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第8話(短いエピローグ)

 悠が去ってからは教室から魔法がとけてしまったようだった。

 黒板、チョーク、机、椅子、後ろの壁に貼られた習字の紙、風にたなびく窓のカーテン、なにを見ても段ボール紙を噛むように味気ない。終わったのだ。ようするに。小世は心のなかで溜め息をつく。

 一日の授業が終わったあと、小世は生徒たちから回収した答案用紙を抱えて、教室の片隅にある教員用の机に腰をおろした。教室にはまだ何人かの生徒たちがたむろしてお喋りしている。いつもの光景だ。ただしそのなかに瞭と花の姿はない。

 またああいう子が転校してこないかな、と小世は思う。もちろん悠が特別な子だったってのはわかっている。都会の学校にもああいうタイプの子どもはいなかった。世界じゅうの学校の校舎を逆さにひっくりかえして、うえからとんとん叩いても、悠以外には自分の両手のなかに落っこちてこないような気さえする。

 でも一度はここに来たんだもん。ああいう子が二度とここに来ないなんて、誰にも断言できないよね。うん。そうだよ。小世は納得したようにこくんと頷いたが、それでもすぐまた首を横に振って、机に突っ伏した。顔だけ横に向けて溜め息をつき、物憂げに窓ガラスの向こうを見る。

 とりたてて見るもののない、退屈な風景だ。六年生の他のクラスの生徒たちが校庭でかけっこをしている。その歓声が時おり、窓ガラスをわずかに震わせる。視界の大半を埋めつくす緑の田畑。発電所の向こうにある国道は、さっきから一台も車が通らない。遠くに連なる山々は、どれだけ睨みつけてもぴくりとも動かなかった。

 小世はここから見える風景のすべてが憎たらしかった。校庭の片隅に、いかにも罪のなさそうな樫の木が一本だけぽつんと立っているが、彼女はそれさえ憎い。

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