脱出
俺が目を覚ますとアカツがまだ眠っていた。
俺は今までは何時も目が覚めるとアカツが起きているのでとても不安になりアカツの体を揺さぶる。
『アカツ?大丈夫か?」
アカツが寝ぼけ眼を擦り目を覚ます。
『ふぁあ…シロツ、おはよう…アレ?綺麗になったね?』
と聞いてくる、
「あぁ、おはよう、水瓶に水があったから適当な布で拭いた」と告げる。
『そっか!これなら攻撃されないで済みそうだね♪』とアカツは嬉しそうだ。
俺は家を出て真っ直ぐ城門に向かう
「何者だ!」
武装した男達が弓と剣を向けてくる。
「シロツだ」と俺は答える。
男たちは俺のハンマーを凝視して警戒を辞めない。
「ハンマーを持ったアンデットの腹を切り裂いたと報告をもらっているが、アンデットはどうした!」
男は聞いてくる
「アンデットは知らないが斬られたのは俺だ」
そう言うと男の背後で弓を強く引く音が聞こえる
「待て!」男が声を上げる、
「傷はどうした?」と聞いてくるので「治した」
と答える、男が怪しげに見ているため、
俺はその場で見せようと「刃物を貸してくれ」
と頼む男は俺の足元に短剣を投げてくる、
俺が短剣を持ってアカツを見ると既にアカツは涙目で手を震えてしゃがんでいる。
「ごめん」小さくアカツに謝り俺は右手で握った短剣を左手の掌から貫通させる。
正気を疑うような目を向ける男たち、
痛みを噛み締めて堪えるアカツ、
俺は短剣を引き抜くと男の足元に投げてアカツが治すのを待つ。
『うぅ…痛い…』
と言いながらアカツは俺の手を治してくれる。
「こう言う事だ、わかったか?」
と聞くと男たちは警戒を解いたのか武器を下ろして
「あぁ、済まなかった」と男が謝ってくる。
「中の状況や生存者はどうしてる?」
と聞くと「なんとか食いつないでるがもう限界だ、待て?お前は聖教国の使者じゃないな?
一昨日にフェアグニューゲンを捨てると伝書鳩が来ている、何者だ?」
男が聞いてきて困ってしまった、
「俺は何者なんだ?」
俺はアカツに聞く、
「おい!答えろ!」男は大きな声を上げている
『うーん、死の神の使徒…なんじゃない?マリーがそう言ってたし!』
と言っていたのでそのまま言う事にした。
「俺は死の神の使徒だ」
男達が武器を上げた。「待て!まだ撃つな!」
俺と話していた男が静止をかかる、
「どうやってここに来た!」俺は事実を答える
「死者を殺してここまで来た、外にはまだ溢れているが」
そう言うと男は「殺した?」と不思議そうにしている。
「アンデットを増やしてるのはお前ら邪教の連中だろ!」
よく分からない事を言っている
「そうなのか?初耳だ」
男は剣を強く握りしめて
「ふざけた事を…貴様はここに何をしに来た!」
俺は単純明快に答える「生者の確認だ」
「放て!」矢が俺に降り注ぐ
『シロツ!』
アカツの悲鳴が聞こえるだが城壁の上から撃たれた矢だ、俺は昨日の事を思い出し、頭の上でハンマーを回転させる。
「化け物が…引くぞ!」男がそう言うと城門の中に男が篭り、
扉を閉める城壁の上から弓を構える男たちとその下にいる俺達、どうしたものかと考える。
上の男たちを確認していると妙な事に気がつく。
「魔石?」弓を構えている男達の中にチラホラと胸の中に魔石がある者達がいる事に気がついた。
「アカツ、アレは魔石だよな?」
アカツは混乱したように『何で…生きてる人に魔石が…』と呟いている。「とりあえず引くか」俺はそうアカツに告げて建物の影に隠れて弓の射線を切って逃亡する。
「アカツ、人の中に魔石があるのは普通な事なのか?」
俺は聞く『普通じゃないよ、少なくとも私は見たことが無い』
とりあえず異常な男たちがいる事がわかった、
『でも…中の様子を見たいかも』
アカツは調べる気でいるらしい、
「夜に侵入するか」
俺たちは誰かの家で時間を潰す。
家の前を誰かが歩いている感情は絶望だ。
俺は家から出ると歩いていた女に声をかける。
「おい、何があった?」
俺が聞くが『痛い、熱い、私の体』
と呟きながら外に向かって歩いている、
大した情報は聞かなかったが
「そうか、ゆっくり眠れ」
俺が女の肩に触れると青白い光を上げて散った。
『何が起きてるか分からないけど、急いだ方が良さそうだね』
アカツがそう言うならそうなのだろう。
日が沈み辺りが暗くなったので俺は右手でハンマーを持ったまま左手と両足のみで城壁を登る。
城壁の内側はそんなに広くは無いようだ。
