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colour  作者: 神口 讃妥
名無しの道
13/68

エスケープ

 私は目の覚ました少女が灯した火に目が眩むのを覚えながらも少女の言葉に返事を返す。

「薪…あぁ、すいません、忘れてましたここ数ヶ月使ってないもので」

少女が戸惑ったように返事を返してくる

「そ、そう…ブランク、明日も歩くから早く寝ちゃって」

とそう言われたので私は少女のある方に向かって歩き、地べたに寝っ転がり寝た。



 私はブランクが近づいてきたときに体が強張るのを感じながらも体の震えを必死に抑えてブランクが寝るのを確認した。

股が生温くて濡れてしまったのが恥ずかしいが、そんな事よりもブランクがしていた事の痕跡を見つけるのに必死になっていた。

 私は彼が人間なのか疑ってしまっていた、もしかしたら新種の魔物なのでは無いかなどと考えながら彼の食べていたものを確認する。

 主に虫の足が転がっていて、骨のサイズからしてネズミなどの小さな動物があったがいくつか変な色の小さな毛皮が落ちてる事に気がついた。

それは所々に紫色色の斑点の付いた毛皮、それは小さいものの魔物の毛皮だと気がついた私は急いでブランクを起こす。

「貴方!魔物を食べたの?魔石は?」

そう言うとブランクは腰に付けられたボロボロな袋から赤黒い石を取り出した見せてくる。

「ん、ふぁ…魔石ってこれのことですよね?」

眠そうに見せてきた赤黒い石を見て私は安心してブランクに謝る。

「ごめんなさい、起こしちゃって、まだ時間じゃ無いから寝てていいわよ」

するとすぐに再び寝息を立て始めたブランクを見て私は肩の力が抜けて地面に座り込む。

「ほ、ほんとに魔物かと思っちゃった…」

 魔物は魔石を喰らって力を蓄える。

厳密に言えば人が死んだら体内の何処かに魔石が出来るので人も魔物の一種ではあるが、人は魔石を食べることは無い。

魔石を食べた所で何も起きずに糞として排出されると教えられたことがあり、それは常識なのだ。

人がどうやって魔力を生成しているのかは謎に包まれているもそれは聖女の血を引く人々が神に愛されてるからだ、などと言う本を父親の持っている本で見かけたことがある。


 2人から見えないであろう距離まで離れて下着を脱ぎ、風魔法で乾かしながらブランクの固有特性が知れて少しブランクは普通の人間だって思えて微笑んでしまう「ブランクの固有特性は視覚強化なのかぁ」

