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墓守は今日もアンデッドと共にある  作者: ピーター
第2章 墓守リッカと初めての弟子
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第49話 新たな不安

カミュの分析結果がカルド神父の元へと届けられた。

 教会の会議室、目の前にはカルド神父が座っており、リッカのとなりにはカルアも座っている。3人が囲むテーブルには報告書と飾り気が全くないタイトルと、カミュ・カイルゼのサインが入った紙の束が置かれている。


「カミュの奴、貴重な紙をこんなに……」

「なんでも、開発が忙しくて直接来れないからって、今朝見たこともない巨大なゴーレムが届けに来たよ」

「天才には変人が多いって言いますけど、いくらなんでも常識破り過ぎです」

「カルアさんの言う通りですね」

「リッカ君さ、カミュ君に言っといてね、フルプレートアーマーが1人で歩くのは恐怖だからやめてねって、今日にでもね」

「二度とやるなと厳重に言っときます」


 明け方の街を一般人が見上げる程の大きさの鎧が金属をこすれる音と足音を響かせながら歩くのは恐怖だ、最近は悪魔の出現などの大きなトラブルも続いたので、襲撃と勘違いされ仮眠していた警備の人間まで叩き起こして総動員になったらしい。

 これだけのトラブルに繋がっておきながら、厳重注意をしたところで気にも止めないのがカミュ・カイルゼという人間だ。リッカは喉元まで言っても無駄と言葉が上がってきた所に、カルド神父が内容を話し出す。


「それで中身なんだけどね」


 カルド神父は報告書の中をすでに見ており、真剣な表情でその中身と今後の事を語り始めた。

 魔術研究所で分析したこの魔石は魔素を周辺に留まらせる作用があるという、製造時期は最近の物だったらしい。

 女の幽霊が数年も屋外で、しかも橋の周辺という魔素が散りやすい場所だったにも関わらず何年も佇んでいた理由は、橋そのものに似たような魔石がいくつも使われていたという。


「カミュは、橋まで行って調べたのか」

「橋と言っても街中の水路にかかっているような小さい物ですよ、そんな所に魔石?」

「うん、元々建設の時に魔石が使われて、最近になって追加で魔石が置かれたみたい」

「これまでは、気が付かないくらい薄い濃度で幽霊がいて、置かれた魔石でハッキリ出てきたんですね」


 橋が作られたのは数十年も前の事になる。建設に魔石を使うという事は一般的ではなく、魔素を集めると言う事はそれだけアンデッドが出現しやすくなる。

 魔素を散らす機構を入れるならともかく、毎日多数の人が行きかう橋に魔素を集める機能を付ける必要はどこにもない。

 リッカは報告書から現地調査の項目を探して目を通していく。


「橋の建設、つまり中には魔素を集める機構があるんですね、なんのために?」

「う~ん、それが分かんないんだよね、大きな川にかかる橋ならともかく、生活用水の水路の小さい橋だから細かい記録も残ってないし」

「カルアさん、コルフィ家に何かありませんか?」

「我が家では土地の管理なので、水路の管理は管轄の外です。道の管轄から橋を探っても建設資料なんかでてきませんよ」


 結局の所、これ以上の事は現時点では分からない。


「もしかしたら、ずっとずっと前から悪だくみしている団体がいるのかもね?」

「怖い事言わないで下さいよ」

「土地も水路も道もそれぞれに管轄する貴族家があります。その全ての目を盗んでということは相当ですよ」

「ああ、ごめんね、この件は調べておくね、他の橋とか建物も見てみるよ、じゃあ今日は解散だね」


 カルド神父がパンパンと手を慣らして、今日の話はおしまいと合図を出しながら立ち上がり退出する。

 リッカとカルアは教会から出て、青空の下を歩きはじめるが街を行く人々達は大げさと言える程距離をあけながらすれ違っていく。


「やっぱり、慣れません」

「まぁ、気にしない事です。それよりカルアさん、あと5日後から修行期間ですよ練習してます?」

「え? なんですかそれ?」

「聞いてないんですか? もしかしてカルド神父、説明忘れてるんじゃ……」


 本当にカルアは何も聞いていないようで、首を傾げたままでいる。

 リッカはふっと溜息をついてから、右の手のひらを上に向けて、手の上に魔素を集めて球体を作る。もちろん街の人達にはこの魔素のボールは見えていない。


「教会は定期的に禁欲期間を設けているのは知っていますね。墓守は禁欲に加えて、これを1日中出しっぱなしにして、法術の技量向上をするんです」


 カルアも右の手のひらを上に向けて魔素を集めると、リッカよりも大きくて歪んだ球体を魔素が形作っていく。


「形状はそれでいいです、でもその大きさだと半日で法術の限界超えて酔っちゃいますよ」

「初めてやりましたけど、難しいですねこれ」

「それだけできれば上等ですよ、明日からちょっと練習しておきましょう。今日は帰って寝ましょうか」

「そうですね」


 街の雑踏も墓守の周りだけは誰も近づかない。人達に好かれなくても、アンデッド達と語り生者への害を減らすのも墓守の役割。

 人々に嫌われる街の守り手は安息の我が家へと帰っていく。

追加更新できるように頑張ります!


令和3年5月18日

 すみません、首を痛めましてパソコンに長時間向かうことが難しく、追加更新が難しくなりました。

 また金曜日には更新できるよう頑張ります。

 申し訳ない、体調管理は感染症予防などだけでは無かったですね。反省しております。

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