『食いつないでるって、こう言う事だったんだね』
城壁の内側には鎖に繋がれて痩せ細った女子供と人の体らしき物を焼きながら酒を飲む男たちがいた。
「どうしたら良い?」
俺はアカツに聞く、
『女の人や子供を流したい…けどこれじゃあ』
そう、周りは城壁に囲まれていてその外には死者の群れ、逃げる場所など、どこにも無い。
「男たちを殺すか?」アカツは首を振る
「人殺しは…良くない」
俺は選択をしなければならない
誰を生かして誰を殺すか。
日が上り始めて俺の影が城壁の、内側に映る、
俺は一晩考えたが何方も選べなかった。
『シロツ…どうするの?』
アカツが不安そうに言う
「行く…か』
俺は城壁の内側にハンマーを落とすと虫のような動きで下に降りる、音に気がついたのだろう、
男達が武器を取ってこっちに走ってくる。
遠くには身なりの良い爺さんがこちらを睨んでいる。
俺はハンマーを手に取り皮袋から木刀を取り出すと男たちの方へ歩き、
剣を躱して片足か両腕を折って進む、
ハンマーを盾にして剣を受け足を折る、
放たれた矢はこの距離だと目で追うのはとてもでは無いが出来ない、
体の至る所に矢が刺さるが進む。
アカツは目に涙を溜めて食いしばりながら俺の背後をついてくる、
アカツの為にもあまり矢を受けるわけにはいかない。
身なりの良い爺さんや綺麗な服を来た男達がこちらに掌を向ける。
『させない…シュヴァイゲン』
アカツの冷たい声が俺に聞こえる。
男たちの掌に魔力が溜まっているが、そのまま空気中に魔力が散っていく。
「なっ!何をした!」男たちが俺に怒鳴り散らす。
俺はつい頬を上げて言葉にしてしまった。
「いい歳した大人が怒り、子供のように喚いていると、何処か笑えてくるな?アカツはどう思う?」
『もー緊張感持ちなよ!シロツ!』
アカツはさっきの冷たい声が嘘のようにプリプリ怒っている。
「き、貴様!殺れ!殺せ!」
爺さんが周りに言うが武装した人間は足か両腕が折れているので無理をしても戦えるか微妙な状況だ、
俺は爺さんに近づくと木刀で片足を折る、
逃げ出す周りの男も平等に折る。
痛みで喘ぐ男たちの声を聞きながら俺は鎖に繋がれた女子供の方を見ると彼女達は震えながら神に祈りを捧げている。
「神様…聖女さま…どうか救いを」
子供達は瀕死だ、もう泣く元気も無いようだ、
「おい、お前はこれからどうしたい?」
「神様…助けて…」女は震えている。
「俺は神じゃ無い」
俺はそう言うが女は震えたままだ。
『もーシロツは無愛想だから怖いんだよ!私が代わる!』
と言ってアカツが体の主導権を握る。
「私はアカツって言うんだけど貴方の名前をおしえてくれるかな?」
そう言うアカツに女は答える
「ア、アネモネと言います…貴方…今目が…」
女が驚いているので目がどうしたのか気になり俺は体から出るとアカツの目を確認する。
眼の色は淡い赤紫に変色していた。
「あ!私の事はいいからアネモネ達がどうしたいか教えてよ!」アカツがニコニコして言う、俺の顔で
「逃げたいです…でもこの状況じゃ…対魔の枷もついてますし…」
そうするとアカツ笑って言う、
「それじゃあ私がその枷を壊してあげるよ!」
と言って地面に置いていたハンマーを持ち上げると体がよろけて女の足ごとハンマーで叩き潰す。
「あ…」
女の悲鳴が鳴り響いた。
俺はアカツと代わり枷を全て壊すと再度アカツに主導権を譲って女の足を治す。
女は「聖女さま?」と言っていたが
「私はただの死霊術師さ!」と言って警戒された。
街の外の城門に歩きながら
「それでこれだけの極限状態で生き残れてるって事は皆んなはそんなに特異な体質でもあるの?」
アカツ首を傾げて女に聞く、
ハンマーは引きずっている。
「えぇ…私は魔力量は少ないはずなのですが、火の魔法だけ異常に強くて…でも…」
過去に何かあったのか女の顔は陰る。
「あーそれだけ髪も眼も真っ赤だからね♪適正が凄いんだろうね!」
とアカツは能天気だ。
他の人も似たように各属性に特化した者たちで合計6人女性4人に少女2人だ。
4人の女は過去に魔法を暴発して家族を殺していた、
不思議な事に建物などに影響はなかったらしい、
それにより教会に送り出されて12歳になってから、
此処フェアグニューゲンに送られて金持ちの玩具にされていたらしい。
女性の年齢はわからなかったが少女達は双子で12歳だそうだ。
アカツは何か思いついたようで彼女達と話を進める
「私達…あー私とシロツはね!
