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マクスは今日も馬車を走らせている。
昨日よりも揺れも少なく快調に進む馬車。
荷台に乗っている三人娘はすっかり打ち解けていた。
「え、ロダって私達よりも年下なの? 」
「そうですぅ。15歳ですぅ」
「そうなのか、ずいぶん大人っぽく見えるぞ」
「そうですぅ? 」
ロダが首を傾げる。
その緩い感じが、逆に落ち着きを感じさせ
それになにかしらフェロモンが出ている気がする。
さぞや男泣かせの女になるだろうなとリースは思う。
リースはずっと魔法に明け暮れていた。
異性がどうのなんて事は考える暇などなく、ただひたすらに修行の日々
リースはそれが嫌だとかは思ったことなどなかったが、
ただこうして色気のある年下を見てしまうと、
自分ももう少しおしゃれとかに気を使った方がいいのかな?
と思ってしまうくらいには乙女であった。
とは言え今は魔王討伐の途中である。
そんな事は考えても仕方がないと分かってはいても妄想は膨らむ。
魔王を倒してパラッツに帰れば
きっと私に言い寄って来る男がたくさんいるはずだ
「私とデートしてくれないか? 」
「そんな男よりも私と湖まで」
「いやいや私とパンケーキを食べに行こう」
リースの頭の中で男をとっかえひっかえしているその時
ドカーンと大きな音がした。
「何? どうしたのマクス?」
慌ててリースが聞く
「着いたにゃ」
「何だ? 敵か? 」
ピアが辺りを見回す
「敵にゃ」
「着いたのですぅ? 」
ロダが荷台から降りる
「着いたにゃ」
馬車から降りてみると辺りにはほとんど何もなかった。
「キラースって結構こぢんまりとしているのね」
パラッツしか知らないリースにとって、そこは初めて訪れる場所。
元を知らなければそんな印象をもってしまうかもしれないが、実際は違う。
勇者の魔法、先制攻撃でそこに在った物が殆ど吹っ飛んでしまっていたのだ。
魔王軍は一体何が起こったのかまだ把握出来ていなかった。
轟音とともに目の前は土煙でまったく見えなくなっていたからだ。
そんな中、真っ先に飛び出してきたのはパリモリである。
屋上でふて寝していると、いきなりの轟音。
何事かと飛び起き、辺りを見回せば、目の前の景色が一変していた。
何故か全てが吹っ飛び平野になっていたのである。
これは尋常ではないと判断したパリモリは部下にすぐさま指示を出す。
「これだけの規模を考えれば勇者か? 」
また自爆したのかそう思って真っ先に爆心地へ飛んだ。
この時のパリモリは戦いに飢えていたし、寝起きだったとういうのは
いい訳には苦しいかもしれないが、その判断は間違っていた。
到着した途端、パリモリは倒れる。
自分に何が起こったのか理解出来ず、急に世界がゆっくりになる。
そして徐々に薄れていく意識の中で声が聞こえた。
「にゃ」