聖なるイデアの予行
今回話は進みません。
次回でようやくログインとなります。
限定品を衝動的にお買い上げしてしまった。
桜を荊棘に落とし込んだような見た目だった。
(チュートリアル、進む?)
水鏡を覗き込むのに夢中な私を引き戻す柔らかい声。
私としたことが暫定とはいえ神様をお待たせするなんて!
「私、誅殺されちゃいますか……?」
(加害者意識が強すぎる。もう進む)
「お金ですか! それとも地位ですか名誉ですか!」
(コマンドは、思考で入力する。
メニューを、開いてみて)
「私の釈明が届かない……!
メニュー開きましたー」
メニューを開くと、【装備】や【所持品】、【設定】、更には【ログアウト】等色々な項目が視界の左に並ぶ。
それぞれに意識を向ければ、直感的に使用が解る作りになっていた。
(健康状態とか、マップとかのUIの表示、接触や痛覚の制限、言語は、【設定】で弄って)
UIは思考での表示、制限はひとまず最大、言語は日本語、っと。
(ここまでの説明は、電子取扱説明書と、ゲーム内の【ヘルプ】でも、読める)
「あ、読めるんですね」
(読まない人、多い……)
「ここの会社は取扱説明書もお楽しみいただけるんですけどねー……」
(気を取り直して。
戦闘の予行、する?)
「ふふん、私が実はかっこいいことをご覧に入れます!」
(ふふ、楽しみ)
泉から上がる。お忘れかも知れないがこれまでのやり取りは全て水に浸かりながら行われていたのだ。
裾を絞っていると茂みが鳴って水風船が飛び出してきた。
(スライム。ぷるぷる柔らかい、異教徒)
JRPGではお馴染みの水色のそれは、このゲームでも例に漏れず最弱の代名詞だ。
(来る。避けて)
ぽよん。
スライムが弾んで、おなかにぶつかった。
ダメージは、0。
(いい感じ。次は、攻撃)
避けてないのにチュートリアルは進んでる。
【悲報】最新のVRMMO、フラグ管理が自由すぎる……!
まあそんな速報はとりあえず、改めてスライムに向き直る。
キャラクターメイキングで【魔術起動】スキルを手に入れた時に、唱えるべき魔術の起動キーは頭に入ってきていた。
手を組んで、祈るようにその言葉を口にする。
「Fyr」
火の基礎となる魔術。光の軌跡を描いたそれはスライムに着弾して、見事その魂を救済した。
「おおお……」
今、私魔法使えた……。
初めての魔法は、夜という環境も手伝って、すっごく綺麗だった。
「っありがとうございます! 私、幸せ……っ」
(おめでとう、マギカ)




