聖なるイデアの用意
人心地ついて、所持品改めインベントリに素材【スライムゼリー】が入っていることを確認した。
(マギカは、チュートリアルを、修了した。
もう、立派な誅戮者)
「はい、私誅戮します!」
(誅戮しに行くテンション、違う……。
魔法が、マギカを待っている。楽しんで、きて)
「ありがとうございます! また来ます!」
私はログアウトしたいっ、と強く考えて今日のところはこの世界を後にしたのだった。
――願わくは、この出会いが少女の始まりを幸わんことを……。
戻ってきました現実世界。現在時刻は21時。
お風呂に入って体を清めよう。
明日の正式リリースに備えて早めに寝なきゃ。
その日の夜は遠足の前日の心持ちで布団に臨んだ。
やっぱり副交感神経が強くて余裕の快眠だった。
「おはよう、あなた。
ごはんにする? お風呂にする? それとも、わ、た、し?」
VRのヘッドセットが覚醒を検知して新妻のボイスさえお届けしてくれる、そんな新時代の朝。
「んっ、ごはんん……」
「すみません、よく分かりません」
まだまだ研究段階のAI新妻では満たせなかった欲求を慰めるため、まずは洗面所で顔を洗う。これくらいは私にかかれば朝飯前のケーキ一切れだ。ざこな読者諸姉に教えておくけど、かんたん、ってこと。
巷で洗顔とも呼ばれる間食を終えたら、朝ごはんの支度に取り掛かる。ログイン前にも昼ごはん代わりの軽食をつまむ予定だから、軽めに済まそう。
朝食の後はお紅茶をお供にまったりとくつろぐ優雅なお時間。時計をちらちらと気にしつつも友達と情報を共有して有意義に過ごした。
――そして11時50分。
正式リリースは目前に迫っていた。
「そろそろ、だね」
独り呟いて、腰を上げる。
時は来た。
今こそ私の魔法を世界に刻み付けるんだ。
昨夜と同じ流れをなぞり、夢幻へ潜っていく。
これは、私が私を叶える物語。




