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colour  作者: 神口 讃妥
旅の道
34/68

職人の道

 俺の名前はムスケル、ミスリルの採取、精製を行える数少ない帝国市民の1人だ。

俺はそれなりに裕福な家庭に生まれたと思う、

魔力が多く無いと出来ないアダマンタイトの採取、

精製を行える父と母、

それに兄も魔力量が多かったので幼い頃から両親の手伝いをしていた、

だが俺には魔力が殆どなかった、幼い頃は兄に自分の魔力を持ってかれたんだと妬んだ事もあったが今思えば理不尽な怒りを兄貴にぶつけていたと思う。

俺がミスリルの加工などの練習を始めたのは兄との喧嘩が発端だった

「そんなに魔力があってズルい!俺の魔力を返せよ!」

俺は兄貴に大声を上げて怒鳴り散らす、

俺は毎日の様に兄貴に怒鳴っていたと思う、

普段温厚な兄貴が遂にブチ切れて俺を殴って言った

「お前は何時もズルいズルいと言ってばかりだ!そう言うだけでお前は何をしてる!

何もしてないだろ!

自分に出来ることを探しも、考えもしない!

俺はお前が弟だからいつか自分の道を見つけると思ってずっと見ていた…だが!

もう限界だ、俺はお前を帝国市民と認めない、

市民権があろうと帝国がお前を市民と認めようと、

俺は今のお前を帝国市民として認めない」


 初めて兄貴と喧嘩した俺は泣きながら家を出た、

悔しかった悔しくて悔しくて仕方がなかった、

俺は兄貴に言われたことに何も言い返せなかった、

兄貴の言う通りなのだ、

俺は兄貴の魔力を羨んで魔力がないから何も出来ないと決め付けて何もしてこなかった、

その頃俺は12歳だったが同い年の連中で親の手伝いも修行も軍人になる為の鍛錬も何一つ行って来なかった、


 俺は走りながら新人募集で何か仕事がないか、

俺は色んな製鉄所や採石場に向かい頭を下げて教えてもらった銅の採掘も鉄の採掘も精製もどれも同い年の連中より上手く出来なかった、

採掘は魔力で身体強化をしてやるのが普通な様だ、

俺が身体強化をしたところで羽虫程度の力しか上がらない、

精製はもっと最悪だった、周りはみんな魔法で高い火力の火を作り出して銅や鉄を溶かすと型に流し込んでいく、

しかし俺は火花しか散らない、幾ら俺の適正魔法が水だからと言っても弱すぎる、

周りにも適正魔法が水の奴がいたが、

そいつも少し時間はかかるが十分な火力を作れるのだ、

 俺は何も出来なかった。

どの職人達にもその日のうちに追い出されて気がついたらかなり寂れた所までトボトボと歩いていて街に迷ってしまった。

しかしどこかから鉄を叩き合わせた様な音が鳴り響いている、こんな音は今まで聞いた事が無かった。



 俺は音を頼りに探していると小さな工房で1人淡々と金属を叩いている爺さんにあった。

俺がミスリルと出会った始まりだ。


 俺はどうせ俺には無理だと思いながらも爺さんに教えてもらえる様に頼み込む。

爺さんは戸惑いながらも俺に教え始めた、

俺はこれまでの工房で教えられてた様に鉱石に全力で魔法の火を当てる。

「馬鹿野郎!」

俺は爺さんからそのヨボヨボな体から信じられないほどの怒鳴り声と力で殴り倒された。

俺が何事かと思い立ち上がろうとすると手に持ってた鉱石に違和感を覚える、

鉱石は青く変色してボロボロでスカスカになっていた。

爺さんは低い声てま「座りなさい」と言うと

俺を座らせると俺の正面に座ると同じように低い声で話す。

「まず一つ、人の話は最後まで聞きなさい、良いか?」

俺は涙を堪えながら「はい」と答える

「では説明を始める、ここで取り扱ってるのは希少な金属であるミスリルじゃ、オメェは知らなかったんだろうがミスリルは魔力伝導率が非常に高いが不純物が多い鉱石の段階だと魔力を流すと劣化して使い物にならなくなる、だから工房や採取では一切魔力を使うな、良いな?」

