旅立ち
私がここに来て6年が経った、私より年上の者は少女しかおらず少年たちは外の世界に旅立っていった。
年下の者は栗毛色の髪で茶色い目の少女1人のみで協会に連れてこられる子供はどうやら少ないようだ、私は未だに特異な能力には目覚めずにいるものの少年用の作業と少女用の作業を両方とも教えられていたために少女に色々なことを教えるのが日課になっている。
「お兄ちゃん」
栗毛色の少女が驚く程に上手な笑顔を浮かべて私に話しかけてくる。
「本読んで、お願い」
上目遣いで目を潤ませて頼み込んでくる少女に私は答える。
「えぇ、構いませんよ?どの本でしょうか」
と言葉を放つと少女は本を掲げて答える
「これ!」
その本はかつて神父様が私に読み聞かせてくれた本であった。
私がここに来て7年が経ったある日、神父様が私に久々に話しかける。
「今日で貴方は教会から去らねばなりません」
私は目を見開きながらもそろそろ私の番だと思っていたので頷く
「荷物をまとめて日が沈むまでに立ち去りなさい」
淡々と言う神父様に私は動揺しながらも声をかける。「あ、あの…」
面倒そうに神父様の青い目が冷ややかに向けられる。
「名前…」
私は今まで外の世界に旅立って行った少年たちは皆、名前を神父様から授かっていたことを思い出しながら自らの名前を求める。
「名前…貴方には必要ありません、日没までに去りなさい」
そう冷たく神父様は言い放ち立ち去る。
私は涙を頬に伝わせながら即刻立ち去ろうとする、何故なら私の私物など何一つとして持っていないのだから
「お兄ちゃん」
後ろから栗毛色の少女の声が聞こえるも泣き顔を見られたくなく、無視して外の世界に旅に出た。