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もふもふ侍vsキングカピバラ~姉魔法少女スピンオフ~  作者: そら・そらら


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11/24

11.魔法陣を描く少女

 撮影現場についたら、僕たちは正治のモフモフ特訓に入る。小さくなって撫でられるのが主な仕事。彼の彼が出るシーンの撮影の時間以外はたいていそうしている。

 スタッフとの打ち合わせとか、共演者と談笑する時間なんかも、僕を撫でることが推奨された。常にモフモフと共に過ごせば慣れるだろう。


 相変わらず彼の手はぎこちなかったけれど、それでも震えながらでも僕の背中に触れられるようになった。



 撮影場所には、僕たちの家の近所も含まれていた。というか、ものすごく馴染みのある場所だ。

 例の河原。魔法石を作るために石を何度も拾っていたそこでも撮影をする。


 登場人物同士が会話したり、ちょっとしたアクションなんかもあったりするシーン。正治がカメラの前で演技しているから、僕たちは暇だ。


「なんか不思議な感じだね。わたしたちの街で映画の撮影があるなんて。よく知ってる景色が映画に出てくる」

「たしかにね」


 そんなことを話しながら、僕たちは撮影している現場から少し離れた。正治が本番中だから暇なんだよね。


 ハンターは魔法少女になりっぱなし。僕も喋って動くモフモフとして、ハンターに抱きしめられている。


 通りすがりの、母親に連れられた子供が、魔法少女だとこっちを指差した。ハンターは笑いかけながら手を振る。

 戦いが終わった後も、魔法少女は人気だな。ジョギング中のおじいさんや買い物かごを提げたおばさんなんかも、僕たちに挨拶してくれた。


 そろそろ撮影現場に戻ろうかと思った頃に。


「ねえラフィオ。あれ」

「うん?」


 ハンターがある一方を指さした。川沿いに広がる、石だらけの範囲。そこに女の子がひとりしゃがんでいた。


 こちらに背を向けているから、詳しい容姿はわからない。だから女なのかも未成年者なのかも本当は定かではないけど、多分そうだろう。

 短めのスカートを履いているし、身長も低めだ。そして。


「んー。描きにくいな。ここが魔力量が濃いって話だったけど。石ばっかりで描けない。場所を変えたほうがいいかなー?」


 なんてブツブツ言っている。


「なにやってるんだろう」


 ハンターは気になるという様子で近づいて行った。変な奴かもしれないからやめなさいと言いかけたけど、僕もそっちに目をやった。


 女の子は、石が一面に転がっている中に魔法陣を描いていた。石で凹凸が激しいから、その上に大きな何かを描くというのは大変だ。それでもチョークで大きな円を引いて、中にいくつかの図式や文様が雑ながら描き込まれていた。

 アニメやファンタジーな映画なんかでよく見る、それっぽい魔法陣なのかなと思ったけど、違った。


 その魔法陣は"正しそう"だった。


「なあ、お前」

「ひっ!?」


 思わず声をかけた僕に、その子はビクリと背中を震わせて振り返った。やっぱり思った通り、若い女の子だ。


 高校生くらいかな。頬にそばかすがある、ちょっと気の弱そうな子だった。彼女は僕たちを見つめて目を丸くした。

 魔法少女と、その妖精だからね。


「ま、ま、魔法少女さん!? 本物ですか!?」

「そうだよ」

「すごい! ええっと! ファンです! わたし静岡に住んでいるので活躍はテレビやネットでしか見たことないんですけど! でもすごく憧れていて! 格好いいなって思ってて! なにがすごいって、この世界に魔法があるってことですよね! そんなの普通じゃないのに! なんか、夢を感じました!」

「そ、そうですか……」


 テンション高めで一気にまくし立ててきた。なんか、それなりに自己紹介はしてくれたらしいのだけど、出身地しかわからなかった。あと、こっちのファンだってことくらい。

 随分と好かれているらしい。それは嬉しいんだけど、その勢いにハンターは若干引き気味だ。


「あ、ありがとうございます……」

「あ……」


 その引きつった笑顔に、少女も我に返った。


「ご、ごめんなさい! またやっちゃった。よく言われるんです。人の話を聞かないで、自分ばっかり話してるって。うぅっ……」

「だ、大丈夫です。それでお姉さん、えっと……ん?」

「どうした?」


 ハンターが、何かに気づいたような素振りを見せた。

 この子のことで、何か思い当たる節でもあったのだろうか。


「お姉さん、なにかモフモフを隠し持っていませんか?」

「おい。こら。急に何を言い出す」


 自分の趣味に関することだった。今はそれどころじゃないだろ。


「も、モフモフ? たぶんこれかなあ……」


 と、少女は着ている服に軽く触れた。春先らしい淡い色のジャケットのポケットから顔を出したのは。


「ハムスターさんだー!」

「ひぇっ!?」


 そう。茶色と白の毛並みのハムスター。


 よほど懐いているのだろうか。ケージに入っているわけではないのに逃げない。

 けど、ハンターが前にいたとしたら別だ。ハムスターはモフり魔のモフらせて欲を察したのか怯えた顔をした。


「きゅー!」

「あ! 待って! マロン待って!」


 ポケットから逃げ出したマロンという名らしいハムスターは、石だらけの地面に降りて一目散に駆け出した。慌ててそれを追いかけていく少女。


「ハムスターさん! 待って! モフらせて!」

「おいこら」


 ハンターも追いかけようとする。

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