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墓守は今日もアンデッドと共にある  作者: ピーター
第1章 墓守リッカと悪魔の指輪
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第28話 準備

たまたま、仕事が平和に片付いているリッカとスペック、悪魔の詳細調査に乗り出すまでにあと数日。

 墓守はまだ人々が眠る、間もなく朝焼けに染まるであろう街を歩いて家へ向かう。

 灰色の上下に黒のローブといういつもの装いだが、大きく乱れたり、汚れがついたりという事もなくキレイな状態を保っている。


「だんな、今日は何にもでなかったね」

「楽だったけど、珍しいよね」


 普段ならゾンビの1~2体と幽霊の1体くらいは出てくるが、今日は気配こそあるものの出てくるリッカとスペックの目ではアンデッドを見つけられなかった。


「あんまり疲れなかったから、家でご飯にしようかな」

「飲んで帰らないの? いつもの店ならまだやってるよ」

「明後日に悪魔が出たとこの管理してたモーラ神父の教会に行くからね、お酒は控えとかないと」


 言葉の端には悔しそうな感情が滲んでいる。教会のクーラの治療を受けてから、お酒を飲まないように強く言われてしまった上に、スペックが見張っていたので、一滴も飲んでいない。

 昨日はクーラから完治のお墨付きをもらい、お酒が飲めるとワクワクしていたところに、カルド神父からは2日間以上酒を飲まないで、万全の体勢で来いと強く言われた上に命令書にも禁酒と明記されてしまった。


「体調じゃなくて、仕事の都合で飲めなくなったからね、ご飯だけ食べて帰るなんてできない、絶対お酒注文しちゃうよ」

「たまには禁酒も必要だぜ」

「ここんとこずっと禁酒だから、解禁させてほしい」


 街が朝焼けに包まれる頃に自宅に着く、墓守の家は一軒家だが、それほど大きくは無い。玄関には大きめの郵便受があり、ここに仕事の依頼や相談の依頼札、教会からの手紙が届けられる。

 手紙に使われる紙は値段が高いため、大体は札に概要を書いた物が入れられている事が多い。スペックがいつも確認してテーブルに持ってきてくれるが、幽霊が見えない人達からすると、手紙が勝手にドアを開けて家に入っていく不気味な光景に見えるだろう。


「だんな~! ゴーレム博士からの手紙入ってたぜ!」

「え? だれ? あぁカミュの事か、珍しい事するなぁ」


 リッカが手紙に目を通していくが、ちょっとした事でも長々と語るカミュの悪い癖は手紙でも出るようで、長々と書かれている。さっと目を通して、要点だけを読み取る。


「なんて書いてあったの?」

「廃材で面白い防具作ったからくれるって、後はスペックに用件」

「俺に?」

「魔素で動くゴーレムに入ってみないかって、報酬もつけるってさ」

「おお! ゴーレムを操作できる! やってみたい!」

 

 手紙から目をそらしていないが、表情はどんどんと曇り、苦虫をかみつぶしたような渋い表情に変わっていく。ゴーレムが好きなスペックとは正反対の様子だ。


「文面からだけど、魔素を消費するゴーレムだから、スペック燃料になっちゃうんじゃない? あと、封印石使ってるから出てこれないかもよ」

「えぇ~、それなら、やめときたいなぁ~」

「カミュの発明は基本的にどこか危ないから、防具があるって話だからそれは受け取りに行こうか」


 墓守の装備は灰色の上下と黒のローブ、後は個人個人によって装備を変えて用意する。街中で過ごす事が多く、アンデッドが出たとなれば個人のお宅の中や、下水などの設備などにも入っていく事になるため、重い装備は身につけられない。

 同じ服装で埋葬などにも立ち会う事があるので、金属の腕輪やパーツが少しついているくらいならいいが、出来るだけ目立たないようにする必要がある。


「最近、怪我すること多かったからね」

「悪魔に吹っ飛ばされるわ、アンデッドの大群に襲われるわ、怪我ばっかりだからな」

「これでも、ローブに金属入れて、ショートソード持つようにしたんだよ」


 ローブを脱いで雑に椅子に掛けると、ガチャンと金属の音が聞こえてくる。あちこちに金属のパーツや金属を糸のようにして仕込むなどしているので、見た目よりも防御力は高く丈夫に作られている。

 ショートソードのベルトも外してから、ローブにポケットに入っている清めの酒の瓶などを取り出して、中身の入った物と入れ替えていく。


「常に身につけられる装備の工夫と手入れは怠けてないよ」

「だんな、それは冒険者の基本だぜ」

「墓守なんだけどね」


 ショートソードを鞘から抜くと、布を取り出してきて汚れをぬぐっていく。リッカの使っている物は柄まで繋がっているので、刃と柄の間の細かい所までキレイに仕上げる。

 ショートソードを鞘にしまうと、台所に立って食事の用意を始める。


「丁寧だね」

「一応人前に出るし、お偉いさん含めて色々な人が来るから見栄えを良くしとかないとね」


 スペックが半端になっている清めの酒の瓶片付けて、届いていた札を棚の未解決や不要などと書かれた箱に入れてながら声をかけてくる。普段の手入れは簡略に済ませているから丁寧にやっている様子が気になったらしい。

 話ながら残り野菜と乾いて割れた干し肉で簡単にスープを作ると、買い置きのパンを主食にして簡単な朝食をすませる。


「じゃ、仮眠してくるから」

「はいよ~」


 傷も癒えて、疲労も残っていない。悪魔が出た事の原因を探り、解決するための用意は着々と進んでいる。


 あけまして、おめでとうございます。

 本年もよろしくお願いいたします。


 マイペースで、エタらず、楽しく、嬉しく進めて行きます。

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[気になる点] 「廃材で面白い防具作ったからくれるって、後はスペックに要件」 要件:重要な用事。 用件: なすべき仕事や伝えるべき事柄の内容。また単に、用事。 誤字とまでは行きませんが、文脈からすると…
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