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もふもふ侍vsキングカピバラ~姉魔法少女スピンオフ~  作者: そら・そらら


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18.魔法に憧れて

 陽向は、さすが魔法少女とその妖精だって顔でこちらを見ているし。そして素直に、質問に答えてくれた。


「フワリーさんの過去の映像とか、彼の占いの研究の足跡を片っ端から集めて、真似をしました。もちろん、地元の静岡では使えない魔法なので、ここに来るまでは本当に出来るかわからなかったのですけれど」

「でも、できた」

「はい。すごかった、です」


 そりゃな。未知の感覚だよな。しかも人類史上、先行してやった人間がひとりしかいない感覚だ。僕ですら、この魔法は知らない。


「この街はすごいなって思いました。魔法が現実にあるの、ワクワクするじゃないですか。それで、えっと」

「君はどうして、魔法を使いたいのかな?」


 単に、すごい力だから試してみたいって気持ちはわかる。それに魔法少女に憧れる女の子は大勢いるらしい。


 ティアラみたいに邪道に走らず、単にファンとして応援してくれるならいいんだけどね。この街に来て魔法を使うのを第一歩として、なんとか自分も魔法少女になろうとか考えているなら警戒しないといけない。事実、僕たちに声をかけたし。

 魔法少女の戦いはとっくに終わって、もう必要ないのだから。


「あの。わたし、こんな性格で。あ、性格って言ってもよくわからないですよね。内気というか、人付き合いが苦手というか。皆さんに声をかけるのも、実はかなり勇気がいって……魔法少女だって確信が持てなかったら、そのまま立ち去ってたかも」


 まあ確かに、社交的な人ではないよな。そのくせ、自分が喋る段になると一方的に話し続けることもある。友達はできにくそうだ。


「だからでしょうか。小さい頃からずっと、本を読むのに夢中になって。物語の中のわたしはとっても素敵な女の子。頭が良くて運動ができて、友達も大勢いて、そして魔法が使える。もちろん現実にはそんなことは無理なんだけど、それでも似たことがしたくて占いについて勉強してみたんです。いろんな占い師のこと勉強したりして」


 そしてフワリーを見つけた、か。

 その後は僕も知っている。陽向はフワリーが模布市限定で超能力的な力を使えたと推測して、その後魔法少女という形で根拠が示された。


「この街に旅行に来たのは、魔法を確かめるため。もし本当にそんなものがあったら、それはすごいなって思って」


 単に魔法という未知なる現象に憧れただけか。彼女に悪意はないと思う。

 けど、ひとつだけ不可解なことがあって。


「昨日、どうして河原に魔法陣を描いていたんだい?」


 あれは、手の甲に人の素性を知る魔法陣を描くのとはまったく無関係だ。


「フワリーさんが雑誌の取材に応じた時の記事に、別の魔法陣についての記載があったんです。動物とコミュニケーションを取れるかもしれない、というもの」

「モフモフと!?」


 あ。つむぎが反応した。モフモフじゃなくて動物だぞ。重なる所も多いけど。


 陽向が鞄から一冊の雑誌を取り出した。聞いたことのない誌名だ。調べたら十年以上前に廃刊してる。

 オカルト系の話題を扱う雑誌で、どっちかと言うと低俗だったり扇情的な内容の記事を扱うタイプ。すこしページをめくれば、風俗と消費者金融の広告が目に入った。


 この号は、ちょうどフワリーが東京進出する直前くらいに取材を行ったらしい。模布市で話題の超能力者を直撃って記事だ。


 占い師じゃないのか。オカルト雑誌的には、そっちの方が記事のインパクトが大きいものな。魔法陣を操るって性質もそれっぽいかも。


 占い師でやろうとしているフワリーの意思が多少無視されたとしても、そっちでやった。

 そんな態度だから廃刊するんだぞ。


 フワリーは取材自体には協力的だったらしい。彼の占い師としての研究を簡単にまとめて教えてくれているし、今後の研究の方向性についても語ってくれている。なるほど、動物との接し方が変わる魔法を研究していると書いてある。

 研究途中の魔法陣も、フワリーのメモ書きの撮影といった形だけど記載されていた。


 なるほど、昨日陽向が描いていた魔法陣だ。なんらかの効果は見いだせそうな気がする。


「どう、ラフィオ? モフモフとお喋りできる魔法陣になりそう?」

「わからない。画像が不鮮明だし。よく見てみないと」

「陽向さんは、これを使ってハムスターさんとお話ししたいって思ったんですよね?」

「ええ。そう。マロンは、わたしの一番の友達。それともっと仲良くしたくて。あそこの河原は、フワリーさんが言うには一番魔力を感じるところらしいの」


 記事には確かに、あの河原を背景にしたフワリーの写真も載せられていた。


 見当違いだけどね。あの街で一番魔力が濃いのは、河原から少し離れた駅の方へ行かなきゃいけない。駅の向こう側の住宅地が魔力の中心だ。


 それはそうと魔法陣だけど。


「この魔法陣は正直、描いたところでなんの意味もないと思う。魔力が中央に集まるようにはできているけど、それだけだ。外から見ても変化はないし、ハムスターは喋らない」


 魔力が集まっていく様子自体は、僕には見えるけどね。それはそれで美しい光景ではあるけど、人間には観測できないのだから無意味だ。


「そう……ですか……」

「ラフィオ。なんとかならない? 陽向さんとマロンちゃん、話したがってるけれど」

「悪いけど、僕としては協力はできない。魔法をみだりに使って、それが世間に知られてしまったら大きな混乱が起こる。陽向は魔法を悪用はしない。それはわかる。けど、世の中には悪い人もいる」


 悪用を試みて、そして魔法の使い方を知っている僕たちや陽向に尋ねようとするかもしれない。それも強引なやり方で。誘拐とか、脅迫とかの手段を使うことを厭わない人間は間違いなくいる。悲しいことだけど。

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