俺は殴られた意味を理解すると「ごめんなさい」

と誤るすると爺さんは俺の頭をポンポンと叩き

「失敗や間違えは誰にだってある、次に活かせばそれで良い」

と言うと俺に握り拳ほどの大きさの白銀色の塊と錆びかけた刃物を見せてくる

「まず火はこれで乾いた草に火をつける」

爺さんは塊と刃物を擦り合わせると火花が散って乾いた草に火がついた

「そしたら窯に予め用意しといた小枝を燃やす、次に薪だ、そしたら石炭に火をつける」

爺さんは黒い塊、を入れてしばらく経つと黒い石の様な物が真っ赤に染まり火あまり大きくはないが火が出ている、

その火の大きさとは対照的に物凄い熱気を感じる。

「爺さん!石が!石が燃えてる!」

すると爺さんはニカッと笑い

「石炭を初めて見るのか、まぁ皆、魔法を、使うから誰も必要とせん、だがミスリルの精製には必須じゃ、石炭自体は裏の山に採掘場を作ってあるが普段は使わん、たまに奴隷達に仕事を出して取ってきてもらう程度じゃな、割高な仕事で楽じゃて、皆大量に取ってきてくれる、火気厳禁じゃがな」

 そういうとミスリル鉱石を鉄で出来たトングで掴むと石炭の中に入れてしばらく待つと真っ赤に染まった鉱石を取り出す、

それを何度も何度も金槌で叩くとまた石炭の中に入れる、

それを何度も続けていると鉱石が薄くなってくる、

すると爺さんは薄くなった鉱石に平たく先端が刃物の様に薄い鉄を取り出すと鉱石に亀裂が入る様に金槌で上から叩く、

すると鉱石を立てて亀裂に向けて金槌で叩くと折れ曲がっていき幅が半分で高さが倍になった鉱石が出来る、

それを石炭の中に入れて薄くして折り曲げ薄くしてを繰り返す、

何度も同じ工程を繰り返していると叩いた時の音がどんどん高くなっていく、

すると爺さんが頃合いじゃな、

と言うと鉄で出来た型に叩き入れる。

「これでミスリル精製が完了じゃ、覚えたか?」

と聞かれて頷くと「やってみなさい」

と言われ同じ様にやっても上手くいかない、

すると爺さんは細かく説明をして何度も俺にやってる所を見せて俺は何度も失敗を繰り返す。

何時間やっていただろうか

「今日はもう家に帰りなさい」

と爺さんに言われた時にはもう日が暮れていた、

俺は心の底からまたやりたいと思い爺さんに

「明日も来ても良いですか?」と聞くと

「もちろんじゃて、いつでも来なさい」と言ってくれた。

俺は走って家に帰ると親父に

「俺!住み込みで修行するから家を出る!」

と言うと親父は俺の方に視線を向けて

「好きにしろ」と言ってきた、

きっと連日仕事を投げ出してきた俺に期待などしていなかったのだろう。

俺は爺さんの所に住み込みで修行させて貰うと毎日のように鉱石を取り、精製を繰り返す。

髪がたまに燃えるのが面倒だったので剃刀で剃り上げて、

何度も金槌を打っていたためか手の皮膚は分厚く硬く、

鉱石の採取で思いトロッコを押していたためか足は太く腹筋も割れて胸板も厚く腕も丸太の様に太くなっていた。

爺さんは歳の所為かここ数年で弱っていき寝たきりになってしまい

「オメェはもう一人前だ胸張って生きろ!わしはお前に全てを教えて役目を果たした気分じゃて、わしが死んでもオメェの中でわしは生きておるから精進する事じゃ」

と言って眠る様に死んでしまった。

俺は涙を堪えながら笑みを浮かべて爺さんを見送った。



 それから俺は採掘や精製でもっと早く、

もっと精度の高い方法を模索して試行錯誤を重ねた、俺は親父の所に頼み事をする事に決めた、

何年もあって居なかった家族だ沢山迷惑をかけたし、これからも迷惑をかける事があるかもしれない、

だが俺は今の仕事をもっと効率よく、

そして正確に爺さんが言った様に精進しようと決めたのだ。



 俺は家のドアを叩く。

母がドアから出て来ると俺は頭を下げる。

「すまねぇお袋!俺のためにアダマンタイトで道具を作ってくれ!」

そう言うと俺の声を聞きつけてか奥から親父と兄貴が顔を出す。

「えぇっと…どちら様でしょうか?」

俺は泣きそうだった、親に見放された挙げ句、

息子としても見てもらえなくなったのだと思った。

「お、俺だよ!ムスケルだよ!」

俺がそう言うと俺の家族達は目を見開いて俺を凝視すると

