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「うむ。我がパラッツの国王、シーマである」
シーマが名乗りを上げる。
齢70を超えても声から生気が満ち溢れ、
その佇まいからも老いを感じさせない。
ただ、何故名乗りを上げたかは謎である。
玉座の前には
勇者マクス、魔法使いリース、聖職者ロダ、弓使いピア
の勇者パーティーが横一列に並んでいた。
シーマは蓄えられた髭を撫でながら目を細める。
勇者達を見る目は眼光鋭く、威圧感さえある。
王はその目で品定めをする。
ここパラッツでは魔王に対抗する為、勇者パーティーを育成している。
それは、このパラッツの初代国王が勇者なのに由来する。
今後、必ず魔王がまた攻めて来る事を予見していた初代国王は
能力のある者を少しでも多く育てておくことにしたのだ。
それぞれの役職に合わせた学校があり、そこで教育を受ける。
そうする事によってパラッツは戦力ではトップクラスとなった。
そうして、今現在の最高戦力を集めたのがこのパーティーである。
「それにしても、今回のパーティーは勇者以外みな女か」
それが、シーマが勇者パーティーを見ての初めての感想である。
シーマはそんな事を考えながら、力強い目で女性陣の胸を見ていた。
「よく育っておる。勇者、うらやましいな。毎日ウハウハじゃん」
国王が何を考えているのかを見取った宰相が代わりに述べる。
「この場に居る君達が今回の勇者パーティーだ。
是非とも魔王討伐を成し遂げてきてくれ、頼んだぞ! 」
そうして勇者パーティーは、魔王討伐の為、旅立ったのだった。
「それにしても今回のパーティは大丈夫なのか? 」
勇者パーティーを見送ったシーマは、王冠を外すとさっそく疑問をぶつけた。
「もちろんですよ、国王。我が国が誇る最高戦力なのですから」
宰相はそう言うが、シーマには気なる事があった。
確かに能力値は申し分ない、勇者に至っては破格だ。
おそらく歴代で最強と言ってもいいのではないだろうか。
「そこは気にしとらん。そこでは無い所じゃよ」
その質問に宰相は長考する。
「魔王にたどり着くまでにはどうにかなるでしょう、おそらくは」
宰相の返答にシーマは天井を見上げる。
天井には初代国王と魔王との戦いが描かれていた。
実に見事な絵だ。
それを見てシーマはつぶやく
「やっぱり、予備は大切よな」