設備であれば、四肢や頭部に至るまで、あらゆる関節から先の組み換えが容易に行える為、厳密には全てが専用機と言っても過言ではない。
機体が人型でなくとも一体感を得られる稀有な例も存在するが、多くは特別な資質や、専門の訓練が必要になる。これらは、願力の弱い者が得意な傾向があるようで、NUMATAの惨雪に豊富なオプションパーツが用意されている。
戦闘の状況等によって、一体感(リンク係数)は変動し、ある一定値を超えると、融合分裂(転生)が起こるケースが確認されているが、詳細は不明。
アルカドでは、ガンドール。ゼーバでは、願導人形と表記されることが多いが、どちらも読みは「がんどーる」である。
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・願具
願導合金を使用し、願力で制御を可能にした道具。日常生活に使える物や、護身用の武器、義肢、移動用の乗り物、果てはガンドール用の武具に至るまで多岐に渡る。
生身で願具を使用した際に願いの混線が起こらない(または、起こり辛い)のは、その願具の形状や使用されている願導合金の量や質が、願力の増幅現象を発生させる程では無いからである。
そもそもの願力が高い黒須樹などはその限りでは無いのか、日常に於いても稀に願導合金による混線に苦しむ仕草を見せることがある。
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・ライト兵器
願導人形用の武具。これにも願導合金を使用している。
願導人形の力で増幅されたパイロットの願力は、光る力場「バリア」を発生させる。
これを「軽くて熱いライト」もしくは「重くて硬いヘビィ」へと変換し放出するのが、ライト兵器である。
前者は(願力)ビーム、後者は重結晶とも呼ばれる。どちらも、継続的な願力の供給が無くなると不安定になり、やがて砕けて霧散する。消滅までにかかる時間は、込められた力の度合いにより多少の変動をみせる。
また、霧散する前に自身の重結晶に当たった願力ビームは、その威力と寿命が延びる。これは、当たった重結晶の基となった願力の影響を受けていると考えられる。この時、重結晶はその硬度と質量を減少させる。
エネルギーと質量の関係から、重結晶の生成は願力ビームよりも燃費が悪いといえる。軽い願力ビームは弾道が安定せず、重結晶は飛距離が伸びない。その為、接近戦になりがちである。
ライト兵器は、バリアをライトかヘビィに変換し放出するものだから、そういった機構の無い願導合金製のシールドや願導マント等は、ガンドール用の願具に該当する。
逆に、生身の人間が使用できる願具の武器はライト兵器ではなく「願力のバリアにより硬度の増した鈍器(要高レベル)」「願力で制御できる銃(火薬ではなく電気。弾もプラスチック等の化合物が多い)」等である。
人間サイズへのライト兵器の小型化は、機構の複雑さや、使用者の願力レベルなどの理由から、現実的では無い。
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・エレクトリックバレット
アルカド製ガンドールの動力源である高性能充電池。一本で、一戦闘を戦い抜けるだけの継続的な電力を確保出来、また、瞬間的な電流の放出にも優れる。
アクア・プリズムと呼ばれる液体を電解液に使用している(この液体は、実弾に使用されるフレア・プリズムには劣るが、可燃、爆発性も併せ持つ)。
アルカド製ライト兵器に直挿しすることで、願力ビームや重結晶への変換効率と出力を高め、収束させた願力を一気に解放変換する、最大出力「オーバーライト」を使用可能とした。
この時、高出力の電流に電池自体の耐久力が保たず、一度のオーバーライトでエレクトリックバレット一つを消費し、薬莢のように排出される。
直挿し自体がライト兵器に負荷をかける為、オーバーライトは、いわゆる奥の手、必殺技扱いとなっている。
エレクトリックバレットという名前は、アルカドで最も広く使われているNUMATA製の電池の商品名であり、広義では、ハイパワーセル、若しくは、ハイパワーバッテリーというのが正しい。
また、バレット(ブレット)という名前だが、これ自体を弾丸(弾頭)として撃ち出すことは無く、ただのNUMATA流ネーミングである。
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・スペースニウムエンジン
航灰石を利用した、アルカド製ガンドールの動力。外部電源や、エレクトリックバレットからの電力供給で起動、稼働する。
軽微な重量軽減、限定的な重力質量と慣性質量制御機能の副次的効果がある。一般には疑似反重力と説明されている。
アンティークにも同様のエンジンが搭載されており、こちらは「古代電動機」と呼称する事になった模様。
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・願力原動機
ゼーバ製願導人形の動力。操縦者の願力で起動、稼働する。
出力が高まると、一定時間、願力を使用せずに稼働するオーバードライブ状態になり、出力が更に上昇する。だが、現時点では任意発動は出来ず、発動することは滅多にない。
アンティークにも同様のエンジンが搭載されており、こちらは「クロックワークス・ドライブ(ゼンマイ仕掛け)」と呼ばれている(ネーミングはエイリアスらしく、マーク博士は不服)。
アンティークの動力は、スペースニウムエンジンと願力原動機のハイブリッドであると言える。
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・イルミネーター
疑似願力生成兼、疑似ライト及び疑似ヘビィ変換放出装置。
電力と「エア・プリズム」と呼ばれる物質を反応させて疑似願力バリアを生成させ、ライト兵器を真似た疑似願力ビームや疑似重結晶へと変換放出させる大型の装置。
疑似願力ビームは、プラズマ化させた疑似願力を更に変質させ、電気で撃ち出すビーム兵器。荷電粒子砲だが、願力ビームを模しているので、軽くて熱いという特性を持つ。
疑似願力は願導合金による増幅効果が発生せず、物理バリアを生成させるには大量の電力とエア・プリズムが必要になる為、現状では装置の小型化が難しい。
威力に拘らないのなら、粒子加速器はライト兵器並の大きさで構わない。しかしそもそも、願力を使用しない荷電粒子砲なんて使おうと考えるなら、更なる電力が必須であり、また、疑似重結晶の生成も同様である。
大勢が乗る上、人型でない艦では願力での操舵は難しく、例え願導合金を使用したとしても願力上昇の効果は望めない。その為、ガンドール以外の兵器にライト兵器が搭載される事は殆ど無い。諸々の理由から、イルミネーターは、艦船や病院、発電所、神都などの重要施設の防衛と戦闘の為に使用される。
イルミネーターのビームや重結晶の色は、主に黄色等の暖色系となっているが、カスタマイズも出来る模様。そこまで拘る者は余りいない。
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・推進機関
アルカド製ガンドールの多くは、膨張したガスを噴射して推力を得ている。
推進剤に使用されるのは、主に「エア・プリズム」と呼ばれる液体で、気体になった時に強力な推進力を生む。
前述のスペースニウムエンジンの質量制御と併用する事で飛行も可能だが、ガンドールは主に陸戦を想定して造られており、またムカデクワガタの存在もあり、あまりにも高度への飛行は推奨されない。
ゼーバ製の願導人形は、願力推進機構を採用し、願力を推進力へと変換している。
また、ゼーバの機体は願力発電装置を内蔵しており、ほぼ全ての機能を願力に依存している。これは、魔族の願力が人間のそれより平均的に高い傾向にあるためである。