死の教団
俺たちは昨日の夜に神父からもらった地図を見て次の目的にを決める、
地図の中心には教国、左端にエデム王国がある。
エデム王国から地図の右側に山を挟んでラケデイ帝国、
そこから地図を見るとさらに右に進んだところに赤い点があり、
そこがアルカンの家だそうだ、さらに右を見るとそこには砂漠が広がっている様で所々に小さな国が転々とある。
俺たちは何処へ向かうか相談する事にした。
「アカツ、砂漠に向かうか教国の方に近くかどうしたい?」
俺が聞くとアカツが悩んだ様に頭を捻り
『次、此処に行きたい』
アカツが指を刺したところはエデム王国とラケデイ帝国の山の中心から丁度上の方に位置した何も無い森だった。
俺は林を淡々歩き続ける、
どうやらアカツが指を刺した辺りにあらゆる国に邪教として扱われて行き場のない人たちが暮らしている里があるらしい、
教国やあらゆる国の国教は生の神が一番偉く、
その次に火と水と土と風の神が同立で偉いらしいその下に聖女が位置するそうだ、
対して邪教と呼ばれている宗教に生の神と死の神が同立で一番偉く、
その両方に火と水と土と風を司る神が生の神に1人ずつ、死の神に1人ずついるらしい、
俺としては違いがよく分からないがアカツもよく分からないらしい。
だが教国をよく思っていないアカツは邪教徒達と気が合って色々教えてもらったと言っていた。
どれだけ歩いただろうか、辺りが冷えて雪が積もったかと思えば最近暖かくなってきた、
どうやら地図と言うのは距離感がめちゃくちゃに描かれているらしい、
俺の体には歩いている間に色々と異変があったまず、アンデットや動物から感情を感じるようになった、
アンデットからは嫉妬と怒りを
動物からは恐怖を、おそらく神父の共感を吸収したのだと思う、
さらにアカツの魔視も吸収し終わったのか魔力が見えるようになった、
俺の体には魔力が全くなかった、
さらに不思議なことに目を閉じても物が見えて、
自分が大体どれくらい歩いたのか、
などが感覚でわかるようになった、
既に俺は帝国に入った山から城門までの距離の10倍近く歩いている。
此処何日も、ずっと森の中だアカツは
『あれー?おかしいなぁ』
と言って此処数ヶ月は『この辺だったはず!』
と言っている、俺は同じところを回っている気がしていた。
何日森を彷徨ったか分からないが今は森の葉が枯れ始めている季節だ、
やっとそれらしき建物を見つけた、
建物にはツタが絡みつき建物の中に置かれていたであろう石像は壊れていた。
辺りにはアンデットではないがアカツのように透ける人たちが祈りを捧げている。
アカツが黄色い髪のを見ると『マリー!』と声を上げた、
黄色い髪の女がこちらを振り向いて黄色い目を見せる
『アカツ?それにそっちは…前に言ってたクロハ君かい?』
やっと邪教徒達を見つけることができた。
アカツがこれまでの事をマリーに楽しそうに話すとマリーは頷いて話を聞いている他の人達はずっと祈りを捧げている。
マリーが『シロツ君、少し話をしようか』
と言ってこっちを見てくる。
『あぁ』と言って近づくと
『おっと!まだ私達には触れないでほしい、おそらく弾かれてしまうからね』
と言って咳き込むと話始める。
『まず此処が壊されたのはもう5年は前になるかな、
やけにアンデットが増えてきていると感じて調べていたら教国に場所を特定されてしまってね、
私達はそれなりに戦えるつもりでいたんだが、
教国の死なない軍勢には勝てなかったよ、
元は同じように神を信じる者達だったと言うのに、
嘆かわしい事だ』
マリーは俺の方を見て言う
『シロツ君は死なない言う事は素晴らしいと思うかい?』
俺は考えるアカツとの日々を思い出してそれなら永遠に続いて欲しいと思う答えようとした時にマリーは俺の目を見て
『荒唐無稽な話だが聞いてもらえるかい?』
と言ったので俺は頷く
『昔、いや未来なのかもしれないもしくは此処とは全く別の理の世界の話だ。
その世界では魔法は存在していなくて、
それでも大抵の事は出来てしまう、
私達の世界よりも過ごしやすい世界だ、
進歩しすぎた技術は人を死なないようにする事も可能だった、
そんな世界に1人の女がいた、黒髪黒目で背は低め、
顔はそれほど良くなかった、
それに親の抱えた借金の所為で体を売ることになった、
最初は娼婦をやっていたが利息が高くてとてもじゃないけど返せなかった、
そこで親が金を借りた組織に体を買ってもらって返済に当ててもらうように頼んだ、
組織の連中は喜んでそれを了承した、女の地獄はこれから始まった、
体を縛り付けられると撮影…
なんと言ったら良いかな?
