第4章 交渉の具体的な例
この章では、交渉の具体的な例を見ながら、今まで書いた事がどう使われるのか見ていきます。
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状況はゲームの中盤とします。
A 手番。木が欲しい。出せるのはレンガ・麦・羊。建設するか分からない。
私 レンガと羊は殆ど算出しない。出せるのは木・鉄・麦
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この場合、“私”はどういう交渉が可能でしょうか。
まずはAが欲しい木を出して交渉すると仮定し、資源の相場基本表で見てみましょう。
レンガ > 有利な交換です。
麦 > 等価交換です。
羊 > やや不利な交換です。
これだけだと麦なら貰えそうです。しかし、残念なことに私は麦が“余って”います。だから麦を貰っても仕方ありません。
レンガは欲しいですが、価値の順位が高く木だと相手が損なボーダーの交渉です。
羊は欲しいですが、こちらが損なボーダーの交渉です。
ここで、プラス要素を見てみます。あなたは羊とレンガは出ませんね。という事は、羊の価値が上がり、木と並ぶ価値と捉えても良いのです。なので「羊と木の交換」はやや損に見えますが実は等価交換に近い、となります。
一方、レンガは出る可能性が低いです。あなたは出ない資源を貰いたいと思っても、交渉を分かっているプレイヤーなら木では交換しません。もっと高い資源を要求してきます。少なくとも鉄を出さないと許してもらえないでしょう。もしくは木に羊をつけて、と言われるかもしれません。
では、Aが明らかに今回の手番で建設を目指しているようだったらどうでしょうか。Aは木が手に入れば建設が出来ると仮定します。
そうなると相手が欲しがっている木の価値は上がりますね。貴方は木で羊を手に入れる交渉は今度は等価よりあなたが損な、ボーダーの交渉になります。
しかし、今度は木はレンガとも交換可能な資源と昇格していると考える事も出来ます。相手は今回の手番で建設を進めたいと思っていれば、『レンガと木の交換』はAにとってやや損だけど交渉が成り立つ、ボーダーの交渉になっているのです。
状況を整理します。
ケース1 Aが建設しない状況なら
・ 木と羊の交換 は 等価交渉 (成立、相手はやりたい、こちらもやりたい)
・ 木とレンガの交換 は Aが損な交渉 (断られる)
ケース2 Aが交渉後、建設出来る状況なら
・ 木と羊の交換 は ボーダーの交渉 (成立、Aはやりたい)
・ 木とレンガの交換 は ボーダーの交渉 (成立、私はやりたい)
ここでケース2を見てみましょう。交渉の上では、木で羊もレンガも貰える可能性があります。でも、貰えるとしたら羊よりもレンガが良いですよね。レンガの方が基本的な価値が高いのですから当然です。
つまり、ここで最善手としてレンガを交渉で貰う事ができるか、次点手として少なくとも羊を貰う交渉を出来るか。ここが交渉の腕の見せどころとなります。
こういう場合、テクニックとしてはまず「レンガ出ませんか?」と相手に持ちかけるのが良いでしょう。レンガとの交換を相手が渋る場合は、羊との交換に切り替えますが、最初から羊を提示してしまうとおそらく相手は絶対にレンガは出しません。羊を出せば済む交渉にレンガを出すはずがないのです。だから、まず高い方を提示する。交渉の細かいテクニックですね。
但し、交渉には他のプレイヤーも絡んできます。レンガを出してもらうよう交渉している時に、隣のプレイヤーが「こちらは羊となら交換しますよ」と言ってきたら交渉を取られてしまう可能性もあります。
交渉は、行ったプレイヤー同士が得をする。だから交渉を繰り返した方が有利でしたね。交渉を横から取られると、自分がやや損するボーダーの交渉が成り立つよりもさらに損をしてしまいます。そうならないように他のプレイヤーの反応も伺いながら交渉を進める必要があります。この辺りは経験を積んでいただければと思います。
状況に応じた交渉の相場観の変化、簡単なものですがいかがでしたでしょうか。
この程度の知識を得るだけでも、カタンが各段に面白いゲームに感じられるでしょう。
次は実戦で、是非試してみて下さい。
本編は以上で終了ですが、この後ちょっとしたコラムも投下します。
そちらも読んでみて下さい。
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