マリーに頼まれてあ、
死の神の信者の人なんだけど、
アンデットの人たちを楽にして回ってる旅の途中なんだ、
それで良かったら私達と外に出ない?
みんなが過ごせる国に心当たりあるしさ!」
とアカツが言う
『心当たりってどこだ?』俺が聞くと
「何処って帝国だよ?シロツ」
と言って来て納得した、
あそこなら実力をつければ生きていけるだろう。
「帝国…少し考えさせてください」
と女達は言い一晩、城壁の前の家で眠る事になった。
翌朝、彼女達が覚悟を決めた顔で「行きます」と言ったのでフェアグニューゲンからの脱出を決行する。
アカツから主導権を貰うと木刀をアネモネに渡してハンマーで城門を壊すとアンデットが雪崩れ込んでくる、
そこからはみんな必死だった、
彼女達が魔法を放ってアンデットを広範囲で殺していくが、
余波で俺の全身に激痛が走る、
だが止まるわけにもいかず、進んでなんとか脱出する事に成功した。
アンデット達は城門から中に入っていった。
少し歩くと流石に疲れたので彼女達に謝って一晩休ませてもらう。
翌日には痛みが引いていたので俺たちは帝国に向かって歩く。
途中で半強制的に食べ物(昆虫など)を食わせて体力を付けさせる、
彼女たちは生き物を魔法で殺す事は出来たが飲み水や焚火などに魔法が使えなかった、
なので俺が色々な方法を教えながら帝国へ歩くと思ったより早く帝国の城壁についた、
女性の一人、青髪に青い眼の女スレナはエデム王国出身で大体の方向がわかるようだ、
それにより俺たちは迷う事なく、ほぼ直線距離で歩いた為だろう。
俺は門番に顔を見せて事情を話すと直ぐに帝国内に入り前の筋肉の所まで2日ほどかけて歩いた。
「おい!いるか?」
そういうと中から筋肉と数人の奴隷が見えた
「ちょっと鉱石貸してもらえるか?」
そういうと「あぁ、待ってろ」と言い、
家の中に入るとすぐに未加工のミスリル鉱石を持ってきた。
俺はすぐ後ろにいたスイレンにミスリル鉱石を渡す。「これに魔力を流してみろ」
と俺が言うと筋肉が「おい!テメェ今!」
と怒鳴ってくるがスイレンが
「石を触ってやってますが…どうかしましたか?」
と首を傾げて上目遣いで見てくる。
「どうなってんだ?こりゃ」と筋肉が言っているが他の女達にも鉱石を回す、結果女4人は鉱石をダメにする事が出来なかった。
少女二人は鉱石をダメにしてしまい泣いていたが
「誰だって失敗はあるもんだ、最初から出来るコイツらが異常なんだよ」
と言って少女二人の首が取れないか心配な撫で方を筋肉はしていた。
「コイツらは帝国でやって行けそうか?」と聞いたら
「そりゃぁヤル気次第だがよ?素質はあるぜ、それに全員強い目をしてやがる、一体こんな良い女達を何処で拾って来たんだよ?」
と揶揄うように言ってくる
「フェアグニューゲンだそれじゃあ彼女達をよろしく頼む、俺はまた旅を再開する」
と言って背中を向けて歩き出した、
背後から「テメェ!ちょっと待て!そりゃ教国の!」
と叫び声が聞こえるが無視して歩く、やって行けると言ったのだから大丈夫だろう。
後に帝国から独自の宗教が世界に広まる