私は乾いた下着を履いて2人の近くの焚火の近くでパチパチと鳴る焚火の音と2人の寝息を聞きながら見張りを続ける




 私が目を覚ました頃には少年と少女はパンと肉を食べていた、私は夜の間に手当たり次第に食べたので特にお腹は空いていない

「おい、ブランク?お前腹減らないのか?一個やるよ」

と少年はパンを差し出してくるも私はお腹が空いていないので断る事にする

「いえ、私は大丈夫ですから」と言うと

「そうなのか?ならいいけどよ」

と少年は私に渡そうとしていたパンを食べ始める。

「昨日あれだけ食べればねぇ」

少女の、声が聞こえて私は上手になった笑みを浮かべて見せる、少女は呆れたように肩を竦めて食事を再開する。



「んじゃ!今日は昼までに森に入って魔物を見つけて狩る!そんで野営して明日の昼から帰るぞ」

と犬歯を見せつけながら私に言ってくるので返事をする。

「わかりました」

少女は隣で頷くのみだったが少し歩いたら森が深くなって来たので先頭を歩く少年の後ろを右手で草や枝を折りながら進む。

途中、何度か獣道などを見つけたものの、少年がどんどん進んでしまうので後を追う。

定期的に少女がついて来てるか確認しながら周囲に威嚇の鳴き声が聞こえないかに意識を向けながら歩く。



「全然見つからねーじゃねーか!」

痺れを切らした少年が青銅の剣を木に叩きつける。

その木に何かあるのかと思いじっくりと見ていると後ろから少女から声がかかる。

「無闇に歩いても見つからないわよ…ほら、イラつかないの」

そう言って少年をあやした少女はこっちをチラッと見て

「ブランク?何かどこに魔物がいるとか分からないの?」

と聞いてくるので素直に答える。

「途中に何個か道があったからその先に」

そう言うと少年が勢いよく振り返り

「ブランク!そう言うことは早く言えよ!行くぞ」

と突然機嫌良さそうに言って来たので首を傾げながらも来た道を引き返す同じように右手で草や枝を折りながら。




 「ここを左です」そう私が言うと少年は左を向いてまっすぐ進んでいく。

私も枝を折りながら後を追い、少女がついて来てる事を確認する。

 しばらく足跡を伝うとまだ新しい糞を見つけたので

「近くに何かいますよ」

と伝えると少年と少女は周囲を警戒する。

私は近くに水の流れる音が聞こえたので恐らくそこだろうと思い水の音に向かって歩いて行くと2人が後をついてくる。

数分歩いた後茂みから音のする方を覗くとそこには川が流れていて、その川の水を全身薄い青色に包まれた熊が飲んでいた。

 それを確認すると私はこのような見た目の動物は狩るのは危険で余り美味しく無いので無理に狩るものでは無いと老婆との散策で学んでいた。

老婆がいなければ私は狩られていただろうと確信しているので後ろの2人に静かに声をかける。

「あの見た目は危険で美味しく無いので引き返しましょうか」

そう言うと少女は首を何度もうなずいているものの少年が大きな声を上げてしまう。

「なに?引き返すって!?大物だぞアレは!」

その声に反応して熊がこちらを向き迫ってくる。

「逃げますよ」そう言って2人の手を引くも少年が手を振り解き青銅の剣を抜いて熊の方へと向かいって行く。

「アルス!!」少女が大きな声を上げて手を伸ばすも既に遅く、青色の熊の丸太のような豪腕を横長に叩きつけられ、少年は地面に転がる私は少年を助ける為に前に出ようとすると少年は青銅の剣を杖にして立ち上がる。

それを無視して青色の熊はこちらに目を向けて低い唸り声を上げている。

少女と共に一歩後ろに下がった時に少年の行動に違和感を覚える。

少年の剣が真っ赤に染まっているのだ、一瞬血かと思ったがそうには見えない、少年が熊に向けて剣を投げる。

「オラァ!」熊の方に剣が飛んでいき熊の腕に突き刺さり、焼け焦げた様な匂いがする。

私は冷や汗を流しながらつい言葉に出してしまう

「不味いですね…」と言うと少女が「えっ?」と声を上げた瞬間に熊は腕に水を纏い熱された剣の熱を奪ってから口で剣を引き抜き地面に捨てると水を操る能力なのか外に流れたのは少量の血のみだった。

「逃げるぞ!」少年がそう告げると何処かへ走り去っていくが少年に、ついていく余裕がない少女と共に後退りをして距離を開かせようとするが青色の熊はその巨大からは想像出来ないまでの速度で迫ってくる。

 私は振り返って逃げようとするものの少女は動かないこのままでは2人とも熊に衝突するのは免れないので少女の股関節を全力で蹴り飛ばしお互いに衝突を免れようとしたが右脚のみ間に合わずに青色の熊に噛み付かれる。

走る激痛に涙を堪えながらも腰に携えた老婆からもらった鋭利な木の棒を手に持ち熊の眼球に目掛けて刺突する、棒の先端が眼球を掠めて傷をつけるものの脚に噛み付いたまま熊が暴れ出し体を振り回される。

気絶しそうになるも痛みがそれを許してくれずに体の骨を折られながら熊に森の何処かへ引きずられていく、このままでは死ぬ、そう言った感覚に何故か心地よさを覚えながらも森の奥へと連れて行かれる熊が暴れた時に腹に突き刺さった私の老婆からもらった木の棒を抜き取り全身全霊を、こめて熊の眼球に向けて刺突する。

少し硬いものに当たり、その後にぬるりとした感触を覚えると噛みつかれていた足が離れる、ほっと安心したのも束の間私は落ちる感覚に身を振らせる。

 一瞬の様に感じたが随分と引きずられて来ていた様で崖の上を熊は歩いていた様だ、私は落ちる、崖から落ちる。

走馬灯の様に短い人生を思い出す。

教会の神父様の事、

栗毛色の少女のこと、

赤毛の弓を持った男の事、

毛深い果実を売っていた男の事、

私に仮の名前をくれた受付嬢の事、

森に来る前に地図を見せてくれた茶髪で三つ編みの受付嬢の事、

私に色々教えくれ、この木の棒をくれた老婆の事、


私は迫り来る地面を見つめ死にたく無いと強く願う。そして暗転する視界、地面に頭蓋を叩きつけられ、

潰れるその姿はいつかの男の様

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