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王宮を出た勇者パーティーはさっそく馬車に乗り込み、
キラースを目指して出発していた。
キラースは今、魔王軍幹部パリモリに占拠されている。
逃げて来た住民から聞いた情報だ。
キラースが魔王軍によって占拠されるまではあっと言う間だったらしい。
それ程までに魔王軍は圧倒的で、キラース軍は相手にもならなかったという。
そんな状況の中で逃げてこれたのもまったくの偶然ではなく
パリモリがわざわざ逃げさせたらしい。
魔王軍の強さを、自身の強さを人間達に知らしめる為に。
「あいつらに勝てる人間なんていない」
逃げてきた住民はみな恐怖に震え、泣きながらそう訴えていた。
だからこそ急がなくてはいけない。
荷台では三人の娘たちが自己紹介を始めた。
「どうも、私は魔法使いのリースよ。よろしくね」
「私は弓使いピアだ。こちらこそよろしく」
横に座っていたリースと握手を交わすピア。
「私は聖職者のロダですぅ。みなさん、よろしくお願いしますぅ」
ゆっくりとした口調でロダが挨拶をした。
このパーティーメンバーは今日が初めての顔合わせだ。
それぞれの専門機関での訓練を受けた強者達ではあるのだが、
他の職種とはまったく関わり合いが無いため、三人は互いを観察する。
リースは小さめのマントに厳つめの杖を持っている。
髪はクセ毛でボブ
ノースリーブのタートルネックにショートパンツを合わしている。
ピアは体のラインがよく分かる黒のボディースーツを纏い
髪は一つに束ねている
ロダは魔力の量が多い者の特徴である銀髪
聖職者特有のエプロンをつけている
みな、それぞれの首席なので、力量は間違いないはずではあるが
コミュニケーション能力には問題があった。
どうやって人と接すればいいのかが分からない。
自己紹介が終わってから続く沈黙。
重たい空気が流れ
ガタガタガタガタと車輪の音がする。
「何を話していいか分からない」
それが三人の心境である
「誰かキラースについて知っている事はある? 」
リースが意を決して聞いてみるが
「すまない。私は知らないな」
ピアは即答。
「私もぅ、知りませんぅ」
ロダがワンテンポ遅れて答えた。
そして再びの沈黙。
結果、
リースは杖を磨き始め、
ピアは弓の手入れをし始め、
ロダは聖典を読みだす。
三人は話すことを諦めた。