ミールの考え
私は緑の目の人間に普通の人は居ないと結論付けている。
今まで会ったのは全部で2人しかいないが、
そもそも珍しい緑の目で2人とも異常なのだから仕方がない、
私が動物や虫を食べるのを見ると大半の人は気持ち悪がったり距離を置きたがる。
私が荷物持ちを、やっていた頃に森に置き去りにされた事もあるので覚悟はしているが寂しく思うこともある。
そもそも私の悪食はブランクの真似をしてそれが一番金を使わずに生きていけると気が付いたからやっているわけで異常な事には自覚がある。
しかしシロツという男はブランクより異常かもしれない、
握手をした時に私の手の甲を掴んできたのは多分握手を知らなかったのだろう、時折何も無いところに向かって話しかけている事も多々ある。
独り言かと思ったがシロツの声しか私には聞こえないが確かに会話をしているように聞こえてしまう、
シロツには何か見えているのかもしれない。
その鎖を巻いたような刺青が入った細い腕からは信じられないほどの高さまで小石を投げたのを私はしっかりと確認した、
私の弓ではあそこまで矢が届くか微妙な程の高さだ。
そもそも刺青とは奴隷や犯罪者が牢に入れられる際に判別として刻み込む物で顔や手の甲などにデカデカと刻み込む物だ、
しかしシロツは手首や足首や首に刺青が入っている、
そのような所に刺青を入れる奴隷商人も騎士団も無いだろう、
となるとおそらくシロツは自ら自分に、
刺青を入れたのだ、何故そうしたのかはさっぱり分からない。
刺青を見た時に気が付いたのだがシロツは片足が木材で出来ていた。
ズボンの膝の部分が曲がっているのを確認出来たので多分膝から下がないのだろう。
そんな不自由な体でギルドの依頼を受ける人間は果たして他にいるだろうか?
考えてみたが居ないだろうと思う。
そもそも生まれつき足がないのであれば親に捨てられて死ぬのが普通だ、
育てられた人の話を又聞きに聞いた事があるが、
それは裕福な人間で作曲などをして生きているらしい、
それで腹が膨れるのだから羨ましい限りだ。
しかし痩せ細ったシロツは見るからに裕福ではないだろう、
となると後天的に足が無くなったと考えると普通体の部位を欠損すると耳や指ならまだ平気な事が偶にあるらしいが腕や足を失うと数日高熱にうなされて衰弱して死んでいくらしい、
治癒魔法で治してもらうにも金が大量に必要になるし、
そもそも欠損レベルの傷を塞げる治癒魔法を使えるのなど噂の聖女様くらいのものだろう、
少なくとも私が会ったことがある治癒魔法士は擦り傷や切り傷を治す程度しか出来なかった。
そう考えるとシロツは足を失って死なずに生き残った奇跡的な人間だという事になる…ひょっとしてシロツが実は凄い治癒魔法士だったりするのだろうか。
「シロツ?貴方のドッグタグ見せてくれない?」
そう聞くと
「あぁ…構わないが」
と言いながら首からドッグタグを外して私に見せてくる。
暗がりに目を凝らしながら確認する。
名前 シロツ
適正魔法 風
固有特性 吸収
私にドッグタグを渡して一人でアカツという何かに話しているシロツに
「ありがとう」と言ってドッグタグを返すと治癒魔法が使えるか聞いてみる事にした。
「シロツって実は治癒魔法使えたりする?」
「いや…使えないな、治癒魔法どころか魔ほ…」
シロツは言い淀み口にする
「魔力量が少ないから大して魔法が使えないんだ」
なるほど…と理解して私はシロツの前を歩き出す。
シロツは凄い治癒魔法士ではないという事はとても運が良かったのだろう、
それにしても固有特性の吸収ってなんだ、
聞いたことがない特性だ、勿論人それぞれ特性は違うがレアな特性でなければ大体特性は被る物だ背の高い人の特性は大抵成長の特性を持っているし書類仕事が早い人は計算や速読を持っているギルドの茶髪で青い目の受付嬢はレアで並列思考という特性を持っていると聞いた。
つまり特性をはその人の特徴になる事が殆どだ、
私の裁量把握は大体の距離や重さが分かる程度で余り特徴にならない固有特性だが吸収…これは一体何を吸収するのだろうか?
人は食べ物を消化して吸収する事でエネルギーを蓄えるのだと前に大剣を片手で振り回す男に聞いたが彼は全身筋肉で覆われた様な見た目で巨漢だった、
しかしシロツは痩せ細っている、
それなりに物は食べている事は歩きながら手当たり次第に生き物を食べるシロツを見てわかっている、
吸収…これは吸収しないということか?
なんて要らない特性なんだろう、私は少し気の毒に思いながら夜道を歩いた。




