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墓守は今日もアンデッドと共にある  作者: ピーター
第3章 墓守リッカと恨みの源泉
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第89話 出発

 太陽が顔を出す頃。

 街の城壁に備え付けられている巨大な門の前、回りには眠い目をこすりながら外へ向かう旅人や、疲れた様子で街の中に入ってくる冒険者達の姿が見える。

 カルアもリッカも灰色の上下に黒いローブを身に着けている。リッカはショートソードを腰に差しており、陽の光も手伝ってか普段より幾分か凛々しく見える。


「ついに、出発するんですね、緊張しますわ」

「そんなに緊張するものでもないんですけどね」

「だって、こんな少人数で行くなんて……」


 カルアも背中側にリッカがプレゼントした、ナックルガード付きの大型ナイフのような刃物を2本身に着けている。武器を持てば背筋も伸び、凛々しく見える物だが、カルアは少し腰が引けている。遠征に行く事への心情がその立ち方に現れているようだ。

 そんな、不安そうにしているカルアの後ろでは、革の鎧を身につけた男性が2人。出発前の馬車の最終確認をしている。


「人数多い方だと思うけどな、旦那の前の前の遠征のときは、俺と2人だったぜ」

「スペックは幽霊だから、実質1人だったけどね」

「え、リッカさん独り旅だったんですか!?」

「そうですよ、それに前回は徒歩でしたし」


 新米墓守が先輩墓守に着いて、あちこちの村を巡り、道中に出現するアンデッドの対処を行っていくのだが、当然のこと新米がいるといないに関わらず遠征の仕事は回ってくる。


 カルアの父であるブラグ・コルフィが資材から豪華な馬車と、付き添いの人材を多数出してくれたが、そんな豪華な遠征などありえないため、カルド神父とゼロスト神父が必死に断ったが、娘可愛さで馬車は押し切られてしまったのだ。


「ま、馬車は楽だからありがたいんだけどね」

「カルア様、リッカさん、確認終わりました! いつでも行けます!」


 出発の準備は整ったようで、革鎧の1人が声をかけてくる。


「ありがとう、ジェロ。グアテもごくろうさま」

「はい! お気遣いありがとうございます!」

「いえ、仕事ですから」


 ハキハキと答えた明るい青年がジェロ、ボソッと答えたのがグアテ。2人とも馬や馬車の扱いに慣れており、実戦経験こそ少ないものの剣も学んでいる。

 ブラグ・コルフィが国のあちこちに行くときにお供をする専用の部隊から派遣されて、今回の遠征に付きそうことになった。


「はい、嬢ちゃんストーップ」

「はい?」

「嬢ちゃん、もう貴族じゃないんだぜ、『様』呼びされるのはだめさ」

「そうだね、教会所属だから役職で『様』で呼ばれる事もあるけど、基本的には皆と一緒だからね」

「あぁ、そうでしたわね」


 カルアはキリっとした表情をして、ジェロとグアテに視線を送る。


「様呼びは禁止します、カルアと呼び捨てにしなさい!」


 頭をかかえるリッカとスペック、ポカンとしたジェロとグアテに、堂々と言ってやったという顔をしているカルア。

 不思議な空気が辺りを包んでいた。


「えっとな嬢ちゃん、よく考えな、呼び捨てもやりにくいだろ」

「あー、何も呼び捨てでなくてもいいんですよ。ジェロさんもグアテさんも『さん』呼びでお願いしますね」

「え?」

「あと、嬢ちゃん、その命令口調もちょっとやめといてな」


 貴族としての習慣は抜けないのは仕方ない。

 元々、貴族としての立ち振る舞いをするように長年教育されたきた習慣は、いかに跳ねっ返りのカルアとしても少しずつ身に染みて来ていた。

 今も、貴族の屋敷からリッカの所に通ってきていることもあり、習慣を変えると言う事は容易ではない。


「ちょっと慣れないでしょうが、肩ひじ張らずでいいんですよ」

「わかりましたわ」

「そうそう、一度死んどくと、うまい具合に肩の力抜けるぜ」

「え、そ、それは嫌ですわ」


 馬車の前にいる黒毛と栗毛の2頭の馬がブルルと声をだす、朝も早くから待たされていることにいら立ちも感じ始めているのかもしれない。


「さ、行きましょうか」


 見た目よりもずっと重い墓守のローブを身に着けているにも関わらず、リッカはひらりと馬車に飛び乗る。

 眩しい朝日に照らされながら、リッカとカルア、そしてアンデッドでもある幽霊のスペックの遠征がはじまった。

ようやく復帰してこれました。


無理せずガンバリマス!


よければ評価などよろしくお願いします。

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