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もふもふ侍vsキングカピバラ~姉魔法少女スピンオフ~  作者: そら・そらら


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16.動物園

 正治も妖精姿の僕に触れる訓練を続けているわけで、だんだんモフモフへの耐性はついているらしい。

 檻の向こうにいる猛獣たちに対して明らかに腰が引けている。けど逃げ出したり気絶したりしないだけ立派だ。


 ちょっと怖がるくらいなら、そこの小さな子供も同じことしている。つまり普通の人間らしい行動なわけで、彼は正常に近づいていると考えていいだろう。


「ライオンさーん。こっち来てー」


 手を伸ばして触れようとするつむぎが異常なだけだ。そんなことしても、万が一の事故に備えてライオンには物理的に触れられないようになってるから。具体的には、檻の鉄格子とライオンの間に堀があるとか。

 けど、檻に触るという迷惑行為をやめさせるべく、僕はつむぎの体を押さえ続けている。まったくこいつは。


「正治。なにか見たい動物はいるかい?」

「そんなこと言われても……」

「わたし! シマウマさん見たい!」

「お前には訊いてない」

「あと動物ふれあいコーナー行きたい!」

「やめろ。お前に触られる動物がかわいそうだ」


 けど、正治の修行には使えるかも。


「行くかい? ウサギとか触ることになるよ」

「い、行く。行かなきゃ、馬にも乗れないから……」


 壮絶な決意をしたらしい正治は、該当エリアに思重い足取りで向かっていく。悲壮な戦いに赴く男といった感じだ。もふもふ侍って雰囲気が出ている。今は出さなくていいんだけど。というか、ウサギに触りにいくだけなんだけれど。


「ウサギさーん。モフモフさせてー」

「きゅー……」


 にじり寄ろうとするつむぎを、小さな白いウサギは警戒の目で見つめて後ずさりしていた。人懐っこい個体が選ばれるコーナーなのに、飼育されている間に失われた野生の勘が、今まさに復活したらしい。


「ウサギたちを怖がらせるなよ」

「怖がらせてなんかないよー。仲良くしたいって思ってるから」

「そうは見えないんだよなあ。殺気が出てるというか」

「殺気?」

「どうやってもモフってやるという意志だ」

「それ、殺気なの?」

「殺気だ。それより正治のサポートに回るぞ」

「正治さんは?」

「目を開けて気絶している」

「わー……」


 ふれあいコーナーのベンチに座っている彼は、手にニンジンスティックを持っている。ウサギにあげるエサだ。そこのガチャポンみたいな機械で売ってる。


 ウサギを引き寄せるのに使えるアイテムで、一度は腹を括ってウサギに触れ合うために買った正治だけど、至近距離に来るウサギに恐怖が勝ってしまったらしい。

 二本の指で持ったニンジンをウサギがガシガシと食べている。正治はその様子に顔を向けながら、見てはいなかった。白目を剥いて気絶していた。


「どうしよう。起こしてあげるべきかな?」

「ここまで来ると、そう簡単にはモフモフ恐怖症は治らないぞ」

「ラフィオは撫でられるようになったのにね」

「僕はおとなしいからね」


 いや、それはここのウサギも同じだけど。僕が決して噛んだりしないということを、言葉で伝えた上で一緒にいる時間を長く取ることで慣らせたっていうのが大きい。

 初対面のウサギに同じことをするのも無理か。


「よし、こうなったらショック療法だね」

「……何をするつもりだい?」

「正治さんの膝の上にたくさんのウサギさんを置いてから起こすの。目が覚めたら大量のウサギさん! 勢いで大丈夫になったりしないかな?」

「するかもしれないけど、今度こそ彼が死ぬかもしれないから。やめておこうな」

「えー」


 既にウサギを一匹捕まえて、正治に乗せようとしているつむぎを止める。これはショック死してしまいかねない。


 それに、つむぎに抱えられたウサギがかわいそうだし。恐るべきモフり魔に捕まったことを悟って、静かになっていた。己の運命を受け入れ、これまでの自分の生に感謝しているって目をしていた。

離してあげなさい。


 ニンジンスティックを食べてたウサギもどこかに行ってしまって、正治はようやくウサギから解放された。頬を軽く叩いて起こしてやる。


「そうか。俺はまた……駄目だな。こんなんじゃ、馬に乗るなんて無理だ。明日の撮影もできそうにない……」

「明日ってなんの撮影でしたっけ」

「カピバラと、ラフィオのシーンだ」

「え。もう」


 カピバラが出てくるのか。それに僕も。


 僕は映画の中では、大きな獣の姿で出演することになっている。当然ながら、正治はこの姿にはそんなに慣れてない。ちゃんとカメラの前で演技ができるのか、かなり心配だな。


「んー。どうすればいいんでしょうか。正治さんにモフモフ平気になってもらうの、単に慣らすだけでは駄目だと思うんですよね」

「申し訳ない。俺も、どうしたらいいのかわからなくて」

「あの……」


 こちらに、遠慮がちに声をかける者がいた。

 見覚えのある顔だった。


「あ。昨日のお姉さん」

「うん。そうだね」


 河原で魔法陣を描いていたあの子だった。


 そして、フワリーについて研究していた子だった。


 向こうはこちらを、昨日声をかけた魔法少女だとは知らない。つむぎは変身してたし、僕も獣だったから。

 けど、向こうは僕たちに手をかざして。


「魔法少女さん、ですよね?」


 正体を言い当てた。

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