聖なるイデアの献身
使いたい言葉を使える時に使った、という回です。
文中のルビは勢い任せであてにならない場合がありますがご容赦願います。
超越的な存在感と破滅的な虚無感とが混じり合う静物。
明晰な悪夢に囚われた時の、現実逃避が視覚の解釈を拒絶し歪曲するあの不快感に見舞われる。
救われることを希った者が異種の屍を継ぎ合わせた罪深き瀆聖のトランジ。
それは私には、そう思えた。
「どういうこと……?」
扉から滑り込み一際臨場感を増す気配を全身に受けて、現状がますます分からなくなった。
この躯が〝天使様〟であるなら。
彼女はどうしてここに来たのか。
私はここで、どうしたらいい……?
身廊を足早に通り過ぎて、ひとまず今できることから始めることにした。
「天使様……?」
祭壇からずり落ちかけている頭を正面から覗き込む。
綺麗な顔の柔和そうな目は呼び掛けても開きそうにない。
左手は輝く液体が伝うお腹に置かれており、顔の横で垂れ下がる右手からは力が失われていることが窺い知れた。
ただ、古代ローマのトガのような布に覆われた胸は動いていないように見えたけど、手首には血の流れをとくん……とくん……と微かに触れることができた。
まだ、生きていた。
私は思い返す。
今日、里を出る前のこと。
昨日、その力を得た時のこと。
それは、ステータスの共有を可能とする起死回生の権能。
そして、私は行使する。
「私を捧げます、天使様!
だからあの子を救ってください!」




