ラノベを読み過ぎると勘違いしがち
目が覚めたら異世界で7歳の伯爵令嬢になっていた。
少しつり目だが将来美人になりそうな顔を見て、ラノベでありがちな乙女ゲームの悪役令嬢に転生したのだと思った。
だが成長するにつれ両親と妹に暴力をふるわれるようになり、ドアマットヒロインかもしれないという疑念も出て来た。
悪役令嬢なのかヒロインなのかわからないが、死刑は怖いのでとにかく自己研鑽だけは怠らないようにした。
そんな私が17歳になった頃、今まで仲が良かった筈の婚約者から妹への虐めを理由に突然婚約破棄をされた。冤罪からの婚約破棄、つまり私は悪役令嬢で決定である。
ショックを受けた体を装い自室へ戻ると、すぐさま脱出の支度にとりかかる。
「つい先日まで私のことを好きだって言ってたのに、この強制力! さすがゲームの世界! でも断罪される前に逃げ出せばいいのよね! そのために鍛えたんだから!」
念のため両親の不正の証拠と妹の淫売ぶりを書き認めたメモを懐へ入れ、自室の窓を開け庭木へ飛び移る。難なく地面へ降り立ち、使用人が使う裏口から外へ出て暫く進むと複数の視線を感じた。
今夜中に隣国まで逃げる算段だったが、とりあえず不穏な視線から逃れるため手近な邸宅への侵入を試みる。
その邸の塀は高かったが、死刑回避のために修験者並の修行をした自分には跳び箱三段分位の妨害にしかならないので、角を曲がってすぐに塀を駆け上がると敷地内へ忍び込んだ。
しかしその先で今度は殺気に囲まれた。
木立の陰から次々と現れる猟犬を躱すため木に登り、枝から枝へと伝ってゆく。
途中、猛獣用の罠や四方から飛来する矢があり、危うく落下しそうになりながらも屋敷のベランダへ辿りついた。
「何この家? 何で、ここまでの警備? うちの伯爵家がザルだっただけで、この世界ではこれが普通なの?」
「普通じゃないよ」
独り言に返ってきた返事に振り返ると、婚約者だった人物がにっこりと微笑んでいる。
「だからここまで辿りつく君の身体能力は普通じゃない。やっぱり君は私の伴侶に相応しい」
「は?」
「うちは代々影の一族なんだ。君の家が粛清されることが決まって焦ったけど、君が自発的に不正の証拠を持ってきてくれて良かったよ。内通者には温情が与えられるからね」
そう言って私の懐からメモを抜き取ると、婚約者は黒い笑顔を見せた。
「婚約は破棄したけど結婚はするから」
その笑顔に、私は転生しても悪役令嬢やヒロインになるとは限らないのだと悟った。
『サラリと読める短編です』というフレーズを書きたくて1,000字以内を目標に書きました。当初全然収まらなくてかなり削ってしまったので、意味不明な所があったら申し訳ありません。
ご高覧くださり、ありがとうございました。




