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マクスが手綱を握った馬車が走る事、数時間。
荷台ではかしましさなど全く感じさせない三人の娘たちが
口からはエクトプラズマが出ている。
ここまで順調に走っていた馬車が急に止まる
「どうしたのマクス? 何かあった? 」
リースの問いかけに親指で出ろと合図するマクス
「敵か? 」
ピアは辺りを見回し
「着いたのですぅ? 」
ロダが荷台から降りる
「今日はここで野宿だにゃ、飯の準備をするにゃ」
マクスはそう言うとテキパキと支度を始めた。
カンカンカンと音を鳴らし、まずはかまどを作り出す。
魔法で火をつけると、鍋を取り出す。
食材をトントンと切り、鍋に入れていく。
三人娘は料理なんて作ったことがなく
手伝うにしても、一体何をすればいいのかがわからない
気持ちだけが空回りしていた。
やがて、手持ち無沙汰の三人娘の鼻孔をくすぐる匂いがしてくる。
「出来たにゃ。みんなで食べるにゃ」
そう言って三人に渡される本日のメニューは
チーズリゾットにトマトのスープ、温野菜とチキンのソテー
出来上がった料理を一口含めば
口の中に幸せが押し寄せ
三人娘は声をそろえて言った「おいしい」と。
まさかこんな所でこんな物が食べれるとは思ってもみなかった三人娘は
ムシャムシャと搔き込む。
食事は栄養さえとれれば良いと習っていたので、覚悟はしていたが
まさか、こんなにおいしい料理を食べる事が出来るとは。
「マクス、すごくおいしいわ。あなた何処で料理を? 」
「料理は料理長に習ったにゃ。
師匠が食事は大事だって言うから教わりに行ったにゃ
料理長がとてもいい人で、いろんな料理を教えてくれたにゃ
この料理道具も料理長が貰ってくれってくれたにゃ」
料理道具を見せられても、三人には良し悪しなんて分かるはずもない。
「ほう、その料理長というのは何処のお店の人なんだ。さぞ腕利きなのだろうな」
「パシューだにゃ」
「パシュー? パシューってあのパシュー? あの三ツ星店の? 」
リースは食べる手を止めた。
「よくは知らないにゃ。パラッツで一番おいしい店を紹介してもらったにゃ」
「ということは私たちは今、あの滅多に予約の取れない、王室御用達の店の味を味わっているのか」
「そ、そうよ。まさかこんなところで食べれるなんて修行をがんばってきてよかったわ」
「あのぅ、おかわりよろしいですぅ? 」
会話には参加せずに黙々と食べていたロダがおかわりを要求する。
「いいにゃ。いっぱい食べるにゃ。食事は大切にゃ」
マクスはロダの器におかわりをよそう
「ちょっとあんたいつの間に。」
「わ、私もいいだろうか?」
それを見てピアもすかさず声を上げる。
「わかったにゃ」
「ちょっと、私の分も残しておきなさいよ」
リースも二人に負けないように搔き込む。
成長期の三人娘は腹が減る。
三人娘たちの初めての食事はとても満足の行くものになった。
そして食事が終われば、後は寝るだけだ。
三人は荷台で横になる。
マクスは焚火の番をしている。
「勇者ってこういう能力もいるんだな。私には無理だ」
「そうね。私もあれは無理だわ」
「私もですぅ」
三人娘は食事という共通点で会話することに成功する
「明日は何を食べられるんだろうな」
三人は明日の食事に期待しながらその日は眠りについた。