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墓守は今日もアンデッドと共にある  作者: ピーター
第1章 墓守リッカと悪魔の指輪
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第34回 偽りの天使

悪魔を崇拝する教会との戦いが始まった。

人間の肉体に悪魔は宿り、悪魔は人々に害を与えるのだ。

 悪魔に吹き飛ばされたリッカが立ち上がると、モーラ神父と墓守達がゼロスト達と対峙している光景が目の前に広がっている。


「リッカ君大丈夫!?」

「カルド神父危ない!」


 モーラ神父の周りの墓守達は室内だと言うのに魔術媒体から火球を打ち出してきているが、それがこっちにも飛んできている。

 リッカは懐からナイフを抜くと、目を細めながら火球に狙いを定めて振り下ろすように振るう。火球が消し飛ばされて、火の粉になって辺りに散るが、リッカの目の前にはナイフを突き立てようとする相手の墓守が迫っていた。


「な!?」


 ためらいもなくリッカの胸にナイフが突き立てられるが、金属が擦れるような音を立てながらナイフはそれてローブを切り裂いていく。


「フン!!」


 リッカはナイフの柄で相手の顔を殴りつけて、左手で魔法媒体を取り出す。

 火の魔法媒体ではない、カミュからもらった衝撃を打ち出す方の媒体に魔素を流し込んで思いっきり打ち出す。

 顔面に魔術が叩きこまれ、天井を仰ぐようにしながら仰向けに倒れ、重い物を床に落としたような鈍い音を辺りに響かせる。


「リッカ君、丈夫だねぇ」

「そんな事言ってる場合ですか!」


 衝撃で相手のフードが脱げて顔が見えるが、その顔は人間のそれではなかった。

 真っ黒に塗りつぶされた目は、えぐられたように落ち込んでおり、顔色も青痣のような青黒い色にそめられている。リッカに顔を殴られて魔法を撃ち込まれたのだから、人間であれば世界が歪んで立ち上がれないはず。


「リッカ君! 悪魔付きだよ!」


 悪魔付きと呼ばれた墓守は、猫のように勢いよく体を捻ると、弾かれたようにリッカに向かって飛びかかってきた。その手にはナイフが手放されずに残っており、勢いに任せて振り下ろしてくる。

 横に一歩、体をずらすようにしてナイフをかわし、もう一度魔術の衝撃をその顔に打ち込む。


「ごめんなさい!」


 リッカはナイフを悪魔付きの足に突き刺して、体内の魔素を一気に散らす。

 反対の手の魔法媒体は懐にしまい、代わりにローブから清めの酒を取り出す。


「うぎゃぁぁ!!」


 絶叫とともに背中から青白い肌と真っ黒な目をした悪魔が頭をかきむしり、苦しみながら姿を現す。悪魔付きと呼ばれた墓守の顔は人間の物に変わり、鼻と口から血を流しながら床に倒れて行く。

 苦しんでいる悪魔の顔にナイフを突き立て、その上に清めの酒を瓶ごと叩きつける。

 バリンと音を立てて、酒が悪魔を濡らしていく。


「カルド神父!」

「はいよ!」


 カルド神父が駆け寄ってきて、リッカと一緒に法術で悪魔の体の中の魔素を引きずり出す。

 ビチビチと体をねじらせながら、魔素を煙のようにあげながら悪魔の体が溶けるように消えていく。


「よし!」

「リッカ君次!」


 ゼロストの所には悪魔付きとなった墓守が3人がかりで飛びかかっているが、魔術もナイフを剛腕で弾かれて、ハエを叩き落すかのように次々と殴りつけられて床に転がされていく。

 護衛達は手慣れた様子でロープを取り出して、床で苦しむ悪魔付き達を縛り上げて行く。


「って終わってたね」

「そうですね」


 縛り上げられた悪魔付き達は護衛達によって悪魔を引きずり出され、それぞれリッカ達がやったのと同じように清めの酒と法術の組み合わせで、溶けるように消し去られている。


「ほう、リッカードとやら、あの魔術を食らっておきながらその動きとは、やりおるな」

「ありがとうございます」

「さて、モーラよ、言い逃れはできんぞ」

 

 ゼロストがモーラ神父に鋭い視線を向ける。


「なんということを! 私たちの天使様をよくも!」


 モーラ神父が両手を掲げると10本の指にはめられた指輪が不気味に輝く。


「リッカ君、あれ!」

「はい!」


 リッカが魔術媒体を構えて、集中して打ち出す。火球ではなく悪魔が扱う衝撃を打ち出す魔術。リッカが狙ったのはモーラ神父の手、全力とも言える魔素を込めた衝撃の球体は狙い定めた通りの場所に当たる。

 パンと乾いた音がなると、モーラ神父の左手が紙を握りつぶしたかのような形に変わる。指の骨のいくつかは折れて、関節も外れただろう。後味の悪さを振り払うようにして右手に向かっても同じように打ち出す。


「あああ!! て、天使さまぁぁ!!」


 右手も同じように手の骨を砕き指の関節を外す。

 砕けた手、あまりの激痛に動かせないはずだが、モーラ神父はその両手を祈るように組み合わせて握りしめる。

 両手が見えなくなるほどの濃い黒い魔素がモーラ神父の手にまとわりつく。

 ゼロストがモーラに走り寄り、勢いを殺さぬまま剛腕を繰り出すが、モーラ神父に触れるか触れないかの所でゴムでも殴ったかのように手が弾かれる。


「私の痛みなど、天使様、私の体をお使いくださいぃぃ!!」


 モーラの白と黒い瞳という人間の目が黒く落ち込んだ悪魔の目に変わる。血がかよった人間の肌が、青黒い色に変わる、モーラという人間が悪魔に変わっていく。


「テんし様ぁぁ!」


 モーラという人間が悪魔に変わる。

 体つきだけで考えれば、大柄で筋肉質なゼロストを押し返せるはずがない、身長こそ高いものの細身な体に人間ではありえない力が集まっていく。

 天使ではない、悪魔に体を売り渡す人間。だが、それを行う人間は悪魔ではなく、天使に命と肉体を捧げると思い込んでいるのだ。

今週はもうちょっと頑張って、投稿します。

追加投稿もできるように頑張ります!

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