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墓守は今日もアンデッドと共にある  作者: ピーター
第2章 墓守リッカと初めての弟子
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第69話 学院に潜む者

バラン教授に連れられて、学院の奥へと向かって行く。

学院は広く、威厳を感じる建物だけでなく、芸術的な庭、騎士団が並ぶ事ができる程の広場も持っている。

そんな中、学院の隅の隅にある建物へリッカとカルアは導かれていた。

 細身で白髪交じり、仮面のような笑顔のバラン教授に案内されて、学院の中を進んでいく。

 メインの建物を通り過ぎ、広場を抜け、学院の端にある研究室まで行く。


「えっと、バランさんでしたっけ? どこまで行くんですの?」

「墓守さん達とらえた魔素というのは、恐らく私の研究関係ですから……」


 張り付けた笑顔のまま、カツカツとバランは歩いて行く。


「バラン教授は何を研究されているのですか?」

「私はアンデッド化という現象、魔素の性質変化を研究しています。アンデッドの研究している以上、不気味な物も収集してますから」


 学院の端にある研究室はボロボロの木造の小屋になっていた。

 すぐ隣には石造りで地下に続く階段が目に入る。小屋も階段も雑草に埋もれるかのように存在しており、不気味な雰囲気になっている。


「カルアさん、識別の水晶で感じたのはそこですか?」

「そこまでは……学院の隅の方だったので、近いのかもしれません」


 先を歩くバラン教授に聞こえないように小声で話しながら、リッカとカルアは歩いて行く。

 リッカは周辺の魔素を探りながら歩くが、特に違和感もなく自然にある魔素しか感じ取る事ができない。

 識別の水晶を使ったカルアの感覚も頼りだが、明確な場所の特定にも至っていない。


「歩かせてしまってすみませんね、汚い所ですがこちらへ」


 雑草に埋もれている階段に向かってバラン教授が指を指している。

 カルアは眉間にしわを寄せ、口をへの字に曲げて、不快感を全力で表現している。


「研究の対象がアンデッドという都合で、嫌われ者なんです。奥はキレイですから」

「し、仕方ありませんわ」


 石の階段を降りて行くと、天井まで石で作られた通路が伸びている。

 壁には所々に淡い光を放つ石が埋め込まれており、ランプや松明が無くとも周りを見る事ができるほどの明るさを保っている。


「ここです」


 通路はまだ奥に伸びているが、その途中にある錆びた鉄扉の前で足を止める。

 鈍く金属が擦れる音を辺りに響かせながら、バランは扉を開いていくと、その奥には天井を埋め尽くすほどの沢山の光を放つ石で昼のように明るく広い部屋が広がっていた。


「わ、まぶしい!」

「明るいですわ」

「昼も夜も研究できるように、光石を敷き詰めているんです」


 広い部屋の隅には沢山の棚が並べられ、部屋の中にはいくつもの机が置かれている。奥には倉庫や別室もあるのだろうか、木製のドアも見える。

 見たことも無い不気味な色の石で作られた石像や、沢山の魔石なども無造作に置かれているほどだ。実験器具なのだろうか、ガラス瓶や鉄の器具なども多数並べられており、物品1つ1つが研究室という事を主張してくる。

 辺りを見回していたリッカは棚の方に違和感のある魔素を感じ取る。


「私の研究はですね……」

「カルアさん、話聞いておいてください。バラン教授すみません、教会の命令なので色々と開けさせてもらいますね」

「はい構いませんよ、危ない物だけはお声かけしますから」


 バラン教授の研究は人間が死んだ後、なぜアンデッドとしてよみがえってくる事があるかに焦点が当たっている。

 全ての生命がアンデッド化するわけではなく、人間だけがアンデッド化する確率が突出している。アンデッドになる理由も明確になっておらず、ピグマンなどの他の種族と比べて人間がアンデッド化しやすい理由も分からないままだ。

 だが、ここを研究しようにも、アンデッドを意図的に作り出したり、生きている者へ危害を加えるように誘導することは死霊術と呼ばれて禁忌とされている。


「ずいぶん、堂々と調査させてくれるんですね」

「もちろん! 私は禁忌には手を出していませんからね、呪いの物品などと呼ばれる幽霊の媒体も集めていますが、それも墓守さん達が魔素を払った後の物ばかりです。まだ物品を媒体にするアンデッドの構造や媒体に選ばれる物の性質も解明されていませんからね」


 饒舌じょうぜつにハキハキと答えるバラン教授。姿勢もピシッと伸ばしたまま、唇だけが高速で動いてカルアに次々と研究の事を語っていく。

 その姿にカミュの事を重ねながら、ただただ頷いてカルアは話を聞いている間。リッカは引き出しや戸棚を遠慮することなく開けて調べて行く。

 本当はこんなことはしたくないのだが、こういった場所の調査をするときに戸惑っていては進まない。


「この辺に妙な感じが……」

「……だ……だ」


 紫や青などに淡い光を放つ魔石や、ゴーレムに使うような金属のコードなどに混ざって微かな声が聞こえてくる。

 魔石にあたりをつけたリッカは次々と魔石を手に取っては魔素の波長を合わせて行く。時々、声のような物が聞こえたりしているので、この辺りに何かいるのは間違いない。

 棚をあさるリッカを見ながら、張り付けたような笑顔でバラン教授は物品の説明もしてくれる。


「ああ、その辺りは最近雇った者達が集めて来たものだね、どこから持ってきたのか魔石が組み込まれた物品が多いのだよ」


 自分が潔白であるという絶対の自信からなのか、得意そうに話をするバランの指に何か光る物が見える。気になったカルアはそれに視線を向けて尋ねてみた。


「え? バラン教授その手の指輪は?」

「ああ、この指輪もそうなんですよ、調べてみたら魔術がかかっているようでね」


 バラン教授が片手の人差し指から小指まで4つの紫に淡い光を放つ指輪を見せてくる。カルアは見覚えがある。

 街中にばら撒かれていた、魔素を集め、持ち主に悪魔が天使に見えるという狂信の魔術がかけられていた不気味な指輪にそっくりだ。

 

「だん……」


 リッカが手にした魔石から慣れた魔素を感じとり、目を閉じて魔素を探っているので、カルアとバラン教授のやりとりに気が付かない。

 カルアが両手を上げて、拳を作りながらバランから離れ、机の間のスペースが広い場所へ少しずつ体を進めて行く。バランはカルアから指輪を見えやすいように直立で片手だけ上げたまま、張り付けたような笑顔を見せている。


「どうしました? この指輪に興味があるのでは?」

「ちょっと心当たりがありまして……」


 カルアとバラン教授の間に緊迫した空気が流れる。

 バラン教授の指輪がキラリと光った瞬間、リッカが手に持っていた魔石から叫ぶような声が聞こえてくる。


「だんな! そいつあぶねぇ!!」

「え? スペック!?」


 その言葉と同時にカルアの体が吹き飛ばされるように宙を舞い、鈍い音と共に棚に叩きつけらる。


「テンし様が、見エるのでスよ」


 カルアのいた方へ手をかざし、直立した姿勢のまま首だけが真後ろを向く。

 バラン教授の目がリッカを捉えていた。

追加更新までは出来ませんでした。申し訳ない。


引っ越しなどの作業、今日まで段ボールデスクです!

次の執筆からは、ちゃんとした机に行ける!!

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