生存者
「おい!生存者はいるか!」
男の野太い声が聞こえる
「この家の下には死体だけだそっちはどうだ」
他の男の叫び声が聞こえる
「こっちも…いやおい!まだ生きてる奴がいるぞ!」
男の声と俺の体に刺激を感じて目を開ける。
「おい!聞こえるか!此処には何が来た?」
男が俺を担いで立ち上がらせる
「とりあえず安全な場所まで離れるぞ、ここは危険だ」男に担がれて俺は連れて行かれる
体に力が入らない声すら出す事が出来なかった。
「俺はこいつを連れて行く!捜索の続きは任せた!」
俺を毛皮の上に寝かせると俺を担いできた男が
女と話をしている。
「アルス?まさか!あの中に生存者がいたの!?」
白髪で黄色い目の女が驚いた様に声を上げる
「そうなんだよミール、俺もびっくりしたさ
アレだけの魔物の群れに襲われた村の跡地に生きた人がいるなんてな、奇跡的だ」
俺はミールと言う名前に反応して力の入らない体を無理矢理動かしてミールの足を確認する。
両足しっかり生えていた。
「おい!何があったか知らないけどまだ動くな!」
アルスが俺に寝るように指示する。
「俺はなんとか済まない…」と声を出して休む
目が覚めると日が昇っていた。
俺が周りを見渡すと様々な男と女がスープを
飲んでいる。
「あ!目が覚めたみたいよ?」
ミールと呼ばれていた女が気がつく
「おっ?起きたところ早速で悪いが昨晩あの村で
何があった?いや何が襲ってきた?」
アルスと呼ばれていた男が俺に言ってくるが
俺には一切昨晩の記憶がない。
俺の最後の記憶は機数模様の刻まれた床の上で
座って目を閉じた事だけだ。
「すまないが、何も知らない」
俺がそう答えると
「そうか、辛い事聞いたな」
と言ってアルスは俺にスープを渡してくる
「とりあえず飲んでおけ、生憎と服は無いが
飯ならそれなりに貯蓄がある」
そう言われて俺は自分の姿を確認すると
俺は黒くて薄い布を身に纏い、袖の所が切れて
膝が見えている、一枚の布を着ているようで
前で布を重ねて帯で縛ってある。
俺は戸惑いながらもスープを受け取り飲む。
「団長!次は何処に向かいますか?」
小柄な男がアルスに聞く
そうだな…祈りの地に向かおうか。
そう言ったアルスの指示通り俺たちは
祈りの地に向かう。
俺たちが列をなして数日周りを警戒しながら
野営をして歩き続けて着いたところは
石が並び石造りの階段の上に石の箱が有るだけの
平原だった。
「アルス…向かっていたのはここか?」
俺がそう聞くと犬歯を見せつけるように笑い答える
「あぁ、ここだよ俺達は定期的にここで祈るんだ」
そう言ったアルスに俺は聞く
「祈る?それは何に対してだ?」
アルスは肩を竦める
「おいおいw生死の神に決まってるだろ?
きっと俺たちを助けて魔物を殺してくれるさ」
俺は絶句した、神に祈れば救ってくれる?
何を馬鹿な事をと俺は思っていた。
「それに今日は各国の首脳陣が集まるんだぜ?
あ、言っとくが俺も一応国王だからな」
俺は驚いた、数百人しか人を確認できていないが
アルスは国王らしい
「今日は本当に奇跡が起きるさ」
そう言ったアルスは楽しげに笑っていた。
もう夕方になった、既に様々な人が集まり
数千人規模で集まっている。
「聖女様、準備はよろしいですか?」
そんな声が聞こえて俺は振り返る
赤紫の髪に赤紫の目、俺より少し低い身長、
何より彼女の匂いが、彼女の色がアカツそのものだ
「アカツ!」
俺が近づくと男達に取り押さえられる。
「何者だ貴様!」と取り押さえる男達に
「手を離してあげてよ、彼は良い目をしている」
そうアカツが言うと男達が手を離す
「それで、なんで私の名前が分かったのかな?」
俺は答える「それは俺がシロツだからだ」
「はぁ…僕の神名を知ってるって咄嗟に魔法で
音を消さなきゃ大変だったよ…」
そう言って唸るアカツ
「シロツ君?いいかい?僕のことは聖女様って呼ぶ事」
俺はアカツがそう言うならと思って答える
「あぁ、わかった」
アカツが立ち上がると背筋を伸ばして
俺を押さえつけていた男達に言う
「儀式の準備をするから贄の巫女を祭壇へ」
黒毛色で茶色の目の少女が寂しげにこっちに
手を振って祭壇へ登り箱の中に入る。
「僕は少し準備するから、じゃあねシロツ君」
俺はアルスのいるところに戻った。
「シロツ?何か騒いでたが大丈夫か?」
アルスが聞いてくる
「悪い、聖女様を見て少し気が動転してた」
そういとミールが納得した顔をしてアルスが答えた
「魔物の群れに襲われた生存者だもんな…
聖女様に縋り付きたくなる気持ちもわかる」
とアルスが見当違いのことを言い出す
「アルスが昔クマに襲われた時は私に泣きついて
来たものねー」そういうミールにアルスは
顔を赤くして「あの頃はまだ幼かったからな!」
と言っている。
「そういうところは何も変わらないわね」
ミールはとても楽しそうにアルスをからかっていた。