観たものを別の時間に同じように見れる装置とでも言おうか、
それで撮られた状態で刃物で指先からスライスされた、
痛みを無くす技術くらいその世界にはあった、
しかし連中はそれをしないでスライスした、
歯を砕いて神経を剥き出しにして鉄製のブラシで擦られた事もあった、
無駄に高価な薬を使って意識が飛ばないようにさせてからだ!
私は腕が無くなると足をスライスされた、
何日もかけてゆっくりだ!
腹を裂かれると臓器を潰されたり引き摺り出される、それでも私は死ななかった!
体が空っぽになって全身をすり潰されて首だけになっても私は死ななかった、
思考は出来る、だが行動する為の体がない、
話す為のしたが無いそもそも声を出す為の肺も横隔膜もなかった。
最後の記憶は機械に繋がれて生かされていたが機械のスイッチを押す様な音を聞いただけだった。
私がこの世界で産まれた時にどう思ったと思う?
絶望だよ!私はやっと楽になれたのにまだ苦しまなくてはならないのか!
だが…この世界は前の世界と違って技術が遅れていた、
悪く言えば原始的だった、私は安心した、
この世界なら安心して生きていけるかも知れないと、だが最悪な事に私が産まれたのは教国だった、
親が治癒魔法を使ってるのを見て私は怖かった、
体を切られて治されたらどうする!
永遠と辛い思いを繰り返さなければならなかったらどうする!
私は産まれながらに頭は成熟していた、
大人よりも賢く物を判断する事が出来た、
親は私に期待したさ…親には申し訳なく思っている、私は神々の話しに興味を持った、
前の世界には無かった魔法があるんだ、
神がいてもおかしくない、
そこで私は違和感を感じた、感じてしまった!
処分し忘れた死の神の書物を読んでしまったんだ、
私はその時嬉しかった、
死の神がいるのならこの世界に救いがある!
終わりが必ずあるんだ、これ程嬉しい事はない!
だが私はその話を親にしてしまった、
私が街に出ているて帰ると両親は死んでいた、
私は此処になって初めて気がついた、
私の知った事は知ってはいけない事だったと、
私は逃げた国民のほぼ全員が治癒魔法を使える教国だ、
何をさせるかわかった物じゃない
夜に教国を抜け出そうとすると声がしたんだ、
両親の声だ、声の方を見ると両親は私を探していた、
私は確信した、教国は人を死なない、
蘇らせる事が出来ると、私は逃げた、
色んな国を転々として、生きる苦痛を知っている者たちと意気投合して、
教国が認めない死の神を信仰してやろうと私達は決めた。
だが、私はついさっきまで死の神は本当にいないのではないかと思っていた。
だってそうだろ?
生の魔法は見かけるが死の魔法は私は見た事が無かった。
けど…私は死の神にすがるしか無かった、
さっきアカツに君が死の魔法に適正があると聞いて驚いたよ、
アカツから聞いて君が魔法を使えない理由も固有特性を引き継ぐ事がある理由もおおよそ分かった
アカツの魔視で君の魔石を見ていなかったら分からなかった事だ、魔石とは魔力の塊だだから魔視で見えたのだろう、
そもそも君の魔力は私達の物とはおそらく別物だ…
いや、対になってると言った方が良いかな?
私達の使う魔法は物に干渉が出来る人を傷つけたり癒したりだ、
だがアンデットになる前の段階、私もこの体にならなければ気が付かなかった、そうだなエーテル体とでも言おうか、
そのエーテルに干渉する事が出来ない、
逆に君の魔法はエーテル体にしか干渉が出来ない、
以前私は熱くない火を古代遺跡で見た事がある触った事も』
そう言ったマリーは長いローブで隠れていた左手を俺に見せる
『わかるかい?あれが死の神の管轄の神の火だったんだよ!
魔力はあらゆる現象を引き起こす、
しかしそれは物質的な物に限る、
しかし君の魔力…いや魔力と言うべきではないな、 霊力と言おうか、霊力はエーテル体に干渉する死者を正しく殺す事が出来る唯一の方法だ、
君は魔法が使えないのではない、
常時使っているんだ、無意識に。
だから君がアンデットに触れると死者は死ぬ、
触れなくても一度受肉してその体が崩壊すると霊力の干渉によって死ぬのだろう。
そして君が固有特性を引き継ぐわけだが、
これはおそらく君が求めて相手が認めた場合のみ君の一部として君に吸収されるのだと思う、
でなければアカツが存在している説明も、
君が存在している説明もつかない君が君自身の力で死んでしまう可能性もあり得る訳だからな、
ようは魂の融合、共感と言ったところかな?
とりあえず君の体の事の私の考察は此処までだ、
何か質問はあるかな?』
そう聞いてくるマリーだが俺は既に頭がパンク状態だ、
しかしアカツは涙を溜めながらどこか強い目をしているので俺は首を振る。
『そうかい…なら私から頼みがある、
此処まで話せば分かると思うがこの世界は死者で溢れ返してきている、
死者を殺す人間が居ないからだ、これまではどうしてアンデットが溢れなかったのかは分からないが今は至るところに死者がいる、
だからこその私からの死の神を崇める信者としての頼みだ、
私たちを殺してくれ、死者を殺してくれ、私は痛みに慣れているからまだ正気で入られているが他の者たちは死んだ時に焼かれた痛みを堪えて必死に祈っていた所為か祈る以外何も出来なくなってしまった、
前の世界でも今の世界でもそうだが、
神って連中は私達を救わない、奇跡を起こさない、
ただ信じられているだけだ、だがこの世界で本当の意味で死んだ者は永遠に生者の中で眠るらしい、
私はもう疲れた…
私を、私たちを眠らせてくれ』
俺はアカツと目を合わせると強く頷いていたので
「わかった、安らかに眠れ」
そう言ってマリーに触れると彼女は青白い光を上げて消えていった、約束通り他の信者達も殺していく。
『ごめんね、なんか大変なことになっちゃったね』
としょんぼりとしたアカツが言う。
「安息の地を探すのが後回しになりそうだな…」
俺はどうしたものかと考える
『いいよいいよ!まずはちゃんと死なせてあげなきゃね!マリー曰くシロツは死の神々の使徒らしいよ?』アカツが俺に茶化す様に言う。
「俺は神々とやらに会ったことがないんだがな…」
そこでふと思った事を聞く
「ところで俺の魔石ってどんなふうに見えたんだ?」
アカツはキョトンとして俺を見る
『えっ!確か魔力が何も見えなくて…』
俺はさらに疑問を浮かべる
「なんで俺の適正が死だとわかったんだ?固有特性も」アカツは目を回している
『あれ?なんでだろう…魔力が見えなくて…でもでも!魔石だ!って思って…私の魔力をどんどん吸ってだから吸収…あれ?』
どうやらアカツにもよくわからないらしい
神とやらがいるのなら俺とアカツが出会えたことに感謝しようとマリーのように死の神々に祈りを捧げた。
あれー?こんなに壮大な話にする予定は無かったのに…




