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魔王軍幹部パリモリはイライラしていた。
手にしていたフォークをテーブルに突き刺す。
人間界へ先遣隊として出ることにしたのは強い奴と戦えると思ったからである。
パリモリは強い奴と戦うことに全てを賭けてきた。
そんなパリモリの事を魔王様も理解して出してくれたというのに
「なのに、なんだこの状況は!
期待外れも甚だしい。
あまりにも簡単に占領が済んでしまうではないか。
こんな事が許されるのか、糞。
それになんだ、人間とはこんなにも弱い生き物なのか。
魔界ではこんな奴らとっくに死んでいる。
どうしてこんな奴らがこんなにも多くの資源を貪っているのだ」
パリモリは魔界での暮らしを思い出す。
魔界は力が全ての世界だった。
毎日が戦いの日々で、どうやって生き残るかだけを考えて生きていた。
弱い者が簡単に死んで行き、強者だけが生き残る世界。
単純で分かりやすい世界の掟である
それはパリモリにとってはありがたかった。
力だけを求め、魔王軍幹部にまでなった彼にとって
人間界は退屈だった。
「くだらないな、人間界は」
そう独り言ちた。
そんなパリモリの元へ部下が走ってくる
「パリモリ様、勇者が乗り込んできました」
その言葉にパリモリは気分を取り戻す。
「ほう、勇者か。すぐに行く」
パリモリは食事をやめてすぐに勇者が来ている場所へと急ぐ。
先代魔王を倒したと言われている勇者
一体どんなものか気は早る
強い相手と戦える事を期待をしていってみれば
「パリモリ様、遅かったですね」
そこでは部下のハーフォンが戦っていた。
「こいつらが勇者って奴らしいですよ」
何人か部下が倒れていた。
それを見て少し期待してしまうが
戦っているハーフォンは明らかに余裕だ
向こうは四人、こっちは一人
この状況下でハーフォンが余裕をもって戦っているのである。
パリモリは一気に興味が失せる。
「糞、何なんだこいつらは。強すぎる」
「愚痴は良いから早く回復を」
「勇者耐えて」
仲間の声も空しく勇者の首が飛ぶ
「嘘!」
「どうしてこんなことに」
「糞ー!」
向かってくる相手を簡単に伐り刻むハーフォン
「パリモリ様こいつら弱すぎますよ。勇者なんて屁でもねぇ」
余裕を見せるハーフォン。
「糞! 最後くらいは」
そう言ってハーフォンに飛びつくと自爆した。
「パリモリ様! 」
部下が前に出てパリモリを守る。
爆発の煙が晴れていき、辺りを見渡せば
周りにいた幾人かの部下とハーフォンが消し炭になっていた。
「ほう、やるではないか」
勇者たちの取った行動に賛辞を贈る。
とは言え、もう戦う相手はおらず、ただ部下が死んだだけだった。
実につまらない最後だ
「それにしても、勇者なのに自爆するんだな
これには気をつけるべきか……
とはいえ勇者が死んでしまったのなら、もう何もすることはないな
さてどうしたものか」
パリモリは後悔し始めていた、先遣隊になった事を。