「…言われてみれば…面影が」と母が言って

「おいおい…嘘だろ?」と兄貴が言い

「…………」親父は立ったまま気絶して居た。

俺は見た目が変わりすぎていた。



 それから俺は家族にミスリルの仕事をしている事を言うと驚かれた、

どうやらミスリルの精製はあの爺さん1人しか出来る人がおらず聖教国がかなり高値で買ってくれるがそれももう出来なくなると帝国の上位層達が覚悟していた所、

爺さんから「跡取りが出来た」と手紙が入ったと言う話を家族達は聞いていたらしい、

 俺としてはまさか今ミスリル精製を帝国で俺1人しか出来る人が居ないと言う事が信じられないが、

どうやら事実らしい。

 家族に事情を話し仕事の道具をアダマンタイト製で作ってもらった、

 俺にはもう鉄製の道具では軽すぎて脆すぎたのだ、

もう何度も金槌や型をダメにしてしまっている。

今まで貯めていた金を家族に渡すと金を突き返されて無償で作ってくれると言う、

俺は本当に恵まれてると思った。


仕事の効率が上がり、試しに巨大なハンマーを作ってもらったりして試行錯誤して成功もあり失敗も有り、充実した日々を送っていた、

家族とも和解して偶に実家に帰って酒を飲んだりしている。


俺はある夜に不思議な夢を見た、

爺さんだ、爺さんと仕事をしていた時の夢は偶に見ていたがそういった夢ではなかった、

「ムスケル、オメェの所に面白いのが2人…いや1人じゃな、2人で1人、1人で2人の変な人間が行く様じゃて、楽しくなるから楽しみしておけ」

と爺さんが俺に言ってくる夢だった、

すると数日後に奴隷の罰金を増やすために仕事を依頼させられてた依頼をやる奴が居るらしい、

 俺はこれが嫌いだった、貴重なミスリルがダメにされるのはまだ良い、

失敗するのも構わない許せる事だ、

しかし罰金を増やすために仕事を出させる奴隷管理局の人間は嫌いだった。



 連れてこられたのは白髪で緑の目をした弱々しい体つきに手足によく分からない刺青の入っていて顔には四百六十二番と記されている奴隷だった。

 四百六十二番は変な男だった、

偶に1人で話していて採掘中にサボりも休憩もしない、クソ暑い中で水の一滴も飲まない、

流石の俺でも水筒に石炭が取れる山から出る湧き水を入れて時々飲んでいる。


 四百六十二番は一切、ミスリル鉱石をダメにしなかった、

俺の様に魔力が少なくても最初は失敗だらけだったのにだ、

 魔力は修行をしなくては多かれ少なかれ自然に体から漏れ出てしまうらしい、それが魔力量が多ければ多い程漏れ出る量も多い。

 余程魔力制御の修行を積んだ魔法士とかだったのだろうと思い数ヶ月も、

続ければ失敗くらいするだろうが笑って許し管理局に言わずに罰金を揉み消してやろうと思ったが四百六十二番は失敗しない、

 これだけの重労働をしているのに体つきが全く良くならないのが気になり管理局の人間に俺は何を食ってるのか聞いてみたすると

「えっと…四百六十二番は毎日、雑穀しか食べてないですね」

と言ってきた、それでこれだけ動けるのは異常だと確信して管理局の人間に詰め寄り四百六十二番の固有特性を教えてもらった、

『吸収』と言っていたがサッパリ理由が分からなかった俺の様に『超回復』や爺さんの様に『制御』を持ってるなら無理がある程度効くだろう。

吸収…どんな特性なのかサッパリ分からなかった。


 あまりにも失敗をしないので俺は思い切って管理局の人間に依頼書を出した

「四百六十二番にミスリル精製の依頼を貼っといてくれ」

そいつはギョッとした様に受け取り渋々頷いた、

 俺が依頼を出すのを散々嫌がったのを知っているからだ、

採掘が出来る様になった奴はこれまでにも居た、

しかしそれまでに増えていった負債に絶望して皆、

自殺してしまった。

俺はその度に酒を浴びる様に呑み依頼内容変更の抗議をしにいっていた、

 確かに希少なミスリルがダメになるのは損だが負債が増えて出来る人間を殺して何になると言うのだと、

四百六十二番が依頼を出す最後の人間だと宣言していた、

しかし俺はそんな宣言を無視してまで四百六十二番を気に入っていた、

1人で話すとピッケルの振り方を変えてどんどん正確に精密に技術が向上していくのだ、

