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もふもふ侍vsキングカピバラ~姉魔法少女スピンオフ~  作者: そら・そらら


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17.素性を当てる魔法

「えっ? えぇっ!? なんで!?」

「……手の甲を見せてくれるかい?」


 想定外の事態に慌てるつむぎの肩に手を置いて落ち着かせて、僕は少女に声をかける。彼女も頷いてこちらに手を見せた。

 フワリーが占い師としてメディアに出ていた時に描いていた魔法陣が、そこにあった。


「その魔法陣について、詳しく教えてくれるかい? それに、君自身のことも。……僕としては、不用意に魔法を使う人間を見過ごせないから」


 彼女の行為に悪気があるかは不明だ。けど、軽く睨むような表情で尋ねた。

 少しの沈黙が流れた後。


「ごめんなさい!」


 少女は深々と頭を下げた。



 動物園内の休憩スペースで、自販機で買ったジュースを飲みながら話し合う。四人がけのテーブルに座るのだけど、つむぎは僕の隣を譲ろうとしないから、自然と正治と少女が隣り合う。

 お互いによく知らない相手が横にいることに、ふたりとも少し気まずそうだった。


「わたし、日向陽向と言います。高校二年生。あ、今度三年生になります」


 ちょっとおどおどしたしたような、緊張している様子の彼女、陽向はゆっくりと話し始めた。

 悠馬たちと同い年か。名字と名前がだいたい同じ意味なのは、突っ込んじゃ駄目なのかな。かわいい名前だから良いと思うけど。


「ええっと。名字と名前に同じ漢字が使われてて、意味も一緒だから、変な名前だって言われてきました」


 自分から話題にしてきたぞ。


「そ、そうか……」

「たしかに、ひなたって日向と書けますからね。同じです。ところで陽向さん」

「は、はい!」

「ハムスターさんは、今日は一緒ですか!? 是非モフモフさせてむぐー!?」

「お前は黙ってろ」


 話が面倒になるから、つむぎの口を塞いだ。けど陽向は快く頷いて。


「逃げちゃうし、動物園で動物を外に出すのはよくないから、ケージから出せないけれど。見るのならいいよ」


 持ち運び用の小さめのケージをテーブルの上に置いた。モフモフできないことに不満げなつむぎだけど、ハムスター自体は好きだからニコニコと笑顔を浮かべて顔を近づけ見つめ始めた。

 とりあえず静かになったからいいか。


「それで、陽向さん。どうして僕たちに話しかけたんだい?」

「ええっと。昨日の時点でわたし、おふたりから逃げたじゃないですか。本当はもっとちゃんと話さなきゃいけないし、そうしたかったのに。突然のことで驚いて変な話し方しちゃったし、マロンも逃げちゃったから」


 このモフり魔のせいでね。


「あの後、ホテルに帰ってすごく後悔して。今度こそちゃんとお話したいって思って。魔法少女を探すことにしたんです。朝はあの河原に行って、でもいなくて。青い魔法少女は動物が好きみたいだから、もしかしたら動物園かなと思って行ってみたら、見つけました」


 動物好きというのは、メディアに広まっている魔法少女シャイニーハンターの情報から察せられるな。単に昨日のハンターが、ハムスターに強い執着を見せたことの推測かもしれないけど。


「それで、動物園の中でそれっぽい人……小学校の高学年くらいの女の子に対して魔法を使って探してたってことかい?」

「はい。それでおふたりを見つけました。手をかざした途端にすぐにわかりました」

「本当に魔法で、相手の素性がわかるのか……」

「はい。ちょっと失礼します」


 陽向は正治に手のひらを向けた。


「俳優さんをなさってるんですね。主演映画の撮影のために模布市に来ている。大きな仕事なんですね。おめでとうございます。それから……犬に手を噛まれたことがある」


 陽向は有名俳優である正治のことを、よく知らないらしい。しかし俳優と言えども犬のエピソードは誰にも語ったことはない。それを言い当てたのだから、彼女の魔法は本物と見ていい。


「あの厳つい顔の男性は、家では可愛らしいパピヨンを飼っていて溺愛しています。あの小学生は、テストで低い点数を取った答案用紙を机の中に隠しています。あそこの女性は、明日彼氏とこの動物園にデートに行く約束をしています。それが素敵なものになるように、こっそり下見に来たとかだと思います」


 通りがかる人たちに手をかざして、的確に素性を当てていく。


 正解かどうかはわからないけれど、陽向の言葉に迷いはない。わかったことをすぐに口にしているように見えた。つまり、嘘はついていない。


「それは、どんな風に見えるんだい? いや、見えているかも僕にはよくわからないけれど」

「その人の記憶が映像として頭のなかに流れてくるんです。その人の人生で特に印象的な場面とか、今思い浮かべていることとかが見えやすいです」

「なるほど。魔法陣を見せてくれ」


 陽向がテーブルに手をついて甲を見せる。

 なるほど、確かにそういう効果が得られそうな魔法陣だ。


「でも、どうして魔法を使えるようになった? ……Mr.フワリーの研究をしているのは知っているけれど」

「え。なんでそれを」

「まあ、こちらも色々調べさせてもらったから」


 スマホで辿り着ける範囲のことしか調べられはしないけれどね。詳しく言うことはないだろう。

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