教えていて、見ていてこれ程嬉しい事はない。


 俺は四百六十二番と朝から夜まで仕事を共にする事になった、

奴は叩き方などで上手く出来ない事はあったがミスリルをダメにする事は一回もなかった、

ここまで来ると世界で彼以上に魔力制御が上手いやつは居ないだろうと思う、

俺でも偶にミスをしてしまうのだから。


 四百六十二番に驚かされる事は他にもあった、

俺が火を付けるところを見せようと突然

「そうなのか」と言って

「それは白炎石と言うのか?」と聞いてきた、

俺は驚いた、見ただけでこいつは加工をほぼしていない白炎鉱石だと見抜いたのだ。


さらに俺が日々が楽しい余りにうっかり白炎石を切らしてしまった時の事だ。

「わりぃ、白炎石を切らしてしまった、すまねぇが火がねぇから今日は精製が出来ねぇ」と言うと

「火が必要なのか?」と返してきて薪を手に取る、

俺はとっさに「魔法はダメだ!」と言うと

「わかっている」と言って一個の薪を叩き割ると型の凹みとへその辺りで薪だった物を固定すると割った薪の一つをこすり合わせ始める、

すると煙が出てきて火種を乾かした草に乗せると手で包み込み息を吹きかけて火をつけて見せた、

初めて見る光景だった。

 俺は興奮して四百六十二番にやり方を教えてもらった2、3日空いた時間に練習していると奴ほどは上手く出来ないが俺も火を付ける事に成功した。

奴との仕事は、楽しかった、1人で話しているとやり方を変え俺と話している時も突然何もいない所に話しかけて、より精度の高い方法を考案する。


 四百六十二番はあっという間に一人前になりたったの3年で罰則金を支払い終わってしまった。

もうアイツと働くこともないのかと思い1人で思い浸っていると四百六十二番が来た。

 俺は嬉しい思いと共に不安を覚えた、以前聞いた話しだが奴隷上がりの市民に働かせていた男が殺されてしまった事件があった、

 俺は身構えながら聞くと『礼を言いに来た』と言った、

礼を言いたいのは俺の方だった、ミスリル精製ができる人間が増えたお陰で技術が失われる可能性は少し減った、

それにより俺への圧力も減ったのだ、四百六十二番いや…

シロツは旅に出ると言うが武器になりそうな物は皮袋からはみ出している木の棒くらいだ。

 俺はシロツの細い腕からあり得ない程の力が出るのを思い出して物置から前に兄貴に頼んで馬鹿みたいに大量のアダマンタイトを使った巨大なハンマーを引きずってシロツに持たせてみる。

すると少しよろけたがシロツはハンマーを持ち上げて素振りをする。

 俺は信じられない思いだがどこか面白く笑えてくる、アダマンタイトは異常な程硬くそして魔力の抵抗がとてつもなく高く、熱にもとても強い、

精製する際は大量の魔力を使って溶かし、溶けていない部分がアダマンタイトになる、

溶かす時と同じくらい魔力を使い一旦集中でやっとアダマンタイトは溶けるそれを繋ぎ合わせて加工する必要がある程ミスリルとは正反対の金属だ、

確かに凄い金属なのだが尋常じゃなく重い、

普段使っているアダマンタイト製の金槌ですら一個で鉄製のフルプレートアーマーと同じくらい重いのだ、

それを馬鹿みたいにデカいハンマーだ、

叩いた時に強く叩ける様に頭の部分を全長と同じくらいデカくしてしまって俺が持ち上げる事が出来なくなったハンマーだ、

それを振り回すシロツを見てこいつに譲ろうと思った。



 俺はシロツのことを死んでも忘れないだろう。

俺は奴から多くを学んだ、

俺はシロツが去ってからもミスリルの依頼を出す事にしたしかし罰金はなしだ、

そして完全歩合制にする事でやる気が有り出来る奴が稼げる仕事にする事に成功した。

 共に働く奴隷達の話を聞いてミスリルの採掘場は大きくなり精製の方も出来る奴隷がチラホラと出てくる。

俺は人に教える楽しさと意見を言い合って違うやり方、

新しい方法を編み出す楽しさを知った。

俺の世界は今までより広く、そして明るくなった。


俺は採掘場の前で水を飲むと何か気配を感じて振り返るがそこには誰も居なかった。

ただ爺さんが笑っている様な